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♯9 算数授業の板書②

 9日連続でのnote投稿となりました、天治郎です。今回のテーマも「板書」です。昨日の記事と合わせてご覧いただければ幸いです。

 お忙しい読者のために、以下が本稿の要旨です。

 「板書は,児童とともに創りあげていく1枚の大きなノートである」と捉えた上で、板書の効果をしっかりと意識し、板書を上手に活用していくことが大切です。

(1)板書の効果

 まず、「板書の効果」について検討します。二宮・鴨田(2012)は、よい板書の効果について、以下のように述べています。

教師が良い板書をすることで、子どもたちの思考や理解が深まっていくことが期待できる。教師が良い板書をすることで、子どもたちは板書を拠り所にして教師からの問いを自ら問うようになることが期待できる。板書を拠り所にしてよりよいノートをつくるようになり、やがては板書を越えたノートをつくることができるようになることも期待できる。このことは必ず学力の向上につながるものと考える。(p.2,太字筆者)

二宮裕之・鴨田均(2012).小学校算数 板書とノートを変えると子どもが伸びる.東洋館出版社.

 また、夏坂(2012)は、板書の役割と求められることについて、以下のように述べています。

板書は、子どもの思考を整理し、新たな発想を生み出す手助けとなる場。その役割を果たすために、違いを明確にしたり、違う考えだと思われるものの中に共通点や関連性が見えてくるようにしたりすることが求められます。また、板書には、子どもたちの理解を確かなものにする役割もあります。授業の最後に黒板を振り返ってみたときに、1時間の授業の流れと、そこで出てきた考えが確認できるような形で残っていることが望ましいと思います。(pp.20-21,太字筆者) 

夏坂哲志(2012).夏坂哲志の板書で輝く算数授業 教師の表現力を育てよう!.文溪堂.

 さらに、谷・小原(2014)は授業中の板書について、以下のように述べています。

その解決過程の変遷を矢印等で視覚化することを通し、児童生徒の考えを比較検討、関連付けて整理することを可能にする。授業内で教員の発問と児童生徒の応答の成果を板書する際、教員はその記述の囲みや下線引きなどは場当たり出任せで行わず、例えば、「意見は白色」、「反対意見は矢印先で黄色」、「皆での取り決めは波線囲み」、というように、あらかじめ児童生徒と協定した規則通りに板書を進める.想定外の展開下でも指導と評価の一体化の観点から、板書活動は即時に児童生徒の意見を取り入れて修正して解決過程へのフィードバックを支えている。(p.37,太字筆者)

谷竜太・小原豊(2014).算数数学科の問題解決授業における板書の機能.日本数学教育学会誌 算数教育,96(7),36-39.

 これらの見解より、板書の効果を、

児童の考えを比較検討、関連付けて整理する
解決過程へのフィードバックを支える
児童の理解を確かなものにする

と捉えます。これらは、板書によって児童の議論が活性化した結果起こる効果です。

(2)板書の活用

 続いて、「板書の活用」について検討します。細水(2007)は、子どもたちと一緒に授業を創り上げていくときの道具として、また考え方を育てるための道具として、もっと積極的な「板書の活用」が必要であることを指摘した上で、板書の活用方法として、

板書で心動かされる場面をつくる
板書で発想の源を探る活動の場をつくる
板書に知恵を集める

細水保宏(2007).確かな学力をつける板書とノートの活用-授業をもっと楽しく,魅力あるものにしよう!-.明治図書.

の3つを挙げてます。これらは,前回のnoteで論じた「板書の意義」に通ずるものです。また、板書は教師と子どもたちとで創りあげていく1枚の大きなノートとしてとらえており、子どもの顔が見える板書を心がけているとしています。同様に、新井(2012)も板書のポイントとして、生徒の発言に基づいて板書し意味付けをするとしており、生徒とともに創りあげていくものという捉え方です。
 以上のことから、「板書は,児童とともに創りあげていく1枚の大きなノートである」と、捉えるとよいでしょう。

(3)終わりに

 今回は、「板書の効果」と「板書の活用」について検討しました。板書の効果をしっかりと意識し、板書を上手に活用していくことが大切です。
 次回は、「板書の効果の具体」と「板書を補助する役割をもつもの」について検討します。
 
 最後までお読みいただき、ありがとうございました。御意見等お待ちしております。 

【引用・参考文献】
新井仁(2012).中学校数学科 授業を変える「板書」の工夫45.明治図書.
細水保宏(2007).確かな学力をつける板書とノートの活用-授業をもっと楽しく,魅力あるものにしよう!-.明治図書.
文部科学省(2018).小学校学習指導要領解説(平成29年告示) 算数編.日本文教出版.
夏坂哲志(2012).夏坂哲志の板書で輝く算数授業 教師の表現力を育てよう!.文溪堂.
二宮裕之・鴨田均(2012).小学校算数 板書とノートを変えると子どもが伸びる.東洋館出版社.
谷竜太・小原豊(2014).算数数学科の問題解決授業における板書の機能.日本数学教育学会誌 算数教育,96(7),36-39.

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