超短編小説|大切なのは、つづけること。
僕は石を積み上げていた。
それは、大きな石を大きな石の上にひたすら積み上げていく、緻密な作業だった。金槌でトントンと叩きながら手作業で形を整えて、石を積み上げていく。
石を積み上げる動機や目的はさっぱり分からなかった。大きな報酬が得られそうな作業でもなかった。それでも、僕の手は忙しなく動きつづけていた。
今すぐ投げ出したいくらい嫌ではなかったし、むしろ完成していく石積みを見るのは好きだった。僕はこれをつづけていくうちに、誰かに自分の石積みを見てもらいたいと思うようになった。
けれど、辺りには誰もいなかった。
石積みは、とても孤独な作業だ。集中力が切れてくると、僕は作業場の椅子に腰を下ろして、目を閉じた。
少しだけ休憩すると、僕はふたたび頭を空っぽにして、雑念を払い退け、目の前の石だけに集中した。石を積んでいるときだけ、自由になれた。
僕は、そんな石積みを毎日つづけた。
けれど、次の日も、その次の日も、完成する見込みはなかった。それどころか、まるで誰かが巻き戻しボタンを押したかのように、昨日の石積みからやり直しになることも多々あった。
ある日それが完成したとき、僕は笑みを浮かべ、それを誇らしげに眺めた。そして、しばらくすると、僕は作業場を離れた。
今度はうんと良い場所を見つけて、そこで石積みをする。ふたたび孤独な作業がはじまる。
石積みに終わりはないのだ。
〈了〉
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