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映画『HELLO WORLD』界隈の「よくある(ニッチな)質問と回答」をちょっと作ってみたよ

映画『HELLO WORLD』が公開されて、早いものでもう5年になります。その間、劇場での上映機会は残念ながらほとんどなかったのですが、各種動画配信サービスやBlu-ray、DVD等であらたに本作に触れる方は確実に増えてきています。新鮮な感想を見るたびに一ファンの端くれとしても非常にうれしく思っています。

一方で、上映当時と比べて後から観た人はどうしても周辺情報が得られにくい、というのが悩ましい点です。Web上の情報の散逸や消滅も増えていますし、SNSでの盛り上がりもニッチで内輪なものになりがちで、一見さんがマニアのコアな話題についていけなかったり、情報を集めるのも一苦労、という場面を時々目にします。一方で、上映当時にはなかったあらたな情報の蓄積も確実にあります。

ということで、本作を気に入っていろいろ情報を集める方の参考になれば、と思い、FAQと思われる項目を中心に、自分が把握している情報をこの機会に整理してみることにしました。

以下、かなり予防線を張ってしまいますが、注意事項です:

  • できるだけ公式由来の一次情報やメディア記事をソースとするように心がけていますが、内容の信憑性を保証するものではないです。また映画が多くの人によって作られるスタッフワークである以上、たとえ制作陣の方の発言であってもスタッフ間で認識の相違がある可能性はあります。一部、ファンの方がイベントなどで聞いてきた情報なども含まれます(典拠となる投稿等は可能な限り明示しています)。

  • 「これは事実と異なる」「こういうことを書かれると困る」というようなことがあればどうかご連絡ください。公式に迷惑になるようなことが少しでもあれば修正します。逆に、本記事の真偽を公式に問い合わせるようなことはお控えください。疑義があれば当該記載は削除します。

  • 自分はあくまで一ファンであり、しかも映画が公開されてしばらく経ってから情報を集め出した完全なニワカです。イベントの類もほとんど参加できておらず「又聞き」の情報も多いため、不正確な情報や間違いがある可能性がかなりあります。もしお気づきの点があればどうかお知らせ下さい。こちらとしても不正確な情報が一人歩きするのは避けたいです。

  • ファンコミュニティ関連の情報については、自分は国内の狭い範囲を観測できているにすぎませんので、内輪ネタやあまりにローカルな情報は原則として排しました。自分の見えていない範囲には異なる解釈やスタンスがあるだろうし、多様な解釈が許されることこそが本作の醍醐味だと思います。また自分の周囲のファンコミュニティを代表する意図、解釈のスタンダードとする意図は決してありません。あくまで「自分調べ」「独自研究」の一解釈でしかありません。

  • 正直、かなり自分用のメモ(特に公式由来なのか自分の妄想なのかわかりにくい事項についてちゃんと記録しておく)という要素が強いので、読み物としては面白いものではないと思います。すいません。辞書的に使って頂くのが良いかもです。メジャーなFAQはだいたい公式媒体からわかるので、結果的にめちゃくちゃニッチでマニアックな話になってしまいました。もし他に何か調べて欲しいことがあればご連絡ください。わかる範囲で追記します。真に初心者向けのFAQはこちらの記事をどうぞ

  • 記事の性格上もありますが、どうしても厄介ハロワ警察オタクマウント感溢れる記事になってしまっているのは否めません……。ひとえに自分の文章力がないせいです。本当に申し訳ないです!! ご新規の皆様、自分以外のファンはみんな節度ある紳士淑女の方々ばかりなので、どうか敬遠しないでいただければ……!!


『HELLO WORLD』という企画はいつ、どのようにして立ち上がったのか?

Q:映画『HELLO WORLD』の企画の立ち上がりはいつ頃?
A:伊藤智彦監督、野﨑まど先生、武井克弘P、グラフィニカさんによる「SF+CG+劇場アニメ」という企画が立ち上がったのは恐らく2014年末〜2015年初頭。当初の企画はその後仕切り直しとなり、2017年3月の「合宿」で現在の『HELLO WORLD』の基本コンセプトが固まったらしい

映画『HELLO WORLD』という企画の立ち上がりについては、主に以下の資料が詳しいです。

https://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1571880393&p=2

以下、これらの記事やツイートから、時系列を再構成してみました(間違いがあったらすみませんがご指摘下さい)。前後する関連イベントについても記しています。

こうしてみると、おそらく2014年末〜2015年初頭あたりが転機だったのではないかと思います。今年でちょうど10年! そして彼らを引き合わせていった武井Pの功績がすごい。

