見出し画像

「表現」とは?~自己内対話と他者との対話~

 7日連続でのnote投稿となりました、天治郎です。今回のテーマは「表現」です。初めて「算数」にかかわる投稿となります。お忙しい読者のために、以下が本稿の要旨です。 

ざっくりいえば、表現とは「自らの思考等を見えるようにすること」です。表現の目的は「①自己内対話」、「②他者との対話(コミュニケーション)」の2つです。つまり、対話が表現の中心になってくると考えられます。


(1)辞書から見る「表現」

 学校教育において、「思考力」や「表現力」の育成は、不易の部分です。そもそも「表現」とは何でしょうか?辞書で調べてみると、

表現とは、自分の感じたこと、考えたこと、したこと、主張などを、身振りや表情、動作、言語・記号、作品などを手段として、自分のためまたは他の人の理解を得るために外面化することであり、それを進める能力を表現力という。

「広辞苑」岩波書店

とのことです。最近の言葉で言えば、「アウトプット」ですね。ざっくりいえば、表現とは「自らの思考等を様々な手段を用いてみえるようにすること」です。

(2)算数科における「表現力」

 学習指導要領解説からも見てみましょう。国語編、社会編、算数編、理科編で、「表現力」と検索してみますと、それぞれ「108」、「134」、「286」、「36」件検索されます。「表現」にすれば、もう少し増えるでしょう。

 学習指導要領解説算数編(私が算数教育専門ですので、ご勘弁を…。)では、数学的な表現力については、以下のように示されています。

言葉や数、式、図、表、グラフなどを用いて、問題の解決過程における考え方や処理の仕方や結果を分かりやすく表したり、説明したりする能力。

文部科学省(2018).小学校学習指導要領解説 算数編.日本文教出版.

 やはり、「自らの思考等を見えるようにすること」だと言えます。また、思考力やコミュニケーション能力との関連については、以下のように示されています。

・数学的な表現を柔軟に用いることで、互いに自分の思いや考えを共通の場で伝え合うことが可能となり、それらを共有したり質的に高めたりすることができる。表現することは知的なコミュニケーションを支え、また逆にその知的なコミュニケーションによって数学的な表現の質が高められ、相互に影響しながら算数の学習が充実する。
・数学的な表現力は、数学的な思考力とかかわって相乗的に高まっていく関係にある。
・数学的な表現力を高めることは、数学的な思考力とコミュニケーション能力を高めることとのかかわりが深い。つまり、表現することによって考えたことを筋道立てて整理することができるとともに、そのことによって筋道立てて考える能力が育つという二面性をもっている。また、考え方や意見の知的コミュニケーションによって、学び合い、高め合い数学的な思考力や表現力、コミュニケーション能力が相乗的に高まることになる。

文部科学省(2018).小学校学習指導要領解説 算数編.日本文教出版.

 他方、一般社団法人教育調査研究所研究部長(元々は東京都の公立学校教諭です)の小島宏先生は、算数科における表現力の役割として、次の5つを挙げています。

①考える手がかりとしての表現
②自分の考えを表現し、客体化して検討する。
③自分の考え方や仕方を筋道立て、整理するための表現
④コミュニケーション能力を支える表現
⑤考えや仕方のまとめとしての表現

文部科学省(2018).小学校学習指導要領解説 算数編.日本文教出版.

 算数科で見てみると、「表現力」と「思考力」及び「コミュニケーション能力」は互恵関係にあるといえます。これは、おそらく、他の教科等でも同様ではないでしょうか。

 また、広島大学名誉教授の中原忠男先生は、算数・数学教育における表現を5つの表現様式に類型化することを提起しています。5つの表現様式は、以下の通りです。

【記号的表現】数字、文字などの数学的記号を用いた表現
(例) 3+2=5
【言語的表現】日本語、英語などの日常語を用いた表現
(例) 3と2を合わせると5になる
【図的表現】絵、図、グラフなどを用いた表現
(例) 3個の〇と2個の〇をひとまとまりにする
【操作的表現】教具などに動的操作を施すことによる表現
(例) おはじきによる操作
【現実的表現】実物や実際の状況などによる表現
(例) 金魚による実演(3+2=5)

中原忠男(2018).筑波大学附属小学校算数研究部編,算数数学教育における表現.東洋館出版社.

 これらは、すべてではないものの、他の教科にもあてはまりそうです。

(3)表現と対話

 以上のことから、表現の目的は「①自己内対話(自分の知識や経験等を関連付けたり整理したりしながら思考を再構築していく「自分の内面」における対話)」、「②他者との対話(コミュニケーション)」の2つになるのではないでしょうか?つまり、対話が表現の中心になってくると考えられます。 

 一方で、子どもたちの対話を引き出す際に気を付けなければいけないこととして、

  • 子どもの「したい」という思いに基づいているか(子ども主体)

  • 何のために対話をするのか(目的)

  • 何を対話させるのか(対象)

  • どのように対話させるのか(方法)

  • 対話の際の教師の役割

が挙げられると私は考えます。ここについては、またどこかで。

(4)終わりに

 GIGAスクール構想の実施に伴い、「表現及び対話」の在り方は多様になりました。これまで「アナログ」で行っていた表現は、「デジタル」でも可能になります。もちろん前提は、「アナログとデジタルの両輪」です。ここに非言語的な表現(表情や身振り・手振り等)が加わります。「個別最適な学び」の視点から、子どもなりの得意分野をどう表現に生かすよう支援・指導するかということも大切になるでしょう。
 我々教師は、日々学び続け、よりよい在り方を模索していきたいですね。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。御意見等お待ちしております。

【引用・参考文献】
小島宏(2008).算数科の思考力・表現力・活用力《新しい学習指導要領の実現》.文溪堂.
文部科学省(2018).小学校学習指導要領解説 国語編.東洋館出版社.
文部科学省(2018).小学校学習指導要領解説 社会編.日本文教出版.
文部科学省(2018).小学校学習指導要領解説 算数編.日本文教出版.
文部科学省(2018).小学校学習指導要領解説 理科編.東洋館出版社.
中原忠男(2018).筑波大学附属小学校算数研究部編,算数数学教育における表現.東洋館出版社.

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?