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【連載・ロマンス・和風ファンタジー小説(オマージュ)】あなただけ見つめている……。 第二部 次代の姫 第十二話 後編・残る四神の二人、白影と冬玄の奥さん捜し

前話

「ししょーの料理はやっぱりおいしいわー。ひめちゃん。おいしいでしょう」
 幼児椅子に座って食べている姫夏がうなずく。隣に座っている当騎も優しい目をして見ている。
「って、母親のプライドはないのか?」
「この子には人よりおいしいものと嬉しいことや美しいものを見せておきたいのよ」
 この世の限りのような発言に冬玄は言う。
「ほんとに行くのか?」
「ええ。三神になるわね。母を守っていって」
 步夢の目尻には涙がにじんでいる。
「まま?」
 姫夏が見つめる。
「大丈夫。パパがママを笑顔にしてくるな。ちょっと縁側へ行くぞ」
「えー、ご飯」
「はいはい。持って行ってやるよ」
 強引に当騎が步夢をつれていく。残されたししょーはデザートがあると言って台所に引っ込む。冬玄と姫夏の二人きりになった。
「……」
「……」
 冬玄と姫夏は見つめ合うことになる。
「あー……」
「いぎりちたいち」
「イギリスのなんだ?」
「たいち……」
 姫夏のなぞなぞに頭を悩ます冬玄であるが、はっとひらめいた。
「イギリス大使館のことか?」
「あい!」
「ぴぎ!」
 意外な声に、冬玄が下を見ると足にお手をしている千輝がいた。
「我が国のイギリス大使館か? 日本なのか?」
「ここ」
「そうなのか。では行ってくる。大僧正! 姫夏の子守してくれ!」
 過去に夏音という步夢の前世の子と仲がよかった冬玄だ。幼子の対応はわきまえているが高鳴る心臓をとめられないので、行くことにした冬玄である。なので保護者がいちゃいちゃしてるなら、ししょーに任せるしかない。
「はいはい。姫夏様でも食べられるお菓子ですよー。フィリップ殿下はいつでもどうぞ」
「恩に着る」
 ぴゅーっという擬音がつけたくなるほどの速さで冬玄はパルヴァールのイギリス大使館へ向かった。
 が。
 姫夏が示す人間でないとわからないのではないか、と知恵を巡らせた冬玄が戻ってきて姫夏を抱いてでていく。千輝が追いかける。声だけが後から聞こえてきた。
「姫夏を借りるぞ。保護者は適当にあしらえ」
 冬玄の優しさは子供だけにあるようなものだ。保護者は放り出された。帰ってきて、追いかけてくるかもしれないが、どうでもいい。とにかく、妻だ。妻。
 冬玄はあっという間に大使館へと向かった。

「ひめちゃーん。ママとパパもどったわよー。ん? ししょー。ひめちゃんベビールーム?」
「いいえ。冬玄殿が姫夏様を連れて奥様捜しに出られました。何やらヒントを姫夏様が差し上げたようで」
「ひめちゃん……。冬玄なら間違いないわね。ここで待ってましょうか。姫夏と奥さん連れてやってくるわ」
「いーのか。誘拐だぞ。誘拐」
「大丈夫。冬玄は子供には甘いの。のんの時がそうだったわ。のんだけでなくひめちゃんにも心を開いたのよ。冬玄は。そういう存在が一人はいないと」
「じゃ。いちゃついておこう。はい。步夢はここ」
「やだ。それ馬鹿カップルのやつじゃないの」
 步夢を軽々と抱き上げると膝の上に載せる当騎である。顔が近い。步夢は赤面してる。
「かわいい。むー」
 その顔に軽いキスを何回もする当騎である。ししょーはもう目に入ってないし、ししょーは陛下のご機嫌さえ麗しいなら文句もない。いくらでもいちゃついてくれ、である。
 そういうことで冬玄に馬鹿扱いされるまでいちゃいちゃとしていた両親である。

