映画「HELLO WORLD」副読本とスピンオフ一覧—メジャーからマイナーまで
映画「HELLO WORLD」は、設定が練り込まれていながら「軽々に説明しすぎない」という監督のスタンスによって、あちこちに観客の自由な想像の余地を残した作品となっています。そして、ミニマムなロジックで構成されている本編のスキマを埋めるように多数の副読本やスピンオフが存在します(ただし映画は映画で完結しており、スピンオフは映画を補足するものではない、とは公式に明言されています)。
一度見ただけではなかなか全貌がわかりづらい複雑な構成の作品だけに、副読本やスピンオフを読むことで初めて「そうだったのか!」と思えるシーンもあったりして、「HELLO WORLD」を隅々まで楽しむうえで欠かせない存在となっています。もちろんこれらが同じ作品世界の物語なのか、別の世界線なのかも観客の解釈に委ねられていて、そんな論議もまた楽しいものです。
本稿ではこれらの副読本・スピンオフを、メジャーなものから非常にマイナーなものまで独断と偏見で一挙紹介してみます(特に、あまり日の目を見ないマイナーなものに焦点を当ててます)。
なお、本稿で紹介する媒体は基本的に公式が絡んだもののみを選んでおり、個人による二次創作などは含めておりません。
(10/22追記:一番大切な公式パンフを載せるのを忘れていた…。追加しました。また伊瀬ネキセ先生のお名前の漢字を間違えてしまっておりました。お詫びして訂正いたします)
(11/6追記:野﨑まど先生の書き下ろし『遥か先』を追加させて頂きました)
(2020/3/21追記:英語字幕を追加しました)
(2020/4/10追記:円盤関連情報、書籍情報を追加しました)
①公式パンフレット [初級者向け]
まず、何はなくとも公式パンフレットは要チェックです。一般的な映画のパンフレットと比べてかなり詳しく「ウラ話」や細かい設定、伊藤監督インタビュー、伊藤監督、野﨑先生、武井Pのテーブルトークなど、世界観や作り手の思いが存分に語られています。映画本編でわかりにくかったところも丁寧に解説されているので、本編を補完する存在として1つだけ選ぶならまずこれですね。
一般書店等には出回りませんので、映画館の売店で購入ということになります。
2020/6/13追記:ファーストラン終了後は入手が難しくなってしまいましたが、2020年6月現在いくつかの映画館で再上映が行われており、そこではパンフが購入できる可能性があります!
②オリジナルスピンオフアニメ「ANOTHER WORLD」 [初級者向け]
次に、本編に一番近い立ち位置にあると言えるスピンオフ作品「ANOTHER WORLD」です。監督、脚本、声優など多くの要素を本編と共有するだけに、本編の世界観はほぼそのまま受け継がれており、そのまま映画の続きとして鑑賞できてしまいます。
「ひかりTV」「dTVチャンネル」「AbemaTV」での期間限定配信となっており、いつ配信終了になるかわかりません(現時点ではこまめに延長されているようですが)。早めの視聴をお勧めします。自分はdTVの1ヶ月無料おためしアカウントを作って視聴しました(再生できないように見える時は「関連ビデオ」か「見逃し」という所からたどると良い。やり方をこちらにまとめました)。
武井P曰く「ナオミ3部作」「映画と合わせて観ると2倍美味しい」。カタガキナオミ空白の10年間。彼をそこまで衝き動かしていたものは何だったのか。そして一行さんの思い。これを見てから本編を見ると何気ないシーンにもハッとさせられ、また新たな謎も生まれる。ある意味、本編以上に密度の濃いスピンオフだと思います。
2020/4/10追記:Blu-rayスペシャル・エディション特典ディスクに収録されました! dTVチャンネル動画配信も今のところ続いています(詳細はこちら)。
2023/8/11追記:2021/11に配信が終了し、公式サイトもなくなってしまい、現在では映画本編のBlu-rayスペシャル・エディション特典で見るのが唯一の方法になってしまいました。ですが、映画本編を気に入った方には、ぜひとも見て頂きたいです!!
