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花相の読書紀行№.140『センセイの鞄』

一生に一度、こんな恋愛が出来たら・・・

【センセイの鞄】/川上 弘美
<あらすじ>
センセイ。わたしは呼びかけた。少し離れたところから、静かに呼びかけた。
ツキコさん。センセイは答えた。わたしの名前だけを、ただ口にした。
駅前の居酒屋で高校の恩師・松本春綱先生と、十数年ぶりに再会したツキコさん。
以来、憎まれ口をたたき合いながらセンセイと肴をつつき、酒をたしなみ、キノコ狩や花見、あるいは列車と船を乗り継ぎ、島へと出かけた。
その島でセンセイに案内されたのは、小さな墓地だった――。

40歳目前の女性と、30と少し年の離れたセンセイ。せつない心をたがいにかかえつつ流れてゆく、センセイと私の、ゆったりとした日々。切なく、悲しく、あたたかい恋