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激推し本「ブラザーズ・ブラジャー」

こんにちは。ご無沙汰しております。なんかバタバタしていてあまりnote書けませんでした。
ちょっと事情あり3週間くらい読書断ちしていたこともあって、久ぶりに小説を読んだら感受性が超敏感になっているのかグングン浸透してくる感じがあり、あぁー良いー…と浸っておりました。
いくつかご紹介したいものはあるのですが、その中でも衝撃レベルによかった本を紹介しますね。
(ちなみに他の良かったのは「遠い指先が触れて(島口大樹)」「パパイヤ・ママイヤ(乗代雄介)」などです。わー トレンド~)

『ブラザーズ・ブラジャー』佐原ひかりさん著

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氷室冴子青春文学賞を受賞されているデビュー作だそう。
可愛いくてきれいなパステルカラーの表紙と、キャッチーなタイトル、「青春小説」という帯文で、きっと普段のわたしなら手にとらない本だったかもしれません。
(キラキラした青春小説が超苦手の民。)

手にとったのは、信頼している文学系Youtuberの梨ちゃんや齋藤あかりちゃん、書評家の三宅香帆さんなどが絶賛していたから。その辺りの方々がここまで褒めたたえるのであれば読んでみよう、と。

結果、めちゃくちゃ良かった。

あらすじとしては、主人公の女子高生ちぐさは、父親が再婚して新しいお母さんと弟が出来て、弟の晴彦はちょっとクールというか濃淡のない感じなのだけど、ある日彼が「ブラジャー」をあてているのを見てしまう、という内容。
ちぐさは「LGBT?」と困惑して何と声をかけて良いかあたふたするのだけど、晴彦はあくまで「お洒落で綺麗だから」ブラジャーをつけている。
そんな晴彦に、ちぐさは下着選びを手伝ってもらって・・・・
といった感じでストーリーが進みます。

こういう一見”多様性”的な小説って今のはやりなのか割とよく見かける気がして正直いまちょっとオナカイッパイ気味なのですが、それとも少し違った。
ちぐさちゃんはあくまで真っすぐで、ちぐさが悩んだり躓いたりしている世界なんて、大人になったわたしが読者という引いた立場から見ると本当に小さくて狭くて、でもちぐさにはそんなことが見えないから、その狭く小さい世界の中でたくさんもがいて壁にぶつかって傷ついたり成長したり。
あくまで晴彦がブラジャーが好き、ということは、もちろんちぐさにとっては大きな主題なのだけど、ちぐさを構成する要素の一つでしかなく、ちぐさの周りにはいつも一緒にいるけどちょっとした距離を感じている友人2人、年上の彼氏、新しいお母さん…などたくさんの要素があってそれらがちぐさの中で影響しあっている。ちぐさなりにめちゃくちゃ考えて考えて、行動したり間違えたり、それでまた一喜一憂して…という印象を受けました。
難しい言葉で書かれた作品ではないけれど決して子供だましでもない、読みやすいのに心に響く(何度も「ハッ」とする)、ものすごい小説でした。

わたしはこの年(アラサーです)になってもまだ自分が見えている世界なんて狭いと思うしそれでも突き進むしかなくてそのたびに壁にぶつかってへこんだりしているけど、それは昔からの気質もあるのだけど、ちぐさちゃんの姿勢に重なって見えて何か胸が熱くなりました。

キャラも皆良かったな~。変に誇張されていない感じが良かった。晴彦はカッコイイし、カワイイ。みんな晴彦推しになると思う。

何となくタイトルや綺麗な絵から敬遠していたひねくれた(わたしのような)人、「青春小説」と聞いて斜に構えちゃう(わたしのような)人、タイトルで何となく手に取りにくさを感じる男性(Amazonがあるよ!)、活字から少し遠ざかっている人、読みやすい本が読みたい人、でも軽いわけでなくて読んだ後に心に何か来るものが欲しい人、に、おすすめです。(多いよ)

全部ひっくるめて楽しい、愛しい一冊になりました。
本当に読んで良かった。
こういう、普段手に取らなさそうな本を手に取らせる力があるから、やっぱり文学系メディアはこれからも追いたいなって思いました。
また、7月に佐原さんの新刊も出るらしくてそれもかなり面白そうなので注目です。『ペーパーリリイ』というタイトルで、女性二人が百合を探す旅に出かける爆走ロードノベルですって。面白い以外なくない?絶対読む。
『ペーパーリリイ』が楽しみな人も、それまでに『ブラザーズ・ブラジャー』読みましょ♡

読んで良かった、染みわたる、栄養になるような小説に出会うことってありがたいことに本当に多いのですが、それにプラスして「あぁこの一冊、好きだなあ」と思える本に出会えて嬉しかった。
”名刺代わりの小説10選”やるなら絶対入れるな~~~(これずっと妄想しているけど埋まらない。今のところ殿堂入りが本作と、絲山秋子さん『海の仙人』です)

その他の本たちも色々感想書きたいし(大注目の高瀬隼子さん『おいしいご飯が食べられますように』は絶対に書きたい)、もうすぐ芥川賞直木賞候補の発表もあるしでわくわくなので、ぼちぼちnote再開したいなあ。
よろしければまたお読みいただけましたら幸いです。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

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