『[映]アムリタ』『know』『楽園追放』『正解するカド』あたりが相互に絡み合って企画が生まれていく過程も、すごく面白いと思います。『know』に惚れ込んだ二人のプロデューサーがほぼ近い時期に3DCG×SFという企画をまど先生に持ちかけ、さらに『楽園追放』とグラフィニカさんが両者をつないでいる構造。『正解するカド』と『HIMEプロジェクト』がほぼ並行して進められ、一足先に『カド』が放映開始したあたりで『HIME』が仕切り直しになっている。

自分は常々、『カド』のテーマをより万人向けにした要素が『HELLO WORLD』にかなり含まれているなあと思っているのですが、時系列で見てみると腑に落ちるものがあります。

ちなみに『HELLO WORLD』が立ち上がってからも、主人公達の名前がしばらく「平」「行」だったり、「一行」でなく「一条」だったり、図書委員でなく陸上部だったり、直実が眼鏡をかけていたり、と初期構想はかなり違うものだったようです。

『HIMEプロジェクト』については次節でもう少し詳しく見てみたいと思います。

『HELLO WORLD』の前身企画『HIME』プロジェクトとは?

Q:『HELLO WORLD』の前身企画とは?
A:『HIME』プロジェクト。世界改変能力を持つ「姫」がヒロインの、かなりSF色、メタ要素の強い作品を志向していたが、よりエンタメ度の強い作品を作る方向となり、この企画は没になった。
『君の名は。』によってアニメ映画を取り巻く状況が変わったのも一要因ではあるが、決して『君の名は。』みたいな映画を作れと言われたわけではない。

前の項でも書いたように、『HELLO WORLD』には前身企画である『HIME』プロジェクトがありました。

ちなみに『HIMEプロジェクト』がタイトルというわけではなく、タイトルは『HIME』らしいです(Blu-rayスペシャル・エディション小冊子p.52)。

途中でシナリオが没になり、現行の『HELLO WORLD』が新たに提案されたということですが、映画パンフレットには以下のように書かれています。

武井:その年に公開された『君の名は。』によってアニメ映画を取り巻く状況が変わってしまった。東宝社内で求められる企画の種類も変わったんです。

映画『HELLO WORLD』パンフレット

この部分がよくネット上で一人歩きして、東宝内で『君の名は。』みたいな映画を作れと言われて本作ができあがったかのように「誤読」されるケースもあるようなのですが、制作陣は以下のように明確に否定しています。

伊藤:最初の企画は、今よりもさらにSFの比率が高かったのと、『君の名は。』の大ヒットによってアニメ映画を取り巻く状況が変わったのも要因ではあると思います。
ただ、俺自身としては、単純にエンタメ度が足りなかったからだと思っています。

武井:パンフレットの文は誤読をされているところがありまして、「『君の名は。』のような作品を作れ」というようなことを言われたわけではないんです。
(中略)
だから『君の名は。』から学ぶことはあっても、当たり前ですが「『君の名は。』と同じことをやりましょう」と言ったことも一度もないんです。

映画『HELLO WORLD』伊藤智彦監督&武井克弘プロデューサーロングインタビュー

さて、この『HIME』ですが、内容についてはアニメイトタイムズのインタビューが一番詳しいです。

武井:ええ。メタ的な要素もあって、例えば「出だしはアニメじゃなくて実写で、現実の映画館から始まるのがいいんじゃないか」という提案を野﨑さんがされたこともありましたね。
(中略)
現在公開されているものにもメタ的な要素はありますが、よりそれが強調された感じというか。最初に本編を全部早送りで再生してから、巻き戻しで始まる……といったアイデアもありました。
伊藤:ラストシーンが2回ある、みたいなね。
――なぜそのような演出案が出てきたのでしょうか?
武井:我々は「姫」と呼んでいたキャラクターですが、あらゆる事象を改変できる力を持ったヒロインが登場するという企画だったんです。
そのような時空を超越した「姫」の事象の捉え方が、映画を映写室から俯瞰して見ている様子と重なる、という比喩的な意味での描写だったと思います。
ただやはり決め手となったのは、「姫」の能力が強すぎたといいますか、なかなか彼女に悩みや葛藤が生まれず、そこからドラマに持っていきづらかったこともあり、このまま進めるのは難しいのではないかという結論になりました。

映画『HELLO WORLD』伊藤智彦監督&武井克弘プロデューサーロングインタビュー

映画のパンフレットには「無因果世界」などのキーワードも出てきています(ヴァンスの『無因果世界』との関連はわからないです)。また、2019年11月のロフトプラスワンや2024年7月のグランドシネマサンシャイン池袋でのトークイベントでも話が出たようです(概ね上記の既出情報に一致しています)。「1分で映画を終わらせ…」というのが武井Pの「全部早送りで再生」案なのでしょうかね? 