公式サイトもInternet Archiveに残っており、非常に格好良いのでご覧になってみてください(読み込みに数分かかります。PCからでないと見れないかも)
③ノベライズ(原作):野﨑まどノベライズ版『HELLO WORLD』 [初級者向け]
本編の脚本を担当した野﨑まど先生によるノベライズ『HELLO WORLD』。つねづね脚本は映画の本質であると思っている自分にとっては、野﨑まど先生自らのノベライズは公式に限りなく近い副読本と言えます。
よく「原作本」と称され、自分でもわかりやすさのためにそう書いたりしていますが、恐らくは脚本のプロットのほうが先にでき、それをノベライズしたものではないかと想像しています(野﨑先生の原作にしてはあっさりしており全般的に「ノベライズ調」なので)。ただし映画と異なるところも多く、もしかすると初期脚本の痕跡をとどめているのかもしれません。特に映画で描き足りていない部分や誤解を受けやすい部分が丁寧に書かれており、「ああこの描写を映画本編にも足していれば…」と思うことも。
いつもの外連味たっぷりな野﨑作品とは少し違う、オーソドックスな王道物語。しかしその節々に本・物語・SFへの深い愛情が感じられ、普段めったに見せない野﨑先生の真摯な本心を垣間見た気になってしまう(笑)。そして心の機微の描写の細やかさとストーリーテリングの確かさには驚いてしまいます。もちろんロジックの堅牢さは健在です。ノベライズという枠を超えて、傑作であると自分は思います。
④特別書き下ろし:野﨑まど『遥か先』 [初級者向け]
2019年10月31日。多くの映画館における「HELLO WORLD」の上映最終日(もちろんその後も上映館はまだまだあります!)。突然、野﨑まど先生の特別書き下ろしが発表されました。しかもこのnote上で。
※映画本編の後日譚、「エンドロールのアレ」になりますので、必ず本編を見てから読むようにして下さい。
武井Pによると
とのこと。その言葉どおり、もう一度劇場に足を運びたくなる。彼らにもう一度会える。語られなかった彼らのささやかな幸せを願うことができる。ただのテキストデータなのに、なぜか完全な映像と音声が脳内で展開されるんです、伊藤監督のカット割りで。映像想起能力がとんでもないです、この文章。そして…さらっととんでもないSFです。はい、これはSFです。しかもANOTHER WORLD 3話からのこの展開(この辺、別エントリにまとめようと思います→まとめました)。
こんなすごいものを無料で読ませて頂いて申し訳ないくらいです。とにかく読んで、その幸せな余韻にしばしひたってください。そしてもう一度、劇場に足を運んで、エンドロールを見て下さい。映画のラストがよく分からなかった方にも、補完資料として非常にお勧めです。
2020/4/10追記:BDスペシャル・エディション封入特典『THE RECORD FRAGMENT』スピンオフ3部作の一つとして収録されました! ちなみに、わずかに修正されています。
⑤ムック:映画HELLO WORLD公式ビジュアルガイド [初級者向け]
公式副読本として非常に資料価値の高いのがこの『映画HELLO WORLD公式ビジュアルガイド』です。
本編のシーン画像を潤沢に使用したストーリーガイドに始まり、インタビュー、設定資料集、ロケ地マップ、用語集など大変充実した一冊。DVDがまだ発売されていない現時点では、この本の画像を頼りに考察を深めることも多いです(映画では一瞬しか映らないあのシーンとかあのシーン…)。
実は、「物語回想」の各ページのタイトルをよく見ると『しあわせの理由』『たったひとつの冴えたやりかた』『果しなき流れの果に』…まるで直実の本棚を見ているかのような名作SFのタイトルがずらり。どうも編集部にガチなSF好きの方がいらっしゃるようで、思わず嬉しくなります。
そして自分として外せないのは野﨑まど先生の寄稿ですね。そのメタな仕掛けもいかにもな感じで絶妙なのですが、この寄稿自体に本作を読み解くためのキーワードが散りばめられており、HELLO WORLDの世界観の中心原理をまさに描いた一篇と勝手に解釈しています。
⑥小学生用ノベライズ:松田朱夏『HELLO WORLD』映画ノベライズ みらい文庫版 [中級者向け]
