純喫茶②「カフェ激戦区」蔵前でカフェに行かない理由【シャレード珈琲】
東京都台東区にある下町・蔵前。Googleで「蔵前」と検索すると、上位に出てくるのは「蔵前カフェ」「蔵前カヌレ」などのおしゃれワード。
「東京のブルックリン」とも呼ばれ、ここ数年でカフェだけでなく、雑貨店や革小物屋さん、うつわ屋さんなど、あらゆる角度から「おしゃれ」を詰め込んだ街になりました。
私も散歩でよく行きます。しかし、私が行くのはいつでもどこでも純喫茶。浅草〜蔵前〜浅草橋間を歩きまくり、やっと見つけた純喫茶は、蔵前駅から徒歩1分の所にあったのです…。
おしゃれな街に隠れるサラリーマンのオアシス
ビルの1階にあるその純喫茶は、入口が奥まっており、薄暗い雰囲気に少し圧倒されます。が、私は入る。
入ってみて驚き。お客さんはサラリーマンのみ。煙草のけむりがもくもくで、久しぶりに喫煙可の純喫茶に出会いました。
「いらっしゃ〜い!」
明るい声とともに、これまた明るいママが登場。店主が親切な人だと、心からホッとします。「ここ座って〜」と通された席は、色褪せたテーブルに年季の入った壁紙、渋い店内を見渡せる、居心地の良い場所でした。
早速、ケーキセットを注文。
実はここでハプニングがありました。チーズケーキありますか?と訊くと、「ごめんね、さっき売り切れちゃったのよ〜」とのこと。
ケーキはチーズケーキかアップルパイのみ。私はアップルパイが苦手なので、じゃあコーヒーだけで、とお願いしました。すると、隣にいたサラリーマンのおじさんが
「ぼくチーズケーキ頼んだけど、まだ来てないからあげるよ〜」
とのこと。え…?優し、え…?ほんま?ええの…?
ママも「いいの?じゃあ常連さんだから、甘えちゃおっかな〜!チーズケーキあるけどどうする?」と。ここまで親切にしてもらったら、チーズケーキ、いただくしかない!
「じゃあ、チーズケーキで…本当すみません、ありがとうございます」とおじさんにお礼を言いました。すると、おじさんは
「いいよ〜ん」
まじか。やっさし…えぇ…優し…?ええの…?優しいおじさんのおかげで、いただいたチーズケーキはとても美味しかったです。ありがとう、おじさん。ありがとう、ママ。
おしゃれな街に取り残された昭和
シャレードがある蔵前駅周辺は、おしゃれカフェ激戦区。向かいにはチーズケーキで有名な「en」があり、裏手にはサンフランシスコ発祥の「ダンデライオン・チョコレート」日本1号店があります。
カフェを形容する言葉として、よく聞くのは「ほっこり」「アットホーム」「スタイリッシュ」など、可愛さや洗練されたイメージを感じさせるものが多いと思います。シャレードはもしかすると、この形容詞と正反対なのかもしれません。
しかし、私は言いたい。居心地の良さは、「おしゃれ」だけのものではないと。昭和に残る優しさやあたたかさ、味わい深さを求めて、私は純喫茶を探し続けます。
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