映画『そしてバトンは渡された』感想(ネタバレあり)
そしてバトンは渡されたは2019年、本屋大賞を受賞した瀬尾舞まいこ原作の同名小説を映画化した、2つの家族の物語。
男性のナレーションから始まるこの作品。
誰の声かな?
という疑問が一瞬浮かぶが、そこから始まるテンポのよい人物の紹介に引き込まれていく。
冒頭はみぃたんの可愛さにとにかくメロメロになった。
お父さんの友人として突然現れた石原さとみさん演じる梨花さん。
生活感に溢れた部屋の中が一瞬でキラキラとした女の子らしい部屋になり、オシャレでいる事、笑顔でいる事を教えてくれる美しく明るい女性。
初めこそ警戒心はあったもののすぐに打ち解ける2人。
水戸さんと結婚し、みぃたんの母親になった梨花さん。
血のつながりは無いが、いつでもみぃたんの事を考えて笑顔を絶やさず行動する梨花さんの子育てに凄いな…私ならもっと自分を優先してしまうと反省してしまった。
夢を追ってブラジルに行く決心をした水戸さん。
ブラジルには行かず日本にいたい梨花さん。
その二人の狭間でゆれ、日本に残る事を決めたみぃたんの涙に胸が痛くなった。
次のお父さんとなった泉ヶ原さんは梨花さんの事もみぃたんの事も丸っと愛と包容力で包んでくれる素敵な男性だった。
永野芽郁ちゃん演じる森宮優子は、どんな事があっても笑顔を絶やさない女の子。
嫌味を言われても、卒業式のピアノの伴奏を押し付けられてもニコニコと笑顔でかわす。
田中圭さんが演じるのは、優子ちゃんの父親の森宮さん。
仕事の手柄を横取りされても仕方がないと諦めるような奥ゆかしい男性だ。
子どものころ運動会でバトンを落とした事を今でも昨日のことのように鮮明に覚えている。
優子ちゃんと森宮さんは血は繋がっていないが、森宮さんは優子ちゃんに美味しい料理を作り、良い父親でいようと一生懸命だ。
優子ちゃんはいちいち父親ぶる森宮さんをすこしウザく感じていて、それを案外ひどい言葉でストレートに伝えるあたり、どんな事も笑顔でかわす優子ちゃんにとって森宮さんは心の許せる存在なんだと感じる。
そんな2つの家族の物語。
2つの家族が重なった瞬間から涙が止まらなかった。
事前情報を完全にシャットアウトしていた訳でも無かったのだが、私はどれだけピュアにこの作品を見ていたのだろうと呆れる程。
今思えばこの映画は伏線だらけなのだけれども、優子ちゃんとみいたんが繋がった瞬間「そう言う事⁉︎」と初めて気づいた私。
しかも随分と遅れて…
これ程までに、なにも考えずに映画の前半を見ていた人はどれだけいるのだろうか?
