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【連載小説】ファンタジー恋愛小説:氷晶の森の舞姫と灼熱の大地の王子 第三十三話 アイシャードの魔法

前話

「こっちかセイレンシア。この前はこっちだと……」
「幻がかかってるのよ。毎回同じのはずがないでしょう?」
「あ。そっか」
 短絡的な答えに本当に炎の国の国王になる人間か? と疑いたくなるユレーネである。そうしてセイレンシアの後を着いていくこと数分でアイシャードの部屋にたどり着いた。
「なんじゃ。リリアーナはいないのか」
 跡目にリリアーナとして英才教育を施そうとしているアイシャードはがっかりしている。呑気な、と思うも、リリアーナに平和な道はないのだろうかと兄としての憂慮が頭に浮かぶ。
「大丈夫じゃ。リリアーナはしっかりしておる。心配するほどでもない」
 どれだけの先を見通しているのかわからない不思議な瞳でアイシャードはレオポルトを見る。
「だといいのですが。と。それより、この剣にかける魔術を頼みに来ました。ユレーネにはレイピアを作りました。一緒に魔法をかけてください」
「いよいよ、近づいておるか」
「はい。ここのところこの剣作りで情勢は聞いておりませでしたが、先ほど届いた連絡ではアドルフが攻め入る準備を始めている、との事です。先に語法結界の法が先決ですが、こちらもその後に必要ですので」
「やはり、姫も行くか」
「はい。それが王家に連なる者の使命だと思います。舞の練習は平和になってからいくらでもできます。先決はこの事態の方です」
 ふむ、とアイシャードは言ったきり、黙っている。頭の中で何かを組み合わせているようにも見える。
 長い、沈黙の後にアイシャードが口を開いた。
「王の方はグレイシャル・インフェルノーをかけよう。氷と炎の両方の要素を宿してアドルフに対して凍結と燃焼の効果がある。両方の属性を併せ持つならどちらかに偏らずヤツに衝撃を与えられるだろう。フローズン・ブレイドをここに載せられよ」
「はい」
 レオポルトは今も美しい光を放っている両手剣を卓上に置く。アイシャードが何事か言う。
 
 これが氷の魔法。
 
 古代語だろうか。氷の国の言語のはずだが、内容を聞き取ることはできなかった。
「持って見なされ」
 持つと炎と氷の波がゆらゆらと上がった。
「これが完全なフローズン・ブレイド」
「女王のアイス・ウィスパーをこちらに」
 ユレーネがレオポルトから受け取って卓上に置く。
「これはアイシックブレスをかける。剣から吹き出す氷の息吹で、敵を凍結させながら攻撃力を高める事ができる。女王はおそらくアドルフとは対峙すまい。身の危険を覚えればこの剣を使われよ。アドルフと対峙するのはレオポルトじゃ」
 アイシャードの言葉にユレーネは文句を言う。
「私もアドルフと闘います。レオ一人にさせたら死んじゃうわ」
「それもそうだの。二人で立ち向かわれよ。王は一人で、と思われるだろう。だが、対の相手の助けなしに一人では立ち向かえない。それはそなた達の試練だ。シャリスタンを作る手始めになる」
「シャリスタンの事をどこで!!」
 あの幻は二人にしか見えなかった。また、言い伝えがあるのだろうか。
「ユレーネ。昔、貸した本を覚えておるか? 神話の言い伝えの中にシャリスタンの言及がある。『いつの世か。輝水の源の国シャリスタンができるだろう。そしてその後にまた国は変わっていくだろう』と……」
「確かにそんな文章を読んだことがあります。シャリスタンが立った後にもなにか?」
「それは、もっと先の話じゃ。今はこの両国の関係修繕に力を入れられよ」
「わかりました。レオ。それじゃ、この剣の使い方を教えて」
「焦るな。この剣の魔法ともなじまないといけない。使い方はその後だ。どうしてもというならイーカムで城に送り届けてから教える。いつまでも男所帯の所に居座るな」
「いいいじゃないのー。旦那の家なんだから実家と同じよ」
「まだ、旦那じゃない」
 ユレーネとレオポルトの痴話げんかにアイシャードは笑う。ローレライとそっくりに。いや、ローレライがアイシャードと似通ったのかもしれない。
「わかったわよ。一旦実家に帰ります。だから、教えて」
「はいはい。レイピア重いだろ。慣れる必要はあるけれど、今日は俺が持つ。セイレンシア」
 使い魔の名を呼ぶとアイシャードの本棚に載っていたセイレンシアが飛んでくる。
  二人はセレスティア国の城に帰っていった。
  
「ほんによく似た二人なことだ。仲裁役にリリアーナが必要だ。どうしたものだか」
 この三人を丸く収めるにはどうしたことか、とアイシャードは得意の水鏡を覗いたのだった。


あとがき

結局、ここのところの強行軍に負けて欠勤。こんな時間に更新です。いつもなら帰るともう二時。
今回の話はややシリアスです。そのうちいちゃいちゃしだすので待ってください。もう一回デートがあったような…。

なぜか、これはよく読まれている気がします。一番に書きだした話ですものね。これだけにファンタジー恋愛小説って画像にあり、ほかの画像にもちょっとずつ入れて改変しているところです。この目印がいいのか、と思って。

今朝は三時に起きました。寝た時間はよかったのですが、なぜかよく寝たと思って起きると朝の三時。それから布団に入っても目がらんらん。しかたないので「緑の魔法恋の奇跡」の第一話を書いたり、設定を詰めてました。なぜか第一話は二千字にもなり、あとで割ることを考えています。冒頭の切りのいいところは1000字もないのですが。

今、超眠い。でも寝れないんです。坐骨神経痛が……。神経がうずく。でも寝たほうがいいんでしょうね。

しかし、漢検のテキストをアマゾンで頼んだら、ヤマトさんが来ると…。対面式になるやん、と着替えるべきかと悩む私。でも寝間着で寝るのが一番だと思うんですが。こまった。

基礎のテキストだけで三冊になりそうです。以前は二冊でした。三冊いけるか? と。でも一番初めからするのに適したものが一冊あるので。ついでに漢検のオリジナルのテキストも買うことにしました。

野球がないとはかどらない勉強です。バックミュージックかわりなので。

まま、次の「影の騎士真珠の姫」も続いて更新しますので少々お待ちを。ここまで読んで下さってありがとうございました。

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