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【連載・ロマンス・和風ファンタジー小説(オマージュ)挿絵あり】あなただけを見つめている……。 第二部 次代の姫 第十三話 ウェディングマーチ

前話

「お母さん素敵」
 花嫁控え室で步夢がうっとりと母、沙夜のドレスを見る。
「明日は、あなたの番ですよ」
「そうだけど、エリスのデザインってほんとうに人柄を表すのね。ドレス選び失敗したかしら」
 昨日、最終試着したドレスを思い出して考えるが、お転婆娘のガーデンウェディングとでもいいたい。
 不安そうな步夢に、エリスが一人の女性を連れてきてがしっと肩を組む。
「だーいじょうぶ。メイクでごまかしてあげる。でも、あのドレス、かなり步夢向きよ」
「でも、ロングトレーンじゃないー」
「そりゃそうでしょ。でなかったらプリンス型になるじゃないの」
「うう」
 エリスと漫才をしているとまわりからくすくすと笑い声が聞こえてくる。そして、そのエリスの隣の女性も控えめだが笑う。步夢はその女性を見てびっくりする。そして肩をがしっとつかむ。
「雪乃ちゃん!」
「今は、パルヴァール王女エヴァ・ロサリアよ。料理とお化粧はまかせて。それにしても頑張ったのね。ダイエット。綺麗だわ」
 少し、今世の雪乃は積極的なようだ。それが新鮮で嬉しい步夢である。
「エヴァって呼んでいい?」
「ええ。もちろん。お母さんメイクを担当したのは私の母なの。でもゆうのメイクは譲りたくなくて」
「今は步夢。当騎からむーってよばれてるわ。みんなはなぜかむーって呼ばないの。どうしてかしらね」
「むーと呼べるのは当騎だけなんですのよ。步夢しか許されてないんですの」
「でも私たち親友組はどうでもよぶわよねー」
 エリスが言うと步夢も大きくうなずく。
「うん。もちろん。エリス-。好きよー。エヴァもー」
 親友三人の絆は深い。それでもいつか別れる。彼の地に連れては行けない。少ししんみりした步夢は振り切るように優衣が抱っこしている姫夏を抱く。
「うちの長女なの。預かっただけなんだけどね。お母さんに託してもよかったけれど、それもちょっとこまる事態になるから私たちの娘に。託されたのは私と当騎だから。ねー。ひめちゃん。ひめちゃんなんさいー?」
 姫夏は指をいっぽんたててごにょごにょいっている。どうやら「いっちゃい」と言ってるらしい。
「まぁ。可愛い。お母さんに似なくてよかったわねー」
「ちょっと。エヴァ。口がお達者のようね」
 と、ドアがノックされた。
「お前らー、同窓会してないでとっととでてこい。あ。お母さんには一の長老様に手を取ってもらって出てください」
 ほぼ步夢の結婚式に着いてきたのだが、立場的にはまさに当主の結婚式に花嫁を引き渡す役にはうってつけだった。おかげで、したかった步夢の介添えは緋影に決まっていた。
「あーちゃんや。あーちゃんもダメかのう」
「ダメ。おじいちゃん散々したじゃないの。お父さんでしかだーめ」
「步夢」
 緋影はうるうるである。
「って、なんで緋影、お父さんまでいるのよ。会うのはお堂で! さぁ。おじいちゃん、お母さんをよろしくね。このわがまま男子を連れ出すから。優衣行くわよ」
「はい!」
 そうして花嫁の控え室には一の長老と沙夜の二人きりになった。
「幾分か、步夢は無理して居るみたいですね」
 目を伏せがちにして沙夜は言う。
「最後の母の式じゃからな」
「帰ってこないのでしょうか」
「たまには帰ってくるじゃろ。心配事がなくなれば里帰りもするじゃろうし。娘を信じる事じゃ」
「はい。では、参りましょうか」
「そうじゃな」
 二人は控え室を出たのだった。

沙夜花嫁姿


「素敵な式だったわねー」
 今も感涙しそうな步夢である。式が終わった途端、当騎の胸で泣きじゃくった步夢である。感極まってだろうが、それにしても泣きすぎだ。步夢は何か考えていることがあるらしい。恐らく智也の事だ。だが、本人は何かがあるけれど、表現できない、といった具合だ。
「姉様、びっくりするからあのように派手にお泣きにならないでください。ひめちゃんが大きくなったとでも思いましたわ」
「って? ひめちゃん、一歳よね?」
「あい」
「ほら。大きくないじゃないの」
「お前の泣き方が異様だったの。今生の別れみたいに泣いてたぞ。お母さんも心配してたじゃないか」
「步夢!」
 カクテルドレスを着た沙夜が駆け込んできた。緋影はほったらかしだ。当騎からあっという間に奪って抱きしめる。
「おがあさん。ぐるじい」
「あ。ごめんなさい。でもいつも泣かない步夢があんなに泣くなんて。母はびっくりしましたよ」
「当騎と出会って感情が豊かになったのよ。あと、ひめちゃんね。いつも大事な事を教えてくれるわ」
「それでも何か悩み事があるの?」
「その辺が私にもわからないの。何かあるんだけど、姿を見せてくれないのよ」
 日史はそれは智也の影ではないかと推察していた。一の長老とともにパルヴァールへ来た日史だった。加奈子も一緒だ。まだ、一年も経っていない。あっという間にいろんな出来事が起きすぎて整理が付いていないのではと思ってみていた。それとなく当騎に言っておくか。ふむ、と顎に手をやって考える日史である。このハレの日に涙は不要だ。明日は步夢の式だ。かき混ぜたくはない。そっと心配事を日史は隠した。ハレの日は明日も続く、そこで解決できればいいのだが。本人の中で整理が付かないまま式をさせるのはどうか。当騎と目が合った。軽くうなずく。当騎には目に見えたようだ。
 頼んだよ。
 日史はそうアイコンタクトを送った。


あとがき
まだ、まだ和風衣装が登場しない。恐らく、この第二部、でないんじゃないの? 第二部は書き終わったのですが、その次に彼の地に行くのでこの二部はまだまだファンタジーめいてもいないし、和風なのは総本家の家だけみたいな。ししょーは異国の僧侶だし。冬玄達も本名あっても昔の名前で呼ばれてるという。みんなこの三人のおじさんにはつらく当るのでした。過去が過去故にね。冬玄はとっととあだ名があるのでこれで弄ります。ひめちゃんがとっとと呼ぶのできっと。みんなとっとと呼んで嫌がられます。
緋影はどこで生活してたのかしら。光という名前を設定したけれどどこででるか。冬玄と白影は異国の人だし。異国の人はほぼ、こっちこないんで。ししょーがわがままいいそうです。ほんとは二軍落ちした坂本選手の誠志郎を使いたかったのですが、残るメンバーには使えず、光と取り替えっこか? てな感じです。今日は保険のことで遠出したのでもうゆっくりします。三行日記でも書いて終わることにします。共同マガジンメンバー募集中~。

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