Butterfly/短編小説
恋に落ちた瞬間の音を、僕は初めて知った。
そして、それと同時に僕は確かな愛を知る事が出来た。
いつも通りの通勤時間。
僕は周りの人より一時間程遅くに出勤する。
通勤ラッシュで、人混みを避ける為、会社側が配慮してくれたから。
電車に揺られ、二駅目の時に僕の肩に遠慮がちに置かれた手があった。
「もし良かったら、ここどうぞ」
柔らかい女性の声。
僕の手を取りながら、座席に誘導してくれた。
僕は彼女の方向へ頭を下げながら「ありがとうございます。助かります」と微笑んだ。
「いいえ