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小説(1分以下)

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小説(1分以下)
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#短編小説

20秒小説『孤独飲ませろせがむ友』

20秒小説『孤独飲ませろせがむ友』

「フラれたんだって?」
「嗚呼」
「飲みに行くか?」
「いい」
「そう言うな」
「独りにしてくれ」
「奢るから」
「いや、いい。知ってるか?"千年の孤独"って酒」
「焼酎だろ?知ってるよ」
「実はこんな日のために買い置いてある。今夜は独り、家で飲み明かすさ」
「せめて五百年にしとけ、千年は永すぎる」
 俺の肩を無理に抱き、友が歩き出す。ネオンが歪む。
「馬鹿やろうが」
 鼻声で毒づくと、髭面の笑顔

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10秒小説『平安スタイル』

10秒小説『平安スタイル』

「酷いよ!直樹君が”平安時代の女性”がタイプって言うから整形したのにぃ!」
「いや気持ちは嬉しいんだけど、その目ちょっと迫力があり過ぎて……なんか勘違いしてない?」
「してない!調べたもん!平安時代の女性は皆、十二一重だったって!」

20秒小説『ペヤング』

TV「ニュースです。米誌ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスクは、緊張する世界情勢や、高度な人工知能の登場、気候変動といった脅威を分析し、人類滅亡を午前0時に見立てた"終末時計"の残り時間を"90秒"と発表しました」

俺「おいっ!湯入れたばっかだぞ」

10秒小説『間』

亀「助けて頂いて、有り難うございます」
太郎「いえいえ』

亀「なにか?」
太郎「いや、別に……」

亀「あ」

太郎「……」

亀「やっぱ、あれですよね……」
太郎「あ、いや、そんなつもりじゃあ……」
亀「ごめんなさい。気がつかなくて」
太郎「いや、ほんと全然……」
亀「助けて頂いたお礼に、竜宮城にお連れしましょう」

太郎「そう?じゃあ……お願いしようかな」

10秒小説『理解』

「君に足りてないのはホウレンソウだ!」
 上司に指摘され「野菜不足?」って一瞬思っちゃったよ。笑えるよね。でも違う。"ここぞという時には普段以上の力を出す!ポパイみたいに"深いなぁ。
 決めた!誰の力も借りない。何事も自分一人でやりきる!

10秒小説「水馬」

 老夫婦が橋の上から川を覗いている。お婆さんが「今日はアメンボしかおらんねぇ」と言った。お爺さんは何も言わない。
 父親を亡くしたばかりの僕は、母を想って涙ぐむ。

5秒小説「過剰」

「今、私の胸見たでしょ!?」
「見てないよ」
「ウソ!絶対見てた」
「いや、興味ないから」
「え?インポってこと?」
「はぁー?!」

30秒小説『テナント』

30秒小説『テナント』

「こなださ、むっちゃ面白いことがあってさ」
「なになに?」
「隣町の例の廃ビルあるじゃん?」
「うん」
「あそこ通りかかってたらね。声がするわけビルの中から、で近づいてみたら、ぼわーと何か白い――」
「ちょっと待って!それ怖い話じゃない?」
「最後まで聞いて!で近づいてみたらなんと小僧寿しなのよ」
「は?」
「小僧寿しが、ぼんやり光ってふわーと宙に浮いてたの。むっちゃ笑えない?」
「いや、怖いよ」

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2秒小説『誤解』

「あ、そこにご飯粒付いてるよ」
「え?」
「取ってあげようか?」
「きゃー!セクハラー!」

30秒小説『目指せCEO』

「君の彼氏になりたい」
「ごめんなさい」
「そっか……じゃあ友達から――」
「それも、ごめんなさい」
「え?まじか……」
「でもアンバサダーなら」
「アンバサダー?」
「ええ」
「それって友達以下なの?」
「うん、でもカスタマーエンジニア以上だよ」
「カスタマー?何?」
「エンジニア、ちなみにタカシ君がそう」
「え?あいつカスタマーエンジニアなの?」
「うん、そう」
「じゃあ俺、あいつより上ってこ

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10秒小説『まだ』

「すいませーん。この単行本、ちょっとだけ中見ちゃだめですか?」
「すいません」
「買いたいんだけどなぁ、もう買ったやつかなぁ……」
「あ、この巻は、主人公の恋人が実は敵のスパイ――」
「ちょっとぉぉぉお!」

10秒小説「どん」

どんっ!
「あっ、ごめんなさい」
「いえ」
「大丈夫ですか?わざとぶつかったんですけど」
「え?」
「痛くなかったですか?」
「いや……ちょっと痛かったです」
「良かった。じゃあ」
「え?」

「え?」

30秒小説『設置』

「”ピザ”って10回言って」
「ピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザ」

・ ・ ・

「いや!どこ?」
「え?」
「いやだからどこよ?」
「どこ?ここのこと?高円寺だよ」
「じゃなくて!『ここは?』って言えよ」
「ここは」
「いや、ちゃんと指さして!」
「指さす?どこを?」
「いやだから、ここだよ!」
「ヒザを指させばいいの?」
「違ーう!ここはヒジっ!」
「くそー、ひっかけかぁ」
「俺はひ

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30秒小説『それでも僕は変態する』

30秒小説『それでも僕は変態する』

 しなだれた枝先に種だけ残しじゅるりと果肉音も静かに水溜まり途切れ途切れの波紋群がるオタマジャクシ。

「きゃっ!あんた今触ったでしょ!」
「え?俺?」
「あたしの身体触った」
「触ってねぇよ」
「嘘!股間を押し付けてきた!」
「股間?まだねぇよ!言い掛かりは止めろ!」
「出ていけ!」
「そうだそうだ!」
「オスになる予定のオタマは出ていけ!」
「え?ここってもしかして?」
「女性専用水溜まりよ!

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