自分でも笑ってしまうほどになにも疑わずにみていて、まんまと引っかかった。
そんな自分にちょっと笑ってしまった。
映画のラスト、結婚式のシーン。
森宮さんが早瀬くんにかける言葉。
森宮さんがこれまでよく口にした「父親らしい」という言葉。
何でそこまで親子らしさ父親らしさに拘るのかずっと不思議だった。
でも最後の言葉でようやくわかった。
森宮さんは優子ちゃんという沢山の人の愛が詰まった女の子を育てる事に必死だったんだろう。
病気になったら運転できるようノンアルで過ごすほどに…
小学生の頃バトンを落とした記憶が忘れられない森宮さん。
絶対に勝てない母親という存在にすこし怯えながら、渡されたバトンを落とさないように、大切に大切に育ててきたんだと思うと、涙が止まらなかった。
苗字が何度も変わることは側から見たら複雑なのかもしれないが、心から愛してくれる人達が沢山いる優子ちゃんは本当に幸せで、心から愛せる人がいて、優子ちゃんの為に一生懸命生きた森宮さんも、優子ちゃんのお母さんもきっと幸福。
自分がここに生きている事は、沢山の人たちの選択が生み出した奇跡なんだと思うと、自分や、自分の子供のこれまでを紡いでくれた人たちへの感謝の思いが溢れた。
そして最後のナレーション。
あぁ彼の声だった理由はこのシーンの為だったんだなと思った。
エンドロールに流れる写真はもう泣けるやら温まるやら…
一緒に優子ちゃんを育ててきたような気になった。
そんなこんなで、まんまと親達の嘘に騙された私は、次の回のチケットを手にしていた。
真実を知った今、もう一度観たいと思ったのだ。
記憶の鮮明なうちに観た2回目は、1回目よりもっと泣けた。
優子ちゃんのファッションは完全に母親の影響を受けているし、ベランダでシャボン玉を吹くシーンなんて、お母さんの面影が凄かった。
優子ちゃんの笑顔でいる理由もよく分かった。
あのラストシーンで森宮さんに感情移入しすぎたばかりに、森宮さん目線で2回目を観たものだから、棚の上に敷かれた布や、キッチンに溢れるセイロや鍋などの沢山の調理器具をみただけで、「森宮さん頑張ったね」と涙腺が崩壊するのだ。
卒業式のシーンなんて…森宮さんが抱えてきた苦労や不安、優子ちゃんへの愛情を思い、森宮さん並みに滝のような涙が止まらなかった。
森宮さんのビジュアルは、田中圭さんが演じているだけあって格好良いのだが、品のあるくたびれ感、清潔感のあるくたびれ感が絶妙だ。
同窓会にボサボサの髪型で来てしまうところも愛おしい。
一生懸命だがちょっと残念な森宮さんの優子ちゃんにそそぐ愛は温かくて優しい。
優子ちゃんに注意しただけでお腹壊しちゃうんだもん。
もう可愛すぎる。
先日観た総理の夫の日和くんも温かい夫だったけれど、夫にしても父にしても田中圭が隣にいるだけで温浴効果が半端ないのだ。
総理の夫で巻き込まれ俳優としての本領を発揮していた圭さんだが、まさか『そしてバトンで』でこんなにも巻き込まれていたとは思わなかった。
優子ちゃんと初めて会った森宮さん…巻き込まれすぎて不憫で笑えちゃった。
巻き込まれた上に逃げられちゃって、本当ならヤサグレでもいいぐらいなのに、楽しそうに優子ちゃんのお世話をする森宮さん。
優子ちゃんという存在に救われていたんだね。
自分に自信がなくて、父親として何ができているのかいつも自問自答している森宮さん。
優子ちゃんの目指す職業、その理由を聞いた時の顔がすごく良かった。
子はいつだって親のことを見ている。
子の未来に自分達は大きな影響を与えているのだ。
この映画は育児についても考える良いきっかけになった。
子どもと過ごす時間はかけがえのないもので、子供にとって親は本当に大切な存在なんだと思うと、ちょっとね…ちゃんとしなきゃと思いましたよ。
私は仕事が忙しくて、平日子どもといる時間が短いんだけれど、帰ると未だ必ずハグをしてスキアラバキスをしまくるんだけど、娘からは「ねえ、何でママはそんなに私が好きなの?」とウザがられる事もあるんだけれど、子どもが大きくなって、ウザいほどに与えた愛を思い出してもらえるように完全拒否されるまでは続けていこうと思った!
そして梨花さんのように子どもには何でもしてあげるという事では無いけれど、できる事を考えて工夫して色んな経験を与えてくれた自分の母親のことも思い出した。
子を持つ親にも親を持つ子にもきっと伝わる温かい作品。
出会えたことに感謝したい作品だった。
是非沢山の人に見ていただきたい。
観賞後に見ると泣けちゃう
森宮さんの愛
雨音
▼私の母の話はこちら
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?