個人的にはこういうのは大好物なので、これはこれで大変見たかった気がします。が、確かに先鋭的すぎるので、より一般受けするという意味では仕切り直しして良かったのだろうと思います。

そして、このメタ性や世界改変というコンセプトは、アルタラやグッドデザインという形で確実に『HELLO WORLD』に受け継がれている気はします。ある意味、ラストシーンの一行さんなんて、まさに因果律を操れる姫という感じがしますね!

「E子さん」って誰?

Q:一部のファンの間で「E子さん」と呼ばれているキャラは一体誰?
A:スピンオフアニメ『ANOTHER WORLD』の第二話「Record 2032」に出てくる猫好きの同級生。制作陣の間で「E子」と呼ばれていた。

自分の周囲の『HELLO WORLD』ファンコミュニティを見ていると、「E子さん」の話題でよく盛り上がります。元々はそれなりにローカルな用語ではあったのですが、一応公式由来ということと、同人誌が2冊も出るなどカルト的な人気を誇っており、だんだんローカルでは済まされなくなってきたため、勝手に説明の場を設けることにしました。

初めて聞いた人は「誰それ?」と思うことでしょう。実際、自分も最初「誰それ?」と思いました。この記事を書くきっかけでもあります(それだけFAQだった)。

実は彼女、スピンオフアニメ『ANOTHER WORLD』の第二話「Record 2032」に出てくる猫好きの同級生(CV:黒沢ともよさん)のことです。

下記の公式ツイートでいうと、右下にいる女性のキャラクターです(なお、本稿ではネタバレ防止のため、これ以上『ANOTHER WORLD』の内容には踏み込みませんが、未見の方はぜひ見て頂きたいです! 配信は終了してしまいましたが、映画本編のBlu-rayスペシャル・エディションの特典で視聴可能です)。

キャラの名前が明かされないため便宜的にこう呼ばれているのですが、この呼称自体はファンの内輪ネタではなく、イベントで制作陣から明かされた情報が由来です。

映画公開当時開催された「本編+スピンオフ“イッキ見”上映会」(2019/10/15、新宿バルト9)でのコメンタリーによると、制作現場での通称が「E子」だったようです。どうもモブにA〜Eと名前がついていたようなんですね。

さらに「やってやりましょう!『HELLO WORLD』出町座アルタラ大作戦!」(2019/12/7、出町座)の制作陣トークでは、もともとはちゃんと名前があったがカットされたという話が出たそうです。どちらも自分は参加していないので、参加された方のツイートを貼っておきます。

あくまでイベントでの発言がベースなので、「公式」情報と銘打って良いかどうかはグレーですが、ただのモブ扱いするにはもったいない魅力的なキャラとして、多くのファンに愛されているので、紹介させていただきました。

集英社文庫の小説『HELLO WORLD』は映画の原作、それともノベライズ?

Q:集英社文庫の野﨑まど先生の小説『HELLO WORLD』は、映画の原作なのか?
A:いいえ。映画のほうは原作なしの完全オリジナル作品であり、集英社文庫は脚本を元にしたノベライズ。

よく、小説の『HELLO WORLD』が映画の原作であって、ストーリーはすべて野﨑まど先生が考えた、という意見を目にしますが、実際には違うと思われます。

上記でも書いたように、映画のシナリオは伊藤監督、野﨑まど先生、武井Pなどの主要メンバーが合宿しながらアイディアを出し合って共同で作り出したものです。まど先生が単独で考え出されたものではないことは、公式パンフレット等からもわかります。

古くからの野﨑まどファンの中には「野﨑まどらしさ」が薄いように感じる意見もあるようですが、それは本作が一種の合作であり、あくまで注文に応えた納品物という性格もあるからかもしれません(もっとも、すべての商業作品はそういうものですが)。とはいえ自分の個人的な印象では、本作は注文に150%応えつつ、しっかりと「野﨑まどらしさ」を残した作品だと感じています。

小説『HELLO WORLD』は初期の脚本にあったとされるエピソード(誕生日会など)がまったくなく、ほぼ映画のとおりのストーリーであり、絵的な描写やキャラの行動の描写に多くのページが割かれています。もしかすると、ある程度絵コンテ等ができあがった後に、それらを参照しながら書かれた可能性はあります。が、これはあくまで推測です。

『HELLO WORLD if』は果たして映画の裏設定なのか?

