【新連載・ロマンス・和風ファンタジー小説】あなただけを見つめている……。 第一部 クロスロード 第十五話 集まった仲間
前話
「ちーちゃん。ししょーのホームパーティーに行く~?」
ゲージを開けて千輝に手を出す。千輝はぴぎぴぎ言って寝ていたが飛び起きる。あっという間に步夢にまとわりつく。
「ちーちゃん。ママこけて踏んづけるわよ。はい。お座り!」
指を一本だして命令するとなんとか座る。が、その1秒後からまた立って抱っこを迫る。
「もー。ちーちゃん、おとなしくしないとパパに怒られるよ」
「ぴぎ?」
誰がパパ? という千輝に步夢は爆笑する。
「当騎、パパ認定されてないよ? どーする?」
「むーがママなら俺がパパ。だな。ちー」
「ぴぎ?」
「おい。わざととぼけてるな? パ――パなの。俺が」
「ぴぎー」
そう言って鳴くと步夢の腕から飛び出て当昨日での中に収まる。
「調子いいな。いいか。知らんふりはだめだぞ。いつも正直であること。な。ママも」
步夢はどきり、とする。あの毎夜枕を濡らしていた件からは逃れられないようだ。ごまかそうと思っていたが。
「さぁ。ししょーはちーに何を用意してるかなぁ? 楽しみだなぁ」
親馬鹿全開である。子犬はおやつは食べられないと言ってたのに。
「さぁ。パパ行くわよ」
步夢がひっぱる。
「今夜、ドアの鍵あけとけよ」
「わーったわよ」
「ほんとにごろにゃんなんてできるんかねぇ。ちー」
「ぴぎぴぎ」
「ちーはできるって」
「ちーはワンコだ。当然だ」
夫婦漫才とは行かずとものろけとも言える痴話げんかをしながらお茶会の元へ戻る。そこに、二人の見知らぬ少年が立っていた。ちょうど、当騎と同じぐらいの年の頃合いだ。步夢は魂の色で一度に見抜いた。
「まさか、あなたたち」
「この玉が急に現れて西を指すから、すぐ吉野家とわかった」
派手な髪型の青年が言う。
「そっちは優衣の旦那様ね」
「ゆい、と言うのか? 今は」
「ええ。今、席を立っているけれどすぐくるわ」
「姉様。ちーちゃん」
優衣が無邪気な笑顔で戻ってきたが、硬直した。
「優衣、わかるのね」
「ごめんなさい!」
優衣は一言謝ると自室の方へ駆けだした。
「ゆ、ゆい?」
元旦那はあっけにとられている。どうせ、初恋の智也と元旦那との恋を秤に掛けたのだろう。つい先日まで生きていた智也の実感があればあるほど、前には戻れない。自分は生きているときから裏切っていたが。
そう。自分は当騎と抱き合ってキスまでしていた。それと比べれば、一途に智也を想っていた優衣には感情の整理が付かないだろう。追いかけるべきか。步夢は悩む。
「行ってくればいい。姉妹だろう?」
だめよ、と步夢は首を振る。
「裏切り者に優衣を慰める事は許されないわ。あの子は一途に智也を想っていたんだから」
「優衣に想い人が?」
元旦那の方は緊張して固まっている。会えば、自分たちみたいに一気に戻れると思っていたからだ。この元旦那も純粋だ。帰るなど言いかねない。
「俺、出直してくるよ」
「だめよ。ここにいて優衣をちゃんと捕まえなきゃ。もう、智也という人はいないの。優衣は前を向いて歩かなきゃ行けないの。でも、私には優衣を説得することも慰める事もできないわ。智也より当騎を選んでいたんだもの」
「しばらく、優衣がかたくなかもしれないが、傍に居てやれ。生きている人間の方が勝つ。さぁ、コーヒー、紅茶、ティとくれば何を飲む」
当騎が勧める。
「日本茶もあるわよ」
「じゃぁ、俺はティを。ししょーがもう居るなんて早いな」
「大事なモノを持ってきてくれたの。それで、私は姫巫女から女子大生に戻れるの」
「姫巫女? あなたが? 当主は……」
