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サルトリアとアルチザンと職人。

アルチザン系のブランドを知っていますか?

その問いの前に少し自分を自己紹介すると、アパレルの世界に身を置いて20年ほど、自分の一番多いキャリアはサルトリアです。
直訳すると仕立て屋さんになるのですが、勤めていたテーラーでは
厳密にはフィッターという職業になると思います、お客様の寸法に合わせて最適なサイズを抽出し、工場に型紙を起こしてもらうべく指示する役割です。代官山、銀座、新宿と経験し最後は大阪のハービスプラザでサルトリアタリオドーロ(黄金の裁断)というお店を立ち上げに参画しました。


そのあと、バーニーズニューヨーク神戸店のオープニングからメンズグループのマネージャーとして、デザイナー、シューズ、ファニシング、ゴルフ、そしてスーツを管轄していました。


代官山オフィス メンクラの撮影。

その経歴の中で「アルチザン」のブランドに触れる機会が一番に少なかったのです。

アルチザン系を直訳すると

① 職人。工匠。
② 技術はすぐれていても、芸術的神髄をきわめていないため、感動を伴わない作品をつくる者。職人的芸術家。アーチザン。

精選版 日本国語大辞典

となっています。
職人と聞けば、先にお伝えした「仕立て屋」サルトリアも職人の世界だと思うのですが、少し区別されるのです。

ブランドで言えば

ポールハーデン
私はこのブランドのジャケットが世の中で一番かっこいいと思っています。

MAクロス

https://shelter2.com/?mode=grp&gid=1127169

Carpe diem

これが代名詞ですね、詳しくない私でもこのブランドの影響力は知っています。

 GUIDI

マルモラーダ


バーニーズニューヨークでも取扱いがあったものも多くあります。

アルチザン系は、建築家、彫刻家出身も多く、従来の服を作るアプローチとは少し違う服を着ることに哲学的な解釈をしています。また技術的にも細部にまで徹底的にこだわり抜いて表現し作品に仕上げています。例えばレーベルアンダーなどは革を一度、土の中でエイジングさせてから製品化するとの逸話も聞いたことがあります。そして、見てわかる通り高額です。安くて10万〜 物によっては70万を超えるようなアイテムも存在します。

私は初め驚きました。確かに物作りへの情熱や工程のプロセスはかっこいいのですが、この系のブランドをきていると「見た目」がどうもモード系バリバリかビジュアルバンド系の少しチャラチャラした雰囲気にも見えてしまう。なんか節操のないファッションにも感じていたのです。(それであまり関心がなかった)


バーニーズニューヨークメンズチーム

比べて私が学んできた、サルトリアの世界、特にクラシコは職人の伝統的技術が服に縫製として反映されて、また見た感じも紳士的で、わかりやすかったのです。アットリーニやブリオーニなどは袖をとうせばその軽やかな着心地は素晴らしいく特にナポリ系の仕立ては私の好みでした。イザイアなどは芸術性も高くその世界観は唯一で美しく、かっこいいと思っています。

https://isaia.jp/

そうするとついつい、なんかいかがわしい世界のようにアルチザン系を見てしまっていたのですが「
良くよく見てみるとまた違う魅力がある。アメリカ的な「耐久性」「防水性」「動きやすさ」といった機能的な解釈ではなく、サルトリア系の縫製技術でもなく、また別なんです。

服に「芸術性」を追求する姿がこのアルチザンブランド達にはあるように思います。

職人が芸術性を追求する「アート」としての価値をもつ服。

私はこの視点にこそ、日本の伝統工芸技術、地場産業の技術のこれからの「新しい価値の創出」があるのではないか?と考えています。

アパレルマンが全員読んだマストブック

服を開発するときに別に「機能面」だけでなくてこうした「感覚的」な芸術的価値に目を向けるのもいいのではないでしょうか?
もちろん、アートだと言うならば「問い」が必要です。その背景には職人の「哲学」「思想」などが反映されることが望ましい、職人自らが一度自分の「本当に作りたい服」は何か?
追求しまっくって服を作成したら「日本の職人が手がける服」として世界的に価値があるんじゃないでしょうか?
世界に台頭する「日本のアルチザン系」を生み出すんじゃないでしょうか。

服は元々、多様性の高い文化だと思います。服は人類学的に人の営みと進化してきた生活必需品ですが、職人の確かな技術と日本人が持つ元来の感覚的思考を活用して、「芸術作品」としての価値が見出せると思います。

もっと日本の職人の方々には「挑戦」をしていただきたいと思います。
市場を追求するあまりファストファッションと同じ土俵で戦う必要ないと思います。そこはユニクロさんにお任せして、独自の「強み」を追求して磨いていっていただきたい。「売れようと思って売れる服」はないと思います。
そんなことを考えるより、これまで培ってきた地場産業さんや職人さんの技術を駆使して追求することで「自分のブランドにあった独自の市場」を生み出せると思います。

そうして、大量生産に向かない手間隙のかかる技法で、職人自らがこだわり抜いた手法で、時間をかけて丁寧に生産された服は「スローファッション」だと思うのです。

今、エスショップでは日本古来の技術を活用した服を取り扱いしています。どのベンダーも素晴らしく、私たちアパレルマンが見逃しつつある「ドメスティックブランドの素晴らしさ」を最近改めて感じています。パタゴニアもいいですが、実は日本にもエシカルな服があったのです。オーガニックコットンよりも地球に優しいブラウンコットンを自ら栽培し生地にているブランド。生産数が少なくなるにも関わらず、昔ながらの織り機を使用したやわらかくとも丈夫な日本古来からの綿織物の服。などなど産地直送の日本で作る良い服は全てスローファッションのに取り組んでいました。

もしスローファッションに関心、興味がある地場産業のメーカーさん、職人さんいましたら私たちジャパンブランドを一緒に作りませんか?

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