Q:伊瀬ネキセ先生のスピンオフ小説『HELLO WORLD if ー勘解由小路三鈴は世界で最初の失恋をするー』は、映画の裏設定や補足なのか? これを読まないと物語が完成しない商法?
A:いいえ。映画を補足するものではない、異なる世界線、と明言されています。そういう商法でもないです。ただし裏設定と思わせるだけの強度がある魅力的な物語なのは確かです!

映画本編で途中からフェードアウトしてしまう可愛い系キャラ、勘解由小路三鈴が活躍するスピンオフ小説、HELLO WORLD if ー勘解由小路三鈴は世界で最初の失恋をするー

ブログやSNSなどで、ifは映画の裏設定、映画の補足であり、これを読まないと話が完成しない、という記述をたまにみかけます。またWikipedia等でもifの設定を映画本編の設定として書いていたりします。

しかし、映画の制作陣は「ifは映画の補足ではない」とはっきり言い切っています。

武井:実は僕らは他の媒体を使って補足しているつもりは一切無いんですよ。必要なことは、映画で描ききっているので。

伊藤:文字で見ることでより分かりやすくなっている部分はもちろんあります。けれど映画の補完をしてほしいという意図は一切ありませんでしたし、単純にスピンオフを制作した方々が面白いものを作ってくださっただけですね。

武井:今、三鈴のスピンオフ小説である『HELLO WORLD if ――勘解由小路三鈴は世界で最初の失恋をする――』が大変ご好評をいただいているのですが、これも「スピンオフのお話が来てます」と伊藤さんたちにご相談したら、「ある種パラレルワールドなので、自由にやっていただく方が良いでしょう」と仰っていて。

なので本当に(映画とは)別物として、作家さんへのリスペクトも込めて、自由にやっていただいたという形ですね。僕らが映画で説明し損ねた部分を掘り下げてもらう、といった方向性では制作していないんです。

——劇場アニメ『HELLO WORLD(ハロー・ワールド)』監督×プロデューサー対談 | アニメイトタイムズ

また武井Pも「『HELLO WORLD』本編とは異なる世界線」と発言しておられます。

if終盤の逃走シーンや京都駅ビル大階段でのシーンなどは明らかに映画本編とは違う筋書きになっているので、確かに違う世界線だと解釈するのが自然な気はしています。

映画公開前後に出たブログ記事のいくつかは『HELLO WORLD if』を映画の裏設定として解釈しており、「映画単体だけを見ても全貌はわからない」「ifまで読んで初めて全ての謎が解ける」というスタンスで書かれていました。映画鑑賞直後にその記事を読んだ人達がさらにそのスタンスでブログを書く、という流れができました。そこまでは良いのですが、「そういう商法」と曲解されてしまうこともあり、非難の声も一部で見受けられました。

Wikipediaの『HELLO WORLD(アニメ映画)』の記事も、映画本編の説明にifにしか出てこないあらすじや設定が紛れ込んでしまっているため、ますますそう思えてしまうというのはあるかもしれません(一応、記事に注釈はついているのですが、普通なかなかそこまで読み込まないと思う)。

もちろん映画の裏設定として解釈することはまったく個人の自由で、ひとえにそれだけの説得力のある設定を作り上げられた伊瀬先生の力量の賜物です。もはやスピンオフとは思えない物語強度に、裏設定と思ってしまうのは当然の帰結だと思います。ブログやWikipediaには自分もめちゃくちゃお世話になりましたし、非難するつもりはまったくないです。ただ、少なくとも「映画+ifで初めて完成する商法ではない」「ifは映画の補足ではない」ということだけは、個人的には主張しておきたいなと思っています。

とはいえ、自分もifは本当に大好きです。読み返すたびに惚れ惚れしています。もうこれが本編でもいいんじゃね? と思ってしまう自分も確かにいます。なので「あくまで『補足ではない』と理解したうえで、それでもこれがトゥルーエンドだと信じる」というスタンスはあっても良いのではないかと思います!

