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alexandwrites
2020年2月21日 12:04
薄暗い、雑居ビルの階段を数階上がったところに、彼の部屋はあった。窓からは、上海の夜景が赤黒い錆のような膜を帯びて連なり、行き交う車のライトが、やけに眩しかった。私たちは並んでソファに座り、彼が入れてくれたコーヒーを飲みながら、互いのことをいろいろと話した。私も彼も、どうやら恋を失ったばかりのようだった。飾られた写真立てに、笑顔の彼女。伏し目がちに語る彼の、低い声。暫く話