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幼稚園に行きたくない

大阪の枚方市に御殿山という町があり、名古屋から私たち家族は引っ越してきて1年だけ住んだ事があります。

私の子供時代の『原風景』的な場所です。
名古屋時代もわずかな記憶がありますが、やっぱりコチラの方がもっと鮮明な記憶として残っており、色々な感情が芽生え始めた時期でもあります。

私は5歳になっていて、近くの幼稚園に通っていました。
姉は小学校に通っていて、毎日のように給食のジャムを持ち帰っていました。
冷蔵庫を開けると、冷蔵庫の扉の収納棚の片隅に、透明の小さな四角い袋に入ったジャムが置かれていました。
1番多かったのが『マーマレード』
『あんず』もあったかな?時々『いちご』もありました。
私はそのジャムをおやつがわりにちびちびとなめて、
『なんでお姉ちゃんはこんな美味しいものを食べずに持って帰ってくるんだろう』と1人悦に入っていました。

話が少しそれました。

幼稚園までの登園は近くに住む何人かの子供たちと集団で列を作り、誰かの母親が交代で連れて行ってくれてたように記憶しています。

ワリと幼少期の記憶が良い方の私ですが、
幼稚園の中の出来事はあまり思いだせません。でも、いくつか強烈に記憶に残っている出来事があります。
そのひとつが
『幼稚園に行きたくない』
です。

当時私は御殿山の集合団地に住んでいて、その部屋は1階の道路側にあたる団地の端っこ側でした。

いつものように朝、『行ってきます!』と玄関を出ると、私の集団が引率の母親とともに目の前にすでに列を作っているのが見えました。

私は自分の心の内側から
『今日は行きたくない!あの列に入ってしまえば、幼稚園に連れて行かれてしまう‼︎』と聞こえたのか、咄嗟に団地の壁にもたれるように身を潜めました。
集団が行ってしまうのを見届けて、『さて…』と何をしていいのかもわからず、そのままずっと壁にもたれかかっていました。

その壁というのが私の住んでいる部屋側にあたる壁で、しばらくすると家に幼稚園から電話がかかってきたのが母の話し声でわかりました。
『え?!行きましたけど?』みたいな会話が壁の向こう側からなのか、ベランダの戸が開いていたからなのか、聞こえてきました。
すぐさま玄関から母親が飛び出してきて、私に気付かず、先程の列ができてた道へ駆けて行くのが見えた時、今声をかけないと!と思った私はおそるおそる『お母さん…』と呼んでいました。

母はびっくりして私に駆け寄り、なんて言ったのかはハッキリ覚えていませんが、
おそらく、『なんでここに居るの?』みたいな事だったと思います。
とにかく一緒に幼稚園まで行くと、担任の先生が私の体調を心配しているような事を聞いてきてその後、『今日は来たくなかったのね。』と。
私がコクンとうなずくとそのまま帰りは確か車?で家まで送ってくれました。

すごくバツが悪い気持ちと母に悪かったなという気持ちと幼稚園を休むことができたちょっぴり嬉しい気持ちが入り混ざっていたのを覚えています。

なんでその日行きたくなかったのか、今でも理由は分かりませんが、飛び出してきた母の姿と帰りの車中での光景を
今でもぼんやりと思い出すことができます。

その後、何十年も経ってからどうしてもこの場所をもう一度見たくて、母と一緒にこの団地を訪れ、通っていた幼稚園も見に行くことができたのですが、家から遠く感じた幼稚園がそんなに遠くない場所にあったので、びっくりしました。

でも母と一緒に懐かしむことができて、すごく嬉しかったです。

それもまた今では思い出となりました。



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