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「公園通りの猫たち」 早坂暁

4年前に88歳で亡くなられた作家、脚本家の早坂暁さんの本です。もう30年以上前に出版されました。

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 早坂暁さんといえば、40年近く前に吉永小百合さん演じる「夢千代日記」やその後、友人である渥美清さん、桃井かおりさん演じる「花へんろ」などのドラマで有名です。平賀源内役の山口崇さん主演の「天下御免」も子どもの頃見た記憶があります。林隆三さんや坂本九さんも出演されていました。

けれどもその作者とこの猫の本の作者が同じだと気がついたのは随分後のことでした。

 子どもの頃から病弱だった早坂暁さんは10才まで生きられないだろうと医者に言われ、お大師様におすがりするしかないと考えた母親が乳母車に乗せ四国のお遍路に出たそうです。

車も電話もない時代、たくさんの方に助けられて八十八箇所回られたそうです。そして八十八才まで長生きされました。

成人してからも数々の大病をされましたが、そんな中50才~60才の時に渋谷の公園通りに住んでいて(住んでいるというより仕事場として借りていたホテルを住居としていたのですが)夜な夜な散歩に出るとたくさんの猫達に会ってそこから猫観察が始まりました。

今の渋谷では考えられませんが、その頃はまだノラ猫達が住める環境だったようです。というのも住民達が皆ノラ猫達の存在を知っていてみんなで見守っているという感じでした。
どの猫がどの猫の子どもで孫で…まで把握していて、名前までつけられていたのですから。

もちろん性格も縄張りもみんなわかっていて病気になってもすぐに誰かが気がついて助けてあげていました。

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そんな猫達と住民達との面白くて心温まるエッセイです。
続編の「嫁ぐ猫 公園通りの猫たち それから」も7年後に出版されました。

 早坂暁さんが晩年書かれたエッセイをまとめた「この世の景色 」

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 広島の原爆で亡くされた妹さんのこと(実は妹さんはお遍路道でもある家の前に人形と一緒に置き去りにされていて早坂暁さんの家で育てられました。血の繋がりがないことを聞かされた妹さんがどうしても兄に会いに行くと出かけた途中の広島駅で原爆にあったということです)
妹さんの恋心を知って母親が伝えたのですが、残念でたまりません。
芦田愛菜ちゃんが妹さん役の『春子の人形』はテレビでも見た記憶があります。

親友の渥美清さんのことも書かれています。「男はつらいよ」も最初脚本を依頼されたのは早坂暁さんだったそうです。

そのエッセイの中に中学生に向けたメッセージがあります。

「あなたたちの前には未来と大きな可能性があります。
どう生きてどんな人生にするのかは、自分自身で切り開くことができるのです。
ひとりひとり、何をしたい人間になるか、何ができる人間になるかを考えて、これからの人生を歩んで行ってほしいと思います」

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