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【アトピー性皮膚炎】新薬のレブリキズマブは他の薬と何が違うの?

いつき博士です。
アレルギー患者教育向けサイトを運営しております。

年々アトピー性皮膚炎の治療薬が増えて
治療の幅が増えてきていますね。

今回はアトピー性皮膚炎の新薬
について勉強していきましょう。

1.レブリキズマブとIL-13の関係

1-1.レブリキズマブとは

レブリキズマブは
イーライリリー株式会社で治験を実施している
デュピルマブと同様の抗体医薬品です。

違うpointとして
可溶性IL-13に選択的に結合して
IL-13Rα1/IL-4Rαヘテロ二量体複合体を形成し
その後のシグナル伝達を阻害して
アトピー性皮膚炎の炎症反応を抑えます

この際、IL-4のシグナル伝達には干渉せず
IL-13Rα2への結合阻害も行わないとされています。

結果、全身への移行率も高く
長時間体内で作用を示す
薬と報告されています。

1-2.IL-13とは

IL-13はアトピー性皮膚炎の
炎症メカニズムにおける
主要なサイトカインとされ
IL-13の発現量は疾患の重症度と相関する
と報告されています。

IL-13はIL-13Rα1に結合した後
IL-4Rαとヘテロ二量体となり
受容体複合体を形成し、シグナル伝達を行います。

このシグナル伝達が
アトピー性皮膚炎の悪化に
影響を与えている
と考えられています。

IL-13の受容体は、
IL-4Rαと複合体を形成して
シグナル伝達を促進するIL-13Rα1
シグナル伝達を行わないIL-13Rα2(デコイ受容体)

の2種類が存在します。

IL-13Rα2はIL-13を細胞内へ取り込み
リソソームまで運ぶことで
IL-13の量を調整するとも考えられています。


上記を踏まえたうえで
試験内容を見ていきましょう。

実際にアトピー性皮膚炎に
どのくらいの影響を与えているのか
気になりますね。

2.ADvocate試験

2-1.ADvocate試験とは

本試験では中等から重症の
アトピー性皮膚炎患者に対して
レブリキズマブの
有効性安全性を調査しています。

ADvocate試験は
全く同じ試験を2試験行っています。

対象患者や試験結果に
ほとんど差異はなかったため
1試験のみの結果を示します。

【対象患者数】
対象患者数 424人 
レブリキズマブ群283人 プラセボ群141人
参加中止14.9%:7.1%

中止理由:プロトコル違反、患者による撤退、新型コロナウイルス感染症パンデミック関連

十分な対象患者数で試験を実施しており
2試験行われているのも
エビデンスを高めている条件ですね。

2-2試験デザイン

【試験デザイン】
無作為化二重盲検プラセボ対照第Ⅲ相試験

今回も信ぴょう性の高い試験デザインですね。

【対象患者】
・成人及び青年(12 歳~18 歳未満)
・体重40kg以上
・EASI:16点、IGA:少なくとも3点
・少なくとも10%の体表面積への皮疹
・既存治療で効果不十分な1年以上の慢性的なアトピー性皮膚炎
※デュピクセントやアドトラーザの既往歴がある方は除外されています

今回も対象患者の条件が
しっかり設定されていますね。

承認されてもデュピクセント同様
症状やEASIの値によって処方が
難しい可能性
もでてきそうですね。

【試験期間】
16週(導入期間)

レブリキズマブ 250 mg群:プラセボ群 2:1
※ベースライン時と 2週目に負荷用量500mgを投与

16週以降(維持期間:36週間)
・効果反応の良い患者だけ再ランダム
レブリキズマブ2週毎:レブリキズマブ4週毎:プラセボ群(レブリキズマブ中止)

・効果反応悪い患者
2週毎にレブリキズマブを投与(オープンラベル)

