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【アトピー性皮膚炎】新しい注射薬アドトラーザとは?

いつき博士です。
アレルギー患者教育向けサイトを運営しております。

近年、アトピー性皮膚炎治療薬の発売ラッシュが続き
患者さんの治療の選択肢が増えています。

新たに注射薬が発売するとのことで
勉強していこうと思います。

1.アドトラーザってなに?

アドトラーザ(トラロキヌマブ)は
2022年12月
にレオファーマ株式会社が承認を得た
ヒト抗ヒトIL-13モノクローナル抗体製剤です。
2023年5月頃に発売予定です。

既存治療で効果不十分な中等~重症の
アトピー性皮膚炎に対する治療薬で
成人に対して初回600㎎
2回目以降は2週間毎に300㎎
を皮下注射します。

アドトラーザはIL-13が受容体に結合するのを阻害して
アトピー性皮膚炎による炎症や痒みを抑制します。

LEO PharmaSKIN アドトラーザ製品情報概要

実はデュピクセントで阻害している
サイトカインと同じ
なんです。

アトピー性皮膚炎において
Th2型サイトカインが優位
となっていることが知られています。

デュピクセントが阻害する
IL-4,IL-13はともにアトピー性皮膚患者での
Th2サイトカインの増加
に深くかかわっていることがわかっており
病変部だけでなく非病変部でも
発現が多いことが知られています。

また、IL-4では二次リンパで
IL-13では皮膚の末梢での
発現が多いことが知られています。

アドトラーザではIL-13のみ
阻害して炎症を抑えます。

こう聞くと確かに効くのでは?
IL-4はなくても効くの?と疑問が浮かびます。
実際にどうか見ていきましょう。

<デュピクセントについての記事>

2.どのような試験を経て承認されたか

アドトラーザでは以下4つの試験が行われています。

①単独投与試験(ECTRA1,2試験)
② 単独投与2試験からデータのみ併合 (ECZTRA1及び2試験)
③海外ステロイド外用剤併用投与試験 (ECZTRA3試験)
④国内ステロイド外用剤併用試験 (ECZTRA8試験)

実際の治療では
外用剤を併用している例が多いため
③の試験を見ていきましょう。

3.海外第Ⅲ相臨床試験(ECZTRA3試験)

本試験では
ステロイド外用剤(TCS)の併用下で
アドトラーザの有効性と安全性を評価します。


3-1.試験デザイン

対象
ミディアム~ストロングクラス以上の
ステロイド外用剤で効果不十分の
18歳以上アトピー性皮膚炎患者380例

試験デザイン
海外多施設無作為化二重盲検プラセボ対照試験

※アドトラーザ初回600㎎投与 
TCSで使用するステロイド外用剤
モメタゾンフランカルボン酸エステルクリーム(ベリーストロングクラス)

ユニークな点として投与16週後からは
アドトラーザ群では下記投与群に割り付けます。

・効果継続中の2週間投与群
・効果継続中の4週間投与群
・効果発現無しの2週間投与継続群

プラセボ群でも皮膚改善のなかった群では
16週後以降はアドトラーザ/2週の投与を開始します。

主要評価項目:16週時の達成率:IGA0/1及びEASI-75

副次評価項目:そう痒NRSスコア≧4改善
       EASI-90達成率
       32週時のIGA0/1,EASI-75達成率(アドトラーザ2週+TCS群)

<各評価項目について>


2-2.試験結果-1(有効性)

【主要評価】

IGA達成率
アドトラーザ群 38.9%
プラセボ群 26.2%

LEO PharmaSKIN アドトラーザ製品情報概要

EASI-75達成率
アドトラーザ群 56.0%
プラセボ群 35.7%

LEO PharmaSKIN アドトラーザ製品情報概要

【副次評価項目】

・そう痒NRS≧4改善率
  アドトラーザ群 45.4%
    プラセボ群 34.1%

・16週時のEASI-90
  アドトラーザ群 32.9%
  プラセボ群 21.4%

・32週時のIGA達成率 89.6%

・32週時のEASI-75達成率 92.5%

32週時点では
医師評価で約9割は
炎症の改善が認められています。

それぞれのステロイド外用剤使用量
アドトラーザ群 134.9g
プラセボ群 193.5g

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プラセボ群の方がステロイド使用量が
多い結果となっていますね。

国内での試験結果(ECZTRA8試験)
16週時点での評価
・IGA0/1達成率
 アドトラーザ群 32.1%
 プラセボ群 26.4%

・EASI-75達成率
 アドトラーザ群 71.7%
 プラセボ群 56.6%

・そう痒NRS≧4改善率
 アドトラーザ群 64.2%
 プラセボ群 67.9%

国内試験ではプラセボ群の方が
痒みの改善率が高かったんですね。

ステロイド外用薬で痒みが
治まった可能性が高いですね。


2-3.試験結果-2(安全性)

アドトラーザ群 43.3%
注射部位反応6.7% ウイルス性上気道感染19.4%
結膜炎11.1% 上気道感染7.5% 頭痛8.7%

プラセボ群 27.0%
ウイルス性上気道感染11.1% 結膜炎3.2%

やはり免疫系を抑えるため
感染症が起こる可能性もありますね。

そして、デュピクセント同様
結膜炎も起こりそうですね。

4.いつき博士の考察

今回は主に海外で承認されたデータをもとに
アドトラーザについて勉強していきました。

試験結果からはEASI,IGA値の改善
対象のステロイド使用量の減少から
見た目における湿疹の改善度は
高い可能性
がありますね。

痒みについては国内試験でも
プラセボ群との有意差は
得られていないことから
個人差が顕著に出るのでは?
とも考えてしまいます。

メーカーへ問い合わせの際には
デュピクセントとの明確な違いはわからない。
とのことでした。

IL-4も阻害するデュピクセントと比較して
劣っているのでは?とも感じてしまいますよね。

副作用で結膜炎が発現する理由
結膜炎が起こるメカニズムは
明確にはわからないようです。

以下3点で起こりやすいのではと
示唆しております。

・IL-4,IL-13の産生に関わるTh2細胞よりTh1優位になり、Th細胞バランスが  変化している。
・アトピー性皮膚炎患者ではもともと結膜炎を生じやすい
・杯細胞の減少により結膜での粘液分泌が減少する

初回に4注射
2回目以降は2注射と
患者負担がかなり大きいです。

LEO PharmaSKIN アドトラーザ製品情報概要

薬価は150mg/1本分で29,295円です。

患者負担額は3割の場合
初回:35,154円
2回目以降: 17,577円

薬の値段はデュピクセントと
ほとんど一緒になります。

新しい選択肢としては
今後の評価が気になりますよね。

製薬会社的にもMRが少ないので
この薬はどのくらい広まるのかも
今後の気になるところですね。

《参考文献》
LEO PharmaSKIN アドトラーザ製品情報概要
https://www.leopharmaskin.jp/product/adtralza/dosing-method