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物語に救われながらでないと生きていけないから

心の浮き沈みが不安定で、澱んだ生活を送っていた。
何をするにつけてもしんどくて苦しさがついて回る。
最近はこんな気持ちになっていなかったのにな。

連休中も部屋から動けず、楽しいことを思い出そうとしてもダメだった。
でも物語に触れてなんとか気持ちが上向き始めた。
その良さを咀嚼するためにここに感想をまとめる。


秘密の花園

優しさや愛を知らないわがままな娘・メアリが、イギリスの伯父に引き取られてそこのお屋敷で暮らし始める。そのお屋敷に隠されていた庭園の鍵を見つけ、秘密の庭園を作ろうとする中で彼女に明るい変化が訪れていく。

図書館でタイトルに一目惚れして借りてきた。
登場人物に「赤毛のアン」や「暁のヨナ」の素敵さに近いものを感じた。

メアリは、まるで「世界にはこんなに素敵なものにあふれているんだわ」と言わんばかりの、見るものすべてに熱量を注ぐ魅力的なまなざしを持っていた。
他にも、動物たちと話せるディコンという男の子は、どんな相手にも耳を傾け、相手の気持ちを分かった上で行動する。
鳥やキツネだけでなく街の人々からも好かれる彼は、まるで自然や他人と完全に調和して生きているようで憧れた。

この話の一番の魅力はタイトルである「秘密の花園」だ。
伯父によって鍵をかけられ、その鍵もどこかに埋められて以来誰も入ることのなかったバラ園にメアリが足を踏み入れることで、物語は動き出す。
そのバラ園の描写もさることながら、子供たちが秘密で自分たちだけの理想の花園を作ろうと画策する場面がいとおしくてたまらなかった。

人と関わりの中では、時に満たされるし時には傷つけられる。
たまに傷ついてしまったときに、「自分にしか知らない世界があって、そこに行けばすべてが救われる」という秘密があったらどんなにいいだろうか。
そんな風に、人を魅力的にさせる秘密を持っている気分になった。


魔法使いの嫁

序盤の設定は知っていて、無気力な自分が智世に感情移入できる気がした。
こちらも「秘密の花園」と同じくイギリスが舞台となっており、異国情緒が旅へのモチベーションを刺激した。

一番感情が不安定になっているときに1話を見て、無彩色な世界がエリアスの優しさに触れて色づいていく感じは見ているうちに自然と涙を浮かべてしまった。

「希望が見えない主人公が、かかわりに触れて希望を見出していく」というテーマは普遍的なもので、今の自分の様にそのような物語を求める人は常にいる。
この作品はそういったテーマを、魔法や魔術の存在する別世界において描いていたため、現実を忘れて没入することができた。
心温まる、深みのある作品で続きを楽しみにしばらく生きていけそうな気がする。


YOUR/MY Love Letter

「名もなき誰かを愛そうとする話」という部分が気になって読み始めた。

涙がこぼれてどうしようもなかった。
偶然にも自分は今19歳で、深夜のコンビニ勤務だったので、最初は彼への共感から物語へ引きずり込まれていった。

仕事に打ち込むOL、
余裕も刺激もない生活を送る大学生、
教師らしさになやむ教師、
子どもが大人になって寂しさを感じる親、
世の中にありふれてはいても重大な悩みをそれぞれが抱えていて、でも決して光を浴びることのない名もなき人々と、そういう人たちに寄り添おうとするアルストロメリアの3人のつながりを描いた話だった。

どこに心を揺さぶられたのかといえば、やはりお便りを読むやりとりから登場人物の名前についての話が始まる場面である。
大切な相手の幸せを願っていても、想いは何度も伝えようとしなければ伝わらない。
私たちも、いつも応援してくれるあなたたちのことが大切だけど、そう想っているだけではきっと届かないから、あなたの「名前」を教えてほしい。

そう切実に訴える3人も、毎日を必死に生きている名もなき人々も、みんなの姿に訳もわからず高ぶってしまって、気づいたら泣いていた。
彼らへの共感も大きかったが、それと同じぐらいに自分の日常とのリンクも強かったことが原因だったと思う。
自分も彼らの一人で、自分にも愛そうとしてくれる人がいるんだということに気づいて泣いた気がする。


普段の暮らしでは、物語を日常をよりよくするための、ある意味手段として存在している。
けれど本当につらいときはそこが帰る場所になってくれて、目的地となる。
結局のところ自分はフィクションに救われて生き続けていくのだ。
そしてフィクションから受け取った価値に恥じないだけの自分を実現していくのだ。
それは依存ではなく、相互に価値を与え合う関係だと思う。

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