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はじめての140字小説。お笑い芸人とおっさんの友情

ずっと140字小説に憧れがあったので、いつかやってみたいなと思っていた。

近況を報告すると、何だか無茶苦茶に忙しくなってしまっていて、フルタイムの仕事の過酷さを思い知らされています。

140字では終わらないのが悲しいへっぽこ物書きのさがで、起きた時は続き見せて~~!な気分だった。
自分が男性になっている(独身、中年に近い、恋人なし、一人暮らし)夢というのが好きで、まさに異世界を体験しているようでとても楽しい。
何となく女性というのは、気を付けなければならなかったりわずらわしいことが多くて(服装とか化粧とか)、そんなときに男性である夢を見ると、やりたいことがやれていいなあ、楽しそうだなあ、と思うときがある。やはり性別で分けるのはどうのこうのと言っても、性差による感覚の違いはあるよ。

仕事が楽しいなあ、と思うとき、ほとんどの時間を会社で過ごして、家に帰るのも遅いし疲れて寝るだけ、という生活だったらどうだろう。
そして、その結果評価されたり、ありがたがられてやりがいを感じたり、どんどんお金もたまっていったり、会社の仲間たちと連帯感を感じたり、ということがあったなら、何だか今見ている世界とはまるで違う世界になりそうだ、と思う。

この夢で見たお笑い芸人さん、わたしはお笑いの世界に強烈に疎いので、まったくわからないのだが、数少ない知っている誰とも似ていなかった。ソロでやっているっぽい。相方がいて別れることになったのかどうかはわからない。今はとりあえずピン芸人らしい。かなりの売れっ子でよくテレビで見ていた。容姿はお笑い芸人の中でもそこそこいけてる方ではないだろうか。

夢の中の主人公「ぼく」は、やっぱりお笑いにはうといけど、彼が出てくると「あ、出てるな」と見るので、彼については割と情報をキャッチしている、というようなスタンス。

芸人さんてすごいなあ。うまくその場で会話をオチに持って行かないといけないし、そのオチがあまり誰かを傷つけるようなものであってもいけない。誰かだけが過剰に目立つようでもダメだし、アピールはしっかりしないといけない。大変だなあ。彼はその点、そつがないなあ。
こういうことしてる人って、反動でプライベートは無茶苦茶やってたり、非人間的だったりするものなんじゃないだろうか、と漠然と想像していた。でもそれを悪いとぼくはあまり思っていなくて、なぜならこうしてたくさんの人を楽しませているのだから、プラスマイナス、どこかにきっとあるだろう。才能には何らかの影がつきものだ。
そう思っていた中で、彼はとても感じがよかったから、とても強烈に覚えている。自分のようなちょっと応対しただけの人間にも気さくで親切だった。煙草を吸える場所はないかな、と聞かれたので教えて、裏口で二人で吸ったんだ。今や高級嗜好品になっちゃったから。でも嫌がられるからこそこそしないといけない。肩身が狭いよね、という話から始まって、あれこれといろいろ話した。
好きなラーメン屋から始まって、その周辺にあるうまい店、穴場のゆっくりできる場所、マッサージ店。
それから、どこの出身か、学校は、部活は、高校野球の話やサッカーの話、一通りチェックはしているが、その中でも好みがあるところにぴったりはまって、何気ない平凡な会話がとても楽しかった。

あの界隈、暮らしやすいから気に入っててね。
いつか一緒にラーメン食いに行きたいね。
いいっすね。

一本の煙草を吸うだけの時間だった。

何が彼をこうまで追い詰めてしまったんだろう。ひどく顔色が悪い。無精ひげを生やしているところを見ると、しばらく病気でもしてたんだろうか。昨日までテレビに映ってたのは録画か何かなのかな。部屋にとりあえず上げて、お茶なんて気の利いたものはないから水を一杯。しまったな。ペットボトルも切らしてるわ。
片付いてるなあ。
いや、ほとんど帰ってないだけなんだよ。寝るだけの部屋だから、余計なものは置かないようにしてる。テレビも見ないから小さいのだし、つまんないよ。
彼は黙って聞いていて、ぽつんと一言、
いいなあ、そういう生活。
まさか芸能人からうらやましがられる日が来るとは思わなかったが、彼の言い方があまりにも真に迫っていたので、仕方なくこうなっていると思っていた今の生活が、とても幸福で充実したものであるかのように思えてきた。



そして唐突に終わる。
もう続きとか何とか考えないようにしました!(宣言)
そんなこと言ってたら何も投稿できないから!

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