「馬鹿者か。お前らは。それでは公開睦み合いと一緒だ」
「そこまで行ってないわよ。親が愛情を交わしてるなら子供も幸せよ。で、ひめちゃん返して」
 当騎の椅子から降りて両手を差し出す步夢である。
「ほれ。助かった。姫夏」
「おじちゃん。ばいばい」
 いきなりのばいばいは冬玄もショックらしく、顔がこわばる。
「ひめちゃん。こういうときは。またね、っていうのよ。もう会わないおじちゃんじゃないでしょ?」
「あい。またね」
 手を振ってるあたりは一緒なのだが、一安心な冬玄である。
「で、連れているその女性が?」
「ああ。イギリス大使館で働く女性だ。ティアナ・グレーヴィアだ。ティアナ。一応は古の女王の步夢だ」
「一応は余計でしょ。古の女王だったのは大昔だから気にしないで。步夢とかむーって呼んで。明日が母の結婚式なの。結婚式ラッシュで一緒にやっちゃう?」
「へ、陛下。結婚式なんてまだ……」
 一瞬見つめ合った二人だが、赤面して顔をそらす。
「うぶねー。じゃ、あとで婚約の印を与えるわ。冬玄は婚約指輪用意してるわね」
「母から譲り受けたものがある。さっき。それをはめた」
「あら。手の早いこと。人の事を言ってられないわよ」
「うるさい。姫夏、本当に助かった。また、話し相手になってくれ」
「あい!」
「ぴぎ!」
「ちーはいらん」
「ぴぎぴぎ!!」
「なんと。着いてこさせないなら姫夏はわたさないと?」
「ぴぎ!」
「わかった。ちーの同伴だけは許す」
 犬と会話する冬玄をあっけにみている步夢と当騎である。
「冬玄、あなた動物と言葉交わせるの?」
「朝飯前だ」
「へぇ~~~~~~」
 そこにいるものが全員返事する。最初の食事の時より声が大きい。冬玄は周りを見回す。そして、固まる。いつの間にか緋影達が居た。それでいちゃついていた步夢達は何者だ?
「ただの馬鹿かっぷる。あなたもそのうちそうなるわよ。ねぇ、緋影」
 緋影は顔が真っ赤だ。
「母はそこまでの愛情表現を知りません。步夢に弟子入りしないと行けませんね」
「しなくてよい。しなくて」
 緋影が焦る。
「残るは白影だけど、それはお母さんと私の式の後ね。その後、エリスにウェディングドレスをデザインしてもらうといいわ」
「エリス?」
「あ。表名はRinだっけ」
「え」
 ティアナが驚いている。そんなに有名なのかしら。
「有名なの。あたくし」
「エリス! 心の声読めるの?」
「あんたみたいな事出来るわけないでしょ。顔に出てたの。失礼ね。これでもパリコレ出てるのよ」
「へぇ。パリコレまだあるんだ」
「そういえばそうね」
「と。脱線してるぞ。むーは最終試着と、お母さんはリハーサルだろ。早くいかなきゃ、場所が閉まるぞ」
「大丈夫。いつもの秘密のお堂だから」
「それでも、緊張感なさ過ぎって、俺がさせたのか」
 甘やかしすぎた己を後悔する当騎である。
「じゃ、エリスいこか。お母さんと緋影もいくわよ。あ。お父さんか」
「緋影でいい」
 照れて緋影が言う。
「いや、やっぱりお父さんだもの。家族は大事にしたいの。お父さんいこ!」
「むー!」
 緋影と腕を組んで行こうとする步夢の後ろを当騎が姫夏をだっこしたままおいかける。
「母様いきますわよ。暖。あーちゃんだっこして」
 己の聖獣の子をつれて優衣も行く。
 そうしてお留守番役が冬玄とティアナとししょーになる。式次第はししょーが勧めるが、そのリハーサルには弟子がやる。それぐらい偉いのだ。
「あー。ティを入れてきますから。お見合いでもどうぞ」
「お見合い……」
 照れる新たな恋人達である。残る白影の居場所を知っているのだが、話しそびれた。またここに来て話すのかと思うとげっそりする。姫夏がいるだけで多少の慰めになるが。
 今は妻となる女性とししょー、いや、大僧正とゆったりとしたお茶時間を持つのが有益のようだ。冬玄はティアナに椅子をひいて座るようにいい、自分も別の椅子に座った。
 今は静かだが、そのうちうるさくなる。それまでこの静けさを味わう冬玄だった。


あとがき
冬玄とか結構和風ファンタジーの要素を持った過去とかあるんですが、ここでは省略されてます。これ以上長く説明できないので。でも、どこかで入れた方がいいですかね。でもどこかで天青の話ででた気が。四神という護衛役が過去の亜須伽の一族にいたんですよ。長を守る役目を負った。そのごちゃごちゃしたはなしはシーズン1の二次なので出せないんです。二次を取り除くと現状の話ばかりになってしまって。この第二部は時々和風時々異国時々日本でのあかちゃん話となってます。期待しないでね。と、あまりの睡さに今日の更新はこれだけ。おやすみなさい。ここまで読んでくださってありがとうございました。

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