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【アトピー性皮膚炎】デュピクセントとアドドラーザ 最新の薬を比較

いつき博士です。
アレルギー患者教育向けサイトを運営しております。

今回は近年話題となっている
アトピー性皮膚炎の注射薬の試験結果の値を
それぞれ見比べていこうと思います。

1.デュピクセントとアドドラーザとは?

~各薬剤の紹介~
【デュピクセント】
サノフィ株式会社より発売
IL-4/IL13受容体モノクローナル抗体製剤

【アドトラーザ】
レオファーマ株式会社より発売
ヒト抗ヒトIL-13モノクローナル抗体製剤

デュピクセントでは
アトピー性皮膚炎の悪化に影響する
IL-4,IL-13という
サイトカインが細胞につく場所(受容体)に
先にくっついてそれぞれの働きを抑えます。


アドトラーザはIL-13に直接くっついて
IL-13の働きを抑える
といったイメージです。

IL-4がないことにより
何が変わってくるのか。

インタビューフォーム参照

<デュピクセントの記事>

<アドトラーザの記事>

2.条件比較

それぞれの試験条件や対象患者について
見たうえで結果を比較する必要があります。

【試験対象患者の条件】
デュピクセント
・アトピー性皮膚炎歴3年以上
・ステロイド外用剤又は外用カルシニューリン阻害剤で効果不十分
・体表面積に占めるアトピー性皮膚炎病変の割合が10%以上
・IGAスコア3以上、EASIスコア16以上
そう痒NRSスコアの日内最大値の週平均が3点以上

アドトラーザ
・アトピー性皮膚炎歴1年以上
ミディアム以上に相当するステロイド外用剤で効果不十分
・体表面積に占めるアトピー性皮膚炎病変の割合が10%以上
・IGAスコア3以上、EASIスコア16以上
そう痒NRSスコアの日内最大値の週平均が4点以上

違う点としては
アトピー性皮膚炎歴治療薬歴
そう痒NRSスコアの平均値ですね。

治療歴に関してはデュピクセントの方が
多くの薬を経験している方が多そうです。

一方で
痒みはアドトラーザの方が
ひどい方が多そうですね。

【対象患者・試験併用薬・期間】
デュピクセント
・18歳以上の中等症から重症の患者740例
・併用ステロイド外用剤:ミディアム
・52週間投与


アドトラーザ
・18歳以上アトピー性皮膚炎患者380例
・併用薬ステロイド外用剤:ベリーストロング
・32週間投与

対象患者数は倍近くで
併用しているステロイド外用剤は
アドトラーザの方が2段階強いものを
併用しているんですね。

試験結果に影響が出ないのか
気になりますよね。

また、デュピクセントの方が
長い期間見ていきます。

3.試験結果比較

主な評価項目のみ記載して
比較してみましょう。

それぞれ一般的に使用されている
投与量の結果で比較しています。

<評価項目一覧>

16週時点
EASI-75達成率
デュピクセント群 68.9%
アドトラーザ群 56.0%

EASI-90達成率
デュピクセント群 39.6%
アドトラーザ群 32.9%

多少デュピクセントの方が
達成率が高い気もしますね。

16週時点
IGA達成率
デュピクセント群 38.7%
アドトラーザ群 38.9%

医師判断の評価では
同程度のスコアとなっています。

16週時点
そう痒NRSスコア
デュピクセント群 58.8%
アドトラーザ群 45.4%

痒みの改善率はデュピクセントが
上回る値を示しています。

しかし
アドトラーザの方が対象患者さんの
NRSスコア平均が高いのも考慮すると
アドトラーザでも改善率は
高い印象を受けます。

3安全性比較

デュピクセントは52週時点
アドトラーザでは32週時点での
主な有害事象の記載をします。

デュピクセント群 
注射部位反応14.5% アレルギー性結膜炎10.9%
アトピー性皮膚炎46.4% 鼻咽頭炎23.6%
死亡例あり(交通事故)

アドトラーザ群 
注射部位反応7.3% ウイルス性上気道感染24.2% 
結膜炎11.2% 頭痛9.7% アトピー性皮膚炎5.7%
下痢4.5%
死亡例なし

上記には有害事象を示しましたが
投与期間の差や試験デザインの違いから
安全性はあまり比較することができなさそうです。

基本的には同じような副作用
発現していますね。

4.いつき博士の考察

今回は新薬2種類の
有効性と安全性の比較について
記載してきました。

①有効性

今回の試験結果のみ比較すると
一見デュピクセントのほうがいいのでは?
といった意見が多く見受けられるでしょう。

しかし、患者の条件
投与期間、併用薬のランクなど
背景が異なるため一概には比較できなさそうです。

アドトラーザでも結果が得られていることから
IL-13のみの阻害でも改善の結果は得られていることがわかりました。

②安全性
安全性は比較できませんが
下記に示したことを示唆しています。

IL-4もアトピー性皮膚炎に
関与している
ことが知られており
IL-13同様にTh2サイトカインの一種とされています。

どちらも阻害する
デュピクセントではアドトラーザより
Th2サイトカインと
Th1サイトカインのバランスが
崩れてしまうのではないか
といった
示唆も生まれています。

今回の議題には挙げていませんが
薬価はほとんど変わりません。

デュピクセントで効かなかった方への
新たな選択肢としてアドトラーザが
どれほど臨床で活躍するか期待が高まりますね。

《参考文献》
LEO PharmaSKIN アドトラーザ製品情報概要
https://www.leopharmaskin.jp/product/adtralza/dosing-method
サノフィe-MR
https://e-mr.sanofi.co.jp/products/dupixent/