A世界、B世界…とは?

Q:「A世界」「B世界」とは何か?
A:大人のナオミがいた世界が「B世界」であることは明言されている。そこから、高校生の直実がいた世界が「A世界」ではないかと類推される。開闢後の世界や月世界の呼び方は不明。

『HELLO WORLD』には階層構造になった「世界」がたくさん出てきます。最初に出てくるのが、高校生の直実がいた世界。実はそれはデータの世界で、その外側に大人のナオミがいた世界があった。さらにラストで、その外側に月面の世界があったことが示唆されます。

これらの世界を何と呼ぶかについてですが、まず大人のナオミのいた世界が「B世界」であることは公式情報で明言されています。Blu-rayスペシャル・エディションの特典小冊子。p.61、62の、撮影監督の小畑さんのインタビューに「ナオミのいるB世界」と書かれています。

小畑 「赤い光」に関して言うと、じつは最初は入れる予定がなかったんです。制作が後半に入ったくらいのタイミングで、やっぱりもうちょっとわかりやすく、A世界とB世界の違いを表現したほうがいい、という話になったんですよ。そこで、ナオミのいるB世界では、赤い光を入れようということになって。

Blu-ray特典小冊子・小畑芳樹さんのインタビューより引用

小畑さんのご発言には「A世界」も出てきます。この世界が何であるかは明言されていませんが、「赤い光の有無で世界の違いを表現する」という趣旨からしても、またシーンの登場順から素直に考えても、おそらく高校生の直実のいた世界がA世界だろうと思われます。確信はありませんが。

なお「B世界」という呼称は、映画公開時にアニメイト新宿で展示されていたアフレコ台本にも書かれていました。伏見稲荷でナオミと直実の記憶が混線したようなシーンに「B世界で見たアルタラ」「B世界のナオミの見た光景」「B世界のカットもう一つ」という記載がありました。

で、階層構造をシーケンシャルに考えるとラストの月面の世界はC世界なのかもしれず、自分はよくTwitterなどではC世界と言ってしまうことも多いのですが、これはまったく根拠がない自分独自の呼び名なのでご注意ください。シーンの登場順で言えば、開闢後がCで月面がDの可能性もありますしw

ただ、文房具カフェさんの『HELLO WORLD』コラボグッズ(カセットテープがモチーフで、「記録」「反転」みたいなところを上手く捉えた素晴らしいコンセプト)のグリーティングカードシリーズが個人的には割と意味深です。カセットテープのインデックスカードを模しているんですが、インデックスカードって普通はA面とB面があるのに、実はこの商品、C面まで書いてあったりするんです(フォロワーさん情報です。ありがとうございます!)。なので、案外「C世界」もありなのかも…と勝手に思っています。

なお、そもそも「A世界」「B世界」も映画本編に出てくる用語ではないので、小冊子を読み込んでいるコアなファンにしか通じないと思います。ご注意ください。

ちなみに、シナリオのパート自体はA〜Dまであったようなのですが、世界と紐付いているかは不明です。

元ネタは何?シリーズ

シューさんのマグカップのハリネズミは?

徐さんのマグカップに描かれたハリネズミは、京都・北山のグラノーラ専門店いわくらぐらのら」の「ハリー」です。ちなみに伊藤監督はハリネズミを飼っているそうです。

オンラインショップもあります。マグカップは少なくとも今はないようですが、ハリーグッズは頻繁に新作が出ているので、徐さんとお揃いにしてみるのもよいかもしれませんね!

千古さんのTシャツの元ネタは? 千古さんのモデルは?

千古さんが劇中後半で着ているピンクのTシャツに描かれた、L字型のキャラクターは、川崎の映画館「チネチッタ」の「らいぶざうんどくん」です。『HELLO WORLD』の岩浪音響監督が考案したキャラになります。このTシャツはなんと映画館売店で購入可能! 千古さんコスプレにはもってこいですね。劇中では千古さんとらいぶざうんどくんが同じ汗をかいているシーンもあります。ちなみに、前半で着ている「えいざんでんてつクラマー」は…見つかりませんでした。

さらに千古さんがPink FloydのDark Side of the MoonのTシャツを着てるところもありますが、これは伊藤監督の奥様のTシャツだそうです。そういえば開闢するところもなんかこんな絵面になってますね。

ちなみに千古さんのキャラデザのモデルはウォズニアックとアーネスト・クライン。

世紀末オカルト学院の素材はどこに出てくる?