「それは表向きの状態。母は今、ずっと昏睡状態よ。科学が進んでいてうまい具合に脳死にならなずにすんでいるの。それも明日で終わりね」
「明日で……終わり?」
「智也が目覚めるきっかけを教えてくれたの。命をかけて。だからこれが終わるまではおとなしい客人で居てもらわないと。優衣もお母さんが目覚めるのを待ってるはず。明日、早速病院へ行くことになってるんだけど。まさか優衣行かないなんて……」
二人の力が必要なのに。優衣は心を閉ざすか? 一度姉妹喧嘩をしないといけないのだろうか。步夢が心を痛めていると千輝がぴぎーと叫ぶ。
「なに? ちーちゃん。ちーちゃんが慰めに行ってくれるの?」
「ぴぎぴぎ」
当騎の腕の中から飛び降りると優衣の部屋の方へととてとてと走り出す。たまに、こけているのが滑稽だが、千輝は一生懸命だった。自分がいかなくていいのだろうか。考えるが、今は動物の物言わぬ慰めが必要なのだ、と想うと椅子に座る。
「ちーちゃんに任せましょう。失恋の痛みは人がえぐるより名も言わぬ動物の方が慰めに長けているわ」
「どんな……人だったんだい?」
「元旦那というのは困るわね。名前は?」
「暖」
「征一」
「こいつはむー。ゆうでもあゆでもない」
「むー……みん?」
「步夢だからむー。間違ってもあゆでもゆうでもムーミンでもないわよ」
おや、と征一が眉をあげる。
「あゆ以上にお転婆だと聞いている」
「ひどっ」
「勝ち気とツンデレの合体だ」
「ほう」
そう言いながら出されたティをすする征一である。なじむのが早すぎる。さすがは吉野家末筋。
「暖とは玄関先であったのだ。喪中とあったが、最近誰かが?」
「ええ。元婚約者が」
「そうか。その話は聞こえてきている。つらかったろう」
「当騎が居てくれるからね。喪が明けたら正式に婚約になるわ。この一年は居候ね。ただの」
「おい」
「あ。ちーちゃんを連れてきてくれた名誉があったか」
「おひ」
相変わらずの二人に二人ともまたいちゃついて、と見る。
「この、クッキー。優衣の好物だから、暖あとで持って行ってあげて」
「俺が?」
「でないとこの屋敷壊れるわよ。姉妹対決で」
「俺もついて行く。下手な事はいわん方がいいからな」
そう言って步夢の頭を撫でる。
「それぐらいわかってるわよ」
步夢の眼に涙がたまっていた。大好きな妹の苦しい胸の内を解決してやれない。步夢はつらかった。当騎が頭をなで続ける。
じじぃトリオはそんな若者のやりとりをただ、見守っていた。
あとがき
あとでエッセイの勉強にも綴りますが、ギリギリセーフでキャラ名変更できました。暖は真一だったんですが、当騎のシーズン6で真だったのでかぶりすぎだな、と思って延々と考えて暖に決まり。暑いとか暖かいをイメージする名前にしたかったので、野球選手の名前から頂きました。ファイル置換は簡単でしたが、こちらの記事を変えるとなると大変だな、と思っていたので調べてみれば登場前で大仕事がなくなったのでした。思わず「セーーーフ」と言ってしまいました。もう一つ考えないと行けない名前もあるんですが。人名表つくらないと。横文字人間が出始めたので。愛称とかはしらないのでチャットGPTに聞いてます。今日は眠い。やっぱり、昨日寝るのが遅く睡眠不足。で、寝ている間に広島が一点先制。チャンスを潰し続けているトラ。木並選手復帰戦ですが負けそうです。私はホットフラッシュやらでこまってます。冷えのぼせなのか更年期なのか。ほんと困ってます。ではここまで読んでくださってありがとうございました。
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