実はHELLO WORLDにはもう一つノベライズがありまして、それがこの「みらい文庫版」です。
主に小学校高学年あたりをターゲットにした平易なノベライズで、台詞などはこちらのほうが実際の脚本に近いので脚本としての資料価値も高い本です。
こちらも背景描写や心理描写はかなり丁寧であり、また同じシーンを野﨑版と違う視点で見ることができるため、野﨑版と両方持っていてもどちらも楽しめます。挿絵ページにマップや設定資料などが多いのも良いですね。
⑦スピンオフ:伊瀬ネキセ『HELLO WORLD if—勘解由小路三鈴は世界で最初の失恋をする』 [初級者向け]
スピンオフの中でも、もっとも話題性が高く、数多の考察のベースとなってきた作品がこの『HELLO WORLD if—勘解由小路三鈴は世界で最初の失恋をする』ではないでしょうか。それほどまでにインパクトの強い作品です。
映画本編での登場シーンはわずかにも関わらず、よく見るとなぜか挙動不審で忘れられない印象を観客に残す勘解由小路三鈴(かでのん)。本作はそんな彼女を主人公にすえ、世界観を壊すことなく映画本編の裏に「さらなるどんでん返し」を構築することに成功しています。本作を読んでから映画本編を見ると、世界が全く違って見えてしまうこと請け合いです。なによりかでのんの一途さはほんとうに良い。スピンオフ以前に一つの小説としても完成度が高い作品です。
ただし、よくよく読んでいくと映画本編とは矛盾するように見える部分や本編にはない裏設定などがいくつか登場するため、コアなファンの間では「これは正史なのか?違う世界線なのか?」「この設定は公式なのか?伊勢先生のオリジナルなのか?」とやたらと論議の対象になることもしばしばではあります。公式としては、それも含めて観客の想像に委ねますというスタンスであるようです。自分はそもそも本作が「if」と題されていること、また武井Pの
という発言から、この物語は異なる世界線(上質なパラレルワールド)であるという解釈ですが(言及されている「リリカルなのは」は本家作品とは全く異なる世界線の物語)、正史だと解釈する説にも魅力的なものがとても多く、また「どこまでが公式由来なのか」を考えるのも面白く、その意味でも何度でも楽しめる作品です。
⑧コミカライズ:鈴木マナツ×曽野由大『HELLO WORLD』 [初級者向け]
ヤンジャンで連載されているコミカライズ版「HELLO WORLD」です。
原作にかなり忠実に、しかし独自の心理描写や少し違うプロットも交えながら描いており、単体コミックとしての完成度も高い王道系コミカライズ作品です。自分はまだ数話分までしか読めてないのですが、一行さんが可愛い!これも、同じ世界観を共有するちょっと違う世界線と考えながら読むと、味わい深いですねえ。
雑誌掲載分のほうではようやく宇治川のあたりまで来たようです。いよいよ急展開し佳境に入っていく物語が、コミカライズ版ではどう描かれていくのか?非常に楽しみです。
2020/4/10追記:ついに本誌ではフィナーレ! 2巻は2020/5/19発売です!(なんと犬飼りっぽ先生の「はろー(らぶこめ)わーるど」と同日です!)
⑨ラブコメスピンオフ:犬飼りっぽ『はろー(らぶこめ)わーるど』 [初級者向け]
原作を読んでラブコメ成分、日常成分が足りないとお嘆きのあなたにぴったりの作品、それが「はろー(らぶこめ)わーるど」です。
その名の通り全力でゆるいラブコメに徹している本作。これだけキャラをいじりながら世界観が壊れていないというのはすごいとしか言いようがありません。映画本編のギャグ要素を煮詰めたらこうなったといいましょうか。完全にイタいナオミ、ツッコミするほかない直実、天然すぎる一行さん、暗躍するかでのん…あれ、映画本編と何も変わらないじゃないか!というわけで誰が何と言おうと自分としてはこれも正史の一部です(笑)。
2019年11月6日追記:元々単行本化の予定はなかったとのことですが、応援次第では単行本化の可能性が出てきたそうです!ぜひコメントページから要望を送ってみましょう!
2020/4/10追記:なんと電子書籍化が決定したそうです! 2020/5/19配信開始です(なんと鈴木マナツ先生・曽野由大先生のコミカライズと同日です!)。やってやりました!
⑩スピンオフ短編:野﨑まど『枕草子 六百七段 ことばをしたたむるは』 [中級者向け]
えー、諸説あるかとは思いますがこれ、自分は完全に正統なHELLO WORLDスピンオフだと思っています。アニメージュ2019年10月号に掲載された野﨑まど先生の掌編『枕草子 六百七段 ことばをしたたむるは』。
その根拠はアニメージュ編集部のこのツイート。「『HELLO WORLD』の脚本を担当した野﨑まどさんに、同作の書き下ろしスピンオフ短編ストーリーを依頼」して届いた原稿なのだから、これはHELLO WORLDの正統なスピンオフだというのが自分の解釈です。
もうこれ、自分は完全に野﨑先生にしてやられまして夜中に絶叫しそうになりました。一見HELLO WORLDと全く関係ないように見えて、自分にとっては作品内の意味でもメタな意味でも正真正銘のHELLO WORLDスピンオフでした。セカイの記録。アルタラ。この世界の延長線上にあるSF感。京都。…ここで長々と書くのもなんなのでいずれ稿はあらためたいと思います。人によっては金返せと思ってしまうかもしれない。刺さる人にはブッ刺さる、そういうタイプの作品です。自分は後者でした。
アニメージュ誌10月号の紙媒体は店頭での入手はもう難しいかも知れませんが、電子書籍ならまだまだ買えます。本作品が単行本に収録される可能性は非常に低いと考えていますので、迷ったら買うことをお勧めします。この10月号には普通にHELLO WORLD特集記事もあって、そちらもかなり良いです。
2020/4/10追記:BDスペシャル・エディション封入特典『THE RECORD FRAGMENT』スピンオフ3部作の一つとして収録されました! つまり公式に正統なスピンオフとして認められたということになります。
⑪書き下ろし小説『遥か 遥か先』 [中級者向け]
BDスペシャル・エディションの封入特典、『THE RECORD FRAGMENT』。この36Pの冊子に野﨑まど先生の書き下ろし小説として、『遥か先』(④)、『枕草子六百七段 ことばをしたたむるは』(⑩)とともに収録されたのがこの『遥か 遥か先』です。
『枕草子六百七段』と同じく意表をつく導入部。枕草子で耐性がついたって? いやいや、甘い。しばらく先の見えなかった視界が突然、フッと晴れる瞬間。すべてが一つにつながり、世界が転回する浮遊感。ラストの一文がもたらす鳥肌は、ある意味、非常に野﨑まどらしいといえるかもしれません。
そして、一見バラバラにも見える『遥か先』、『枕草子六百七段』、『遥か 遥か先』を、『THE RECORD FRAGMENT』の一片としてとらえてみてください。そこに通底する一本の≪物語≫に気付いた瞬間初めて立ち現れる、圧倒的に壮大な世界観。これもまた確実に『HELLO WORLD』の世界の一部なんだと思えればもうこんな野暮な説明は必要ありません。この3部作も映画本編も紛れもない「SF」なんだということ、そしてそれは決して夢物語じゃなくこの世界の延長にあって、SFの「F」はフィクションだけどサイエンスの「S」によって確かに今こことつながっているのだ、ということをあらためて感じさせてくれる、そんな心地良い余韻をもたらしてくれる作品です。
⑫特製ブックレット『PERFECT ARCHIVE / Memory of HELLO WORLD』 [中級者向け]
BDスペシャル・エディションの封入特典、特製ブックレットです。
そのボリューム、実になんと100ページ。手にずっしりとくる重さに、インタビューから対談、設定資料集まで、実に読み応えある冊子となっています。制作スタッフへのインタビューも豊富。特にキャラの設定画のバリエーション、モブの設定画は圧巻です。ちょっと惜しむらくは、ビジュアルガイドとかなり内容が被ってしまっていることですが、新しい発見も多く手放せない一冊です。
デザインも素晴らしい。アルタラのデータの表現に使われていたマゼンタとシアンを基調に、中央に配された「京都ボール」。スリーブに入れると、世界が入れ子構造になるという、ニヤリとさせる意匠になっています。
⑬ビジュアルコメンタリー(BD特典ディスク) [中級者向け]
BDスペシャル・エディションの特典ディスクに収録された、伊藤監督、北村匠海さん、浜辺美波さんによるビジュアルコメンタリーです!
これがまた内容が濃い…!もう公開から随分経っているのにこんなに伊藤監督から新情報が出てくるとは。しかもシーンに込められた意図や心情などの解説もあり、よりいっそう映画を楽しめること請け合いです。
そして直実役の北村さん、一行さん役の浜辺さんのコメントも見逃せません。かなりしっかり映画を読み込んでいるのが伝わってくる北村さん、ときどき天然なコメントで場を和ませる浜辺さん。あるシーンに対する、北村さんの「役者人生でこんな共感度が高いセリフはない」というコメントはじーんと来ます。
⑭UDcast音声ガイド・字幕ガイド「HELLO WORLD」 [中級者向け]
最近増えてきたバリアフリー上映。UDcast音声ガイドは視覚障害者の方が映画の解説音声をスマホで聴けるというサービスなのですが、実は健常者にとってもオーディオコメンタリー感覚で大いに楽しめるコンテンツなのです。そしてHELLO WORLDの場合、その解説音声をなんと、釘宮理恵さんがあてているのです!そう、あの金の羽根のヤタガラスがシーンを解説してくれるわけです。なんという贅沢!
あのくぎゅカラスが、作品世界を俯瞰する存在として、淡々とセカイを記述し続ける——作品にメタに寄り添った、すごい趣向だと思いませんか。UDcastの使い方についても、まるでコンバータの使い方を説明するような口調で、丁寧に解説してくれるんです。
さらに、一見気づかないシーンや脚本にあったと思われる設定の解説など、映画をただ見ていただけではわからない要素が言語化され、作品世界の考察がより深まること間違いなしです。実際、自分も新たな発見がいくつもありました。ただし、音声ガイド用字幕を作成するのは映画制作陣ではなくディスクライバーと呼ばれる専門職の方々です(Palabraさんによるものでした)。もちろん制作陣の監修は受けているので大間違いはないはずですが、あくまで「ディスクライバーができるだけ客観的にシーンを記述したもの」であり、制作陣によるシーンの認識と異なることもありえますので、枝葉末節の表現に引きずられすぎる必要はないと思います。
なお、事前にサンプル音声で動作確認を十分に行うことをお勧めします。例えばiPhoneでは、アップル純正イヤホンなどのマイク付イヤホンは使えない、UDcastアプリだけでなくマイクにアクセスするすべてのアプリにおいて一時的にアクセスを許可する必要がある、など結構トリッキーなので、ご注意を。
同様に字幕ガイドは聴覚障害者の方のための日本語字幕サービスですが、これも聞き取りづらかった台詞が文字でわかるなど、大いに理解の助けになります。音声ガイドと違い、スマホでは聴けず専用の眼鏡型端末(直実がかけてたアレみたいなやつ)が必要なのですが、全国のいくつかの映画館ではそれがなくても普通に字幕付上映を行ってくれています。
2020/4/10追記:BD・DVDに収録されました! 専用スマホアプリがなくてもメニューから選択して視聴することができます。
⑮挿入歌:Official髭男dism「イエスタデイ」 [初級者向け]
ついつい主題歌を差し置いてこちらを持ってきてしまいました。髭ダンのイエスタデイです。
劇中のシーンはわずか数十秒、しかも直実が恋のステップを上がっていくシーンなので気付きにくいのですが、フルバージョンの歌詞を見るとこれは完全に先生の曲、ナオミの覚悟を描いた曲なのだと気付くはずです。そして劇中で使われた部分が代弁しているのはナオミでもありまた直実でもあるのだと。
実際、髭ダンはかなり脚本や絵コンテを読み込んで歌詞を練っており、当初は今よりさらに作品に寄った内容だったと言います。そう考えると、ANOTHER WORLDと並んでこの曲はナオミの10年間の思いを読み解くための副読本といえるだろうという意味で、ここで紹介させて頂きました。PVも明らかにナオミのアバターを意識した白のフーディー、豪雨から雨上がりへと、作品世界を思い起こさせる演出が感慨深いですね。
次に紹介するサントラは映画の60秒バージョンしか収録されていませんので、フルバージョンを聞きたい方は注意です。
⑯サウンドトラック:2027Sound「HELLO WORLD」 [初級者向け]
イエスタデイも素晴らしいのですが本作のサントラは正直神がかっていると思います。
OKAMOTO'Sの「新世界」、Nullbarichの「Lost Game」はもちろんのこと、数多くの劇伴の楽曲としてのクオリティの高さ、映像とのシンクロ率といったら。先に絵コンテがあってそれに合わせてサウンドを作り込んでいったそうなのですが、楽曲とシーンのはまり具合が半端ありません。特にA Time For Loveからの流れは鳥肌モノです。
⑰HELLO WORLDの原点:野﨑まど『know』 [初級者向け]
こちらはスピンオフではなく「原点」——2013年に刊行されたこのSF小説『know』がなければ、映画『HELLO WORLD』は生まれませんでした。同じく舞台は未来の京都、作品世界はつながっているわけではなさそうですが(いや、わかりませんね? ひょっとして……!?)、モチーフやテーマに共通部分も多く、『HELLO WORLD』のSF成分が面白いと感じた方ならきっと楽しめるはずです。
ちなみに、『HELLO WORLD』で野﨑まど先生を初めて知った方が次に読むべき著作として、個人的にはこの『know』が一番オススメですが、もし本格的に読んでいきたいなら『[映] アムリタ』シリーズもオススメです。デビュー作の『[映] アムリタ』が好みに合えば、同じくメディアワークス文庫の『舞面真面とお面の女』、『死なない生徒殺人事件 ~識別組子とさまよえる不死~』、『小説家の作り方』、『パーフェクトフレンド』、『2』をできるだけ刊行順に読んでいってみてください。特に『2』は最後に読むことで面白さが最大になります!
⑱高畠聡アニメーション精密背景原図集 [上級者向け]
『HELLO WORLD』の美術設定を担当された高畠さんによる精密背景原画集です。『HELLO WORLD』からは主にアルタラセンターや月面の国際記録機構の超緻密な設定図が! 映画で描かれていないアングルなどもあり、すみずみまで目をこらして眺めてしまいます。それ以外にもたくさんの有名作品の背景原画が掲載されています。
⑲Bamboo背景画集 [上級者向け]
こちらは映画の美術背景画集です。『HELLO WORLD』『ソードアート・オンライン』などをはじめ、有名アニメ作品の背景画を手がけたBambooさんの初画集。『HELLO WORLD』からは、錦高校の教室や図書室の背景画が! 一気に映画のシーンを思い出してしまいます。
⑳謎解き:映画「HELLO WORLD」×本屋巡り謎解きゲーム [上級者向け]
いわゆるリアル謎解きゲームの一種。公式が監修しており、かつストーリーがあるという意味で広義のスピンオフとして掲載しました。
初級編と上級編があり、それぞれ映画に沿った簡単なストーリーがついています。他の謎解きイベントと同様、映画を見なくても解ける作りになっていますので、謎自体は映画とほとんど関係ありません。映画のキーワードがいくつか使われている程度です。
初級編は、謎も瞬殺レベルですがストーリーも非常に短く、若干取って付けたような感じは否めません。
上級編も1時間弱くらいでクリアできますが、本編の古本市のエピソードのあたりをベースにしたストーリーとなっており、一種のスピンオフとして読むことも可能かもしれません。野﨑本(原作)に沿ったような心情描写があるので、原作を元に作成されたのかもしれません。そして先生がなかなか不憫な役どころです(笑)。
特製のクリアファイルやボールペン(種類はランダム)で得られるので、それ狙いで参加しても良いかもしれません。2019年10月末まで。
㉑ビジュアルコメンタリー(イッキ見上映イベント) [上級者向け]
10/15(火)に新宿バルト9で行われた「HELLO WORLD+ANOTHER WORLDイッキ見上映イベント」において、タブレットで楽しめるビジュアルコメンタリーがあったようです。
自分はこのイベントには参加していないので詳細はわかりませんが、ぜひソフト化の際には収録してほしいものです(→追記:このコメンタリーではなく、新たに撮り下ろされた伊藤監督、北村さん、浜辺さんによるオーディオコメンタリーが収録されるようです)。
2020/4/10追記:BDには⑬の撮り下ろしのコメンタリーが収録され、結局この『ANOTHER WORLD』のコメンタリーは幻となってしまいました。
㉒アフレコ台本 [上級者向け]
副読本というかもう本編そのものではあるんですが、アニメイト新宿のHELLO WORLDコーナーにアフレコ(AR)台本が展示されており、一見の価値はあります。伏見稲荷のシーン見開きしか読めませんが、ト書きに作品のエッセンスが詰め込まれています。2037年の世界が「B世界」とか。ちなみにガラスケースの後ろから台本の裏表紙を見るのも忘れずに!(2019年11月4日現在、残念ながら撤去されてしまったようです)(その後、BD発売記念としてプレゼント企画がありました)
㉓聖地巡礼ボイスラリーの録り下ろし音声ガイド [上級者向け]
JR東海の「HELLO WORLD聖地巡礼ボイスラリー」では、堅書直実(CV:北村匠海)の録り下ろし音声ガイドを聴くことができます。これも、公式が監修しているコンテンツということで広義のスピンオフとして掲載しました。
https://souda-kyoto.jp/travelplan/hello-world/
各ラリーポイントで直実による観光案内を聴くことができます。若干、ただ観光案内を読まされている感(北村さんがというより直実が)もあったりしますがw、基本的に直実目線で語られており、時々ハローワールドならではの注目ポイントとか、直実の主観的な感想(○○の景色が好きだとか)も差し込まれていて、より作品世界にひたれること請け合いです。ボイスはラリーポイント周辺でしか聴けないので注意です。
ちなみに、本企画の開始当初は宿泊付のツアーでしか利用できなかったボイスラリーですが、いつの間にか、「京都駅着のEXサービスの半券」があれば参加可能となりました。つまり関西在住の方も、新大阪からの自由席を買えば参加できることになり、ハードルがぐっと下がりました!
㉔英語字幕 [上級者向け]
英語話者向けに作成された英語の字幕。2020年1〜2月、ANA国際線の機内エンターテイメントにて提供されていた『HELLO WORLD』は日本語音声、英語字幕付きのバージョンでした。もしかすると海外上映で使用されていた可能性もありますが定かではありません(台湾は中国語字幕、イタリアは吹き替えでした)。
ありがたいことにこの英語字幕に触れる機会があったのですが、素晴らしいクオリティでした。誤訳や省略はほぼ皆無であり、オリジナル日本語脚本のセリフのニュアンスやちょっとした機微まで細やかに訳出することに成功しています。我々が洋画の字幕と原語の違いに感じるようなもやもやが一切ありません。これならオリジナルの良さを損なわずに英語圏の人達にも安心してこの映画の良さをわかってもらえると確信できます。しかも英語の言い回しが大変格好良くて、めちゃくちゃ英語の勉強になるんです!
一つだけ紹介すると、訳出が大変難しいと思われる掛け合い、「どうです?」「銅だな」は英語字幕では"Sterling?" "Bronze..."でした。Sterlingには純銀以外に真正、一流という意味があるそうです。銅が青銅(Bronze)になってはいますが、その主成分はCuだから成分分析画面上は嘘はついてないことになるし、何よりオリジナルの「どう」と「銅」をかけたギャグのニヤリとさせるニュアンス、直実と先生のテンションと金属のクオリティまでもちゃんとシンクロさせていて、実に秀逸な訳だと思いませんか?
このように、埋もれるにはあまりに惜しい英語字幕なのですが、今のところ国内発売のBD/DVDには収録されないようで、ANAの機内上映が終了した現在では幻のコンテンツとなってしまっています。英語字幕は、恐らく専用の業者が作成しているとはいえ、脚本、UDCastに次ぐ第三の公式コンテンツだと思っているだけに、この状況は非常に残念です。せめて、海外版ソフトパッケージ(あるいは海外配信)には収録してほしいと思っています。
㉕海外版(映画本編、ノベライズ、コミカライズ) [上級者向け]
この作品も少しずつ海外展開がなされるようになってきました! 日本のオンライン書店で購入可能なものも多く、Blu-rayスペシャル・エディションの設定資料集なども翻訳されていてうれしい限りです(さすがにスピンオフの『枕草子』は翻訳不可能だったか…)。
★繁体中文版Blu-ray/DVD(英語字幕あり)
★ドイツ語版Blu-ray/DVD(設定資料集などの豪華特典付)
★イタリア語版Blu-ray/DVD(Amazon.itでの取り扱い)
★ノベライズ英語版
※ノベライズ英語版の電子書籍は、Amazon.comなどだと日本国内からは入手できませんが、KADOKAWAの運営するBOOK☆WALKERでは日本国内から購入可能です!↓
★コミカライズ英語版
★ノベライズ中文版(amazon.cn、amazon.comでの取り扱い。試し読みあり)
★ノベライズ韓国語版
★コミカライズ韓国語版(韓国のオンライン書店で取り扱い)
★コミカライズ台湾版(台湾のオンライン書店で取り扱い)
★HELLO WORLD if台湾版(台湾のオンライン書店で取り扱い)
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考察、感想など色々書いています。よろしければこちらもどうぞ:
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