エンドクレジットにある「素材協力『世紀末オカルト学院』」。実は、直実の部屋に掛かっている絵が、『世紀末オカルト学院」に出てきたアショカ・ピラー(インド・デリーにある錆びない鉄柱)なのです。直実、なぜそんな絵を部屋に…。そのあと鉄作ってるのじわじわくる。

「オカルト同人誌」ってこれですね。

ちなみに、古本市の本をクラスで集めて2冊だけ集まったうちの1冊が、『神代純一郎の都市伝説 みんなの知らない世界』だったり(神代純一郎は『世紀末オカルト学院』の登場人物)、一瞬映る黒板に「ベントラーベントラー」と書かれてたり。

さらにちなみに、そんなオカルト要素と『HELLO WORLD』的なSFジュブナイルが堪能できる、伊藤監督原作の漫画「ワンダーXの1、2巻がちょうど先日発売になってます!『HELLO WORLD』ファンも『世紀末オカルト学院』ファンも楽しめると思いますので、よろしければぜひ。

キャラの部屋に置かれた物の元ネタは?

「アショカ・ピラー」の絵以外にも、直実やナオミ、一行さんの部屋にはいろんな曰く付きの物が置かれています。

ナオミの部屋に掛かっていた大きな絵画は、アンドリュー・ワイエスの「クリスティーナの世界です。下半身麻痺の女性の姿を描いたこの作品についてワイエスは「大部分の人が絶望に陥るような境遇にあって、驚異的な克服を見せる彼女の姿を正しく伝えることが私の挑戦だった」と述べており(Wikipediaより引用)、足が麻痺してしまったナオミの境遇と重なって心を打ちます。『2001年宇宙の旅』や『オブリビオン』などのSF映画にもたびたび登場しますね。

ちなみに、バベルの塔の絵も掛かってたりします。アショカ・ピラーもそうだけど割とそういうのが好きなのか。

ナオミの机の上に置いてあったヤタガラスの小さな置物は、上賀茂神社の「八咫烏みくじです。

一行さんの部屋にドコモのモンジュウロウのぬいぐるみがあったり、ちゃぶ台の上にロッテのガーナチョコレートがあったりしますが、どれも浜辺美波さんが関わっているからです。

あの本『大湖底都市』の表紙絵は名倉靖博さんによるもの。良い絵ですよね。こうして見ると完全に映画とシンクロする。

直実の部屋にコマとロケットと恐竜が置いてある件は、ちゃんと伏線になっています。あと、あのコマ、『インセプション』にも出てきます。

https://webnewtype.com/report/article/208274/

伊藤 実は、直実の部屋にはこっそりとロケットとコマが置いてあるんです。恐竜の人形もあるので、直実はそういうのが好きな子供だったんですね。で、一方、大人ナオミは、久しぶりに自分の部屋に入って、ロケットとかコマが置いてあるのを懐かしく思ったんでしょう。それであの土壇場でロケットブースターとコマが出てくるという。

劇場アニメーション「HELLO WORLD」舞台挨拶 TOHOシネマズ上野編 レポート②

恐竜はもしかしたら、伊藤監督が『ジュラシックパーク』好きなせいかもしれません。完全に憶測でしかないですが。

直実の部屋に掛かってるかっこいいポスターはDAISYWORLD」というサークルのポスター。こちらのサークルの有馬トモユキさんが『HELLO WORLD』のタイトルロゴデザイン、テロップデザインなど手がけられたご縁からのようです。(有馬さん、ご紹介下さりありがとうございます!)

erobox、カラムーチョって何?

これですw

あとがき

以上、雑多なネタですがまとめてみました。きっかけはこのツイートに21いいね(自分としては驚異的に多い数字)がついたことです。

5年も経つと沼もだいぶ熟成感があって、新規の方々が取っつきにくくなるのは嫌だなあということで書いた記事でした。本作品がさらに10年、20年と愛されていくためにも、新しいファンがどんどん増えて欲しいなあと思っています。

最後になりましたが5周年おめでとうございます! 5年間もこんなに楽しませてくれたこの作品に本当に感謝です。

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もうちょっとメジャーなFAQはこちらの記事をご覧下さいw





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