16週目以降は4グループに分けて
引き続き有効性と安全性を確認しています。

アトピー性皮膚炎が重症化した場合に
レスキュー薬として
mediumクラスのステロイドを
使用することを許可しています。

3.試験結果

3-1.有効性

有効性には
下記評価項目で判断しています。

【評価項目】
主要評価:16週目のIGA≦1達成率(少なくとも2点減少)
副次評価:16週目EASI-75、EASI-90達成率
     4週目そう痒NRSスコア≧4改善

<評価項目の解説についてはコチラ>

今回は
IGA、EASI-75/90、NRSの3つのスコアで
レブリキシマブを評価しています。

【IGA達成率】
レブリキズマブ群:43.1%
プラセボ群:12.7%

医師の所見では無治療に比べて
3倍以上の皮膚症状の改善が認められています。

【EASI-75】
レブリキズマブ群:58.5%
プラセボ群:16.2%

【EASI-90】
レブリキズマブ群:38.3%
プラセボ群:9.0%

16週間使用することで3人に1人
湿疹面積の9割程の減少がみられそうですね。

【NRS】
レブリキズマブ群:21.5%
プラセボ群:2.3%

5人に1人くらいの方で
痒みの大幅な改善が見られたんですね。

レブリキズマブ群と比較したレスキュー薬使用率
プラセボ群で3倍使用

湿疹面積の減少や痒みの減少の結果を踏まえると
プラセボ群より使用頻度が減るの妥当な結果でしょう。

3-2.安全性

試験結果から
安全性の評価を見ていきましょう。

レブリキズマブ群 45.7%
注射部位反応1.1% 結膜炎7.4%
アトピー性皮膚炎悪化6.0% ヘルペス感染3.2%

プラセボ群 51.8%
結膜炎2.8% アトピー性皮膚炎悪化21.3%
ヘルペス感染4.3%

もう一方のADvocate試験では
非メラノーマ性皮膚がんが
レブリキズマブ群0.4%、プラセボ群1.4%と
出現する結果も報告されていました。

導入期間中(16週間)は
ほとんど軽度または中等度
重篤な有害事象は報告されていませんでした。

長期間使用する際の
リスクベネフィットを考慮することが大切そうです。

免疫抑制による有害事象
IL-13を阻害することによる結膜炎の発症は
デュピクセントやアドトラーザの試験同様ですね。

結膜炎については様々な理論提唱がありますが
メカニズムは不明と言われています。

結膜炎の原因理由と考えられる内容は
下記ブログの考察で記載しています。

<デュピクセントの記事>

5.いつき博士の考察

今回はレブリキズマブの
有効性と安全性について勉強しました。

プラセボに比べ
有効性があるということで
一定の効果は示すことがわかりました。

また、デュピクセント同様に
結膜炎も少し気になりますね。

他には他剤と比較して
どうなのかが気になります。

①アドトラーザとの違い

同じようにIL-13に結合して
アトピー性皮膚炎を抑える
アドトラーザと何が違うのか。

アドトラーザはIL-13の受容体への
結合自体を抑制する反面
レブリキズマブでは阻害しない
とされています。

そのため、IL-13が
IL-13Rα2に結合することにより
細胞内へ取り込まれて
リソソームまで運ばれると考えられます。

その結果、IL-13の働きを
より抑えるのではないか
と示唆しています。

②デュピクセントとの違い

デュピクセントとは違いIL-4を阻害しないことで
副作用に何か違いが出るかとも思えそうですよね。

比較した際に特に副作用の種類や
発現頻度に大きな違いはなさそうです。

デュピクセントでは
結膜炎の発現頻度は10%を超えているため
多少レブリキズマブで頻度は低くも見えますが
背景も異なるため断定はできませんね。

まだ発売などはわかりませんが
アトピー性皮膚炎の新薬として
今後の展開が気になりますね。

《参考文献》
N Engl J Med 2023;388:1080-91.
DOI: 10.1056/NeJMoa2206714