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小さな島の未来へ向けて!ともに想像し 挑戦を支える

挑戦に貪欲な島

AMAホールディングス株式会社の石原紗和子です。
神奈川県出身の私が隠岐島に流れ着いてから5年。
海士町では、新年度が始まったときも、キラキラときれいな水面をEntôから見下ろすときも、里山になった果物や山菜を町民がみんなこぞって取りにいくときも、いつでもどこでも「挑戦、挑戦、挑戦、、、」と半ば取り憑かれたかのように、島のあらゆる人が「挑戦」の話をしています。

本土からフェリーで3時間も離れた海士町は、暮らすには不便なことも多く、ビジネスをするには2200人という商圏の小ささと本土への距離が大きなハンデとなります。
放っておけば、あっという間に人が居なくなり、住めなくなり、消え去ってしまう可能性の高い町。地図の中にポツンと浮かぶ小さな小さな島です。

だからこそ、生き残っていくためには進化し続けなければいけない。
挑戦しなければ、進化はない。
消えたくなければ、挑戦しろ。

そんなに強く言う人は居ませんが、
住んでいるひとりひとりが心のどこかにある未来への不安にただ流れに身を任せるのではなく、自ら未来を切り開こうとする人で溢れている。
それが海士町が取り憑かれたかのように「挑戦」に貪欲な理由です。
町の生存戦略です。

ないならつくってしまえ

海士町はキャッチコピーに「ないものはない」を掲げています。ダブルミーニングで、「ないのだから、仕方がない」という意味と「すべてある」という意味です。

そしてもうひとつ「ないならつくる」。

花屋さんはありませんが、野花を摘んで生けている人がたくさんいます。
映画館はありませんが、白い壁があればプロジェクターを置いて即席映画館で鑑賞会をしています。
コンビニはありませんが、必要なものは隣近所から借り、作った野菜や釣った魚をお裾分けしています。

島に滞在すると感じることがたくさんあります。
「これ無くてちょっと困るね」
「こういうのあったほうがいいんじゃない?」
「島の未来には必要だよね?」
「これがあれば移住者が増えるかも」

そんなことを島の人と話すと、「なら、あんたやってみたら」
だれもがそう言い、そう言われます。

島の未来をつくっていくのは、だれだっていい。
行政だけじゃない、みんなが当事者(主体者)。
島出身者でも、移住してきた人でも、住んでいなくても。

生存戦略として、挑戦し続けること
そしてその挑戦する人は、だれでもいいこと

その挑戦のタネを仕組みで応援するのが「海士町未来共創基金」です。

5人の挑戦の先駆者たち

2021年よりスタートした海士町の事業「海士町未来共創基金」。海士町未来投資委員会が運営しています。
挑戦したいと考える人が計画をつくり、AMAホールディングスはその計画づくりのお手伝いをしながら、ともに未来を想像し、未来投資委員会へ申請します。

例えば、株式会社まきはたの「近くで作って近くで飲む牛乳生産事業」
島内で産業を起こしたいと思い移住してきた掛谷さんは、既に産業としてあった畜産業ではなく酪農業で事業計画を進めたいと、未来共創基金へのエントリーを決めました。
自然豊かな場所にジャージー牛を連れてきて、島でたくさん作られる米の藁や島の草を食べさせ、地産地消の牛乳を作る。そして島の人がその牛乳を飲む。そんな、島の中で循環するものをつくりたい。

大きな利益を生み出す事業ではないかもしれないが、経営はやっていける。
経済的観点だけでなく、環境的観点・社会的観点では海士町にとって必要な事業になることは確か。
つまり挑戦する価値がある!

子ども達が、牧場を見学しにきている様子

未来投資委員会がこの事業への資金拠出を決定するにあたっては、採算的な面だけなく、海士町にとっての社会的価値も重視されました。
社会的価値を研究しながら事業を進めていくことも挑戦の一つと位置付け、この「近くで作って近くで飲む牛乳生産事業」が基金として採択されました。

未来共創基金は、打ち上げ花火ではありません。
何か事業を始めるときの、単なる補助金制度ではないことをご理解いただきたいのです。

海士町のために、事業をつくり、雇用を生み、長く事業を続けていかないといけないんです。


未来共創基金では、これまでに5件の事業が採択され、島に新しい挑戦が生まれています。
▶️2021年度 なまこ漁師会「ナマコとともに生きていく(ナマコ資源増殖支援事業)
▶️2021年度 株式会社3set 「海が好きになるマリンボート事業
▶️2022年度 中ノ島マリタイム「海の魅力と安心をつなぐマリンサービス事業
▶️2022年度 株式会社まきはた「近くで作って近くで飲む牛乳生産事業
▶️2023年度 島のめぐみ麦酒株式会社「島のビールで乾杯を!田んぼと海を活かしたクラフトビール醸造事業

島なのにどうやってやっているの?

旅の人:「海士町は成功事例がたくさんあってすごいですね、どうして次々と出来るんですか?」

島の人:「成功事例じゃなくて、挑戦事例なんです。とにかく挑戦している。成功したかどうかはまだわからない事業もたくさんある」

2020年に海士町のふるさと納税の運営をAMAホールディングスが担うようになり、その活用方法として、ふるさと納税を原資にした挑戦に拠出する仕組みをつくりました。
これが「海士町未来共創基金」です。

海士町ふるさと納税は、2019年には4000万円だった寄付額が、生産者・事業者のみなさんのご協力で島の産品・サービスを300品目並べることができ、2023年には2.8億円にまで伸びています。

大事なのは、この寄付の先。
寄付金の使い道までを仕組み化している自治体はあまりないのが現状です。
普通なら行政予算として積み立ててしまうところ、海士町はその約20%を未来共創基金として拠出し、挑戦の予算としました。

挑戦の島の行政トップである町長は、実は、この事業が持ち上がった当初、うち90%を拠出しようとなんて言ったと噂が立つほど攻めの姿勢でした。その後の実現段階で、今の率に落ち着いたのですが。
この未来共創基金という攻めの体制をつくることで、全国のみなさんからの「意志ある寄付金」を、「住民の未来への挑戦」に投資できるようになったのです。

海士町未来共創基金は、事業・金融・経済などのプロフェッショナル集団である未来投資委員会によって運営されています。挑戦者は、ただやりたいという意志だけではなく、長期目線でアドバイスをもらいながら、事業をブラッシュアップしていくことができます。
これが、今の海士町に合ったフォーマットだと考えています。

長期的な視点で一緒に事業をつくるのが未来投資委員会の役割であり、責任でもある。
環境のこと、社会のこと、経済のことをトータルで事業計画を作る必要がある。
そのため、審査基準も厳しく設けてあります。

このような仕組みで、年に1〜2件の事業が採択され、島の新しい挑戦が着実に形になっています。

そして、大事なのは資金だけではありません。島民の応援の声が、新事業・挑戦者を後押しします。
新事業への地域からの応援をつくることを目標に、AMAホールディングスでは、「わがとこバスツアー」という島民が町の事業者を訪れる機会をつくるバスツアーを運営しています。

また、新しい事業の種を育てる、「いぃだねっか倶楽部」も2024年春に運営を開始しました!
いぃだねっか倶楽部は、20代〜40代を中心にお互いを応援し合うコミュニティです。新規事業作りや起業などに向けて学びの機会をつくり、サポートし合える体制をつくっていきます。

挑戦者や未来共創基金の応募者を、まるっと応援する、そして新しい挑戦のタネを育んでいくのが、この仕組みです。

オンラインショッピング的なふるさと納税でなく、意志ある寄付にするために。
そして、公的な補助金に頼りすぎず、資金調達できる仕組みに。

この仕組みは、いろいろな方の協力を得て成り立っています。
ふるさと納税をしていただく方、投資や金融などプロフェッショナルの方、ふるさと納税の事務局。そして何より、挑戦をしたいという意志ある島民の方。

タッグを組めば、どの地域でもできる。

小さな島の失敗、挑戦を世界へ

約20年前に前町長の山内さんが言い出した「タグボート」という考え方が私は好きです。

東京から地方という流れを方向転換し、地方から東京へ。
そういう物事が進む矢印を、海士町から示していけるかもしれない。

大都市に憧れて、地方都市がそれを真似して行うのが一般的かもしれません。世界も日本も。
でも、世界が色々と変わってきていて、これからも変化していかないと生き残っていけない。
変化していくにあたって、何かうんと図体でかいものがそれを実行しようとすると時間がかかるし、うまくいかなかったときの影響も大きすぎる。

だから、小さい地方から、小さいチャレンジをして、調整しながら繰り返していく。
うまくいけば、違う小さな地方都市同士で共有して、いずれ中規模都市へ、大規模都市へと移っていく流れができるかもしれない。
海士町のような小さな地方では何かを実行する時、関係人口の多さや太さ、強さみたいなところが本当の要因になります。これは東京じゃできない。

これが、タグボートの考え方です。

日本を、世界を変えるかもしれない。でも今はまだ小さなタネ。
この小さな海士町で、確かに生まれています。     

海士町には、地元の方もいれば、移住者の方も多くいます。また、島外に住みながら海士町と関わっている関係人口の方も多数います。

みんなで手を取りながら、未来をこの手で作っていきたい。
今、それが形になっている実感があります。

移住してきて5年目の私だけど、本気でこの島の未来を憂いて、「本気でこうなったらもっと面白いのに」って考えている。必ずしもこの島でずっと生きていくことにコミットしてなくても、日本の未来や世界の未来を作っていくという意味で、“その一滴の雫に自分がなれる・なるチャンスがあるということが面白い”

そして、人がいないからすぐバッターボックスに立つことになる。
最初からこのアツさやコミットメントがなくてもいい。
島で生活をして、ふわふわ漂っていても、いろんな愛を受け、挑戦心に囲まれていると自然とトップランナーになっている。

誠実さや好奇心の方が大事なのかも。。

だから、まずは海士町に来てほしい!見てほしい!知ってほしい!

いつまでふるさと納税の制度が続くかわかりません。このまま何年も続くとは限らないと思っています。

だから、
ふるさと納税の意味を、
地元や地方に愛を持って寄付することの意味を、
寄付していただいたお金の使い途を、
産業を担っている人たちの想いを
事業継承の大変さを、

ふるさと納税のおかげで回るストーリーを、
もっと多くの方に知っていただきたい。

海士町が、そのいい活用事例になれるように、トップランナーとして広めていきたいという思いがあります。

そして、今年も、海士町をよりよい町にするために、
未来共創基金2024始まります!

AMAホールディングスでは、海士町への視察も随時受け付けております。
お気軽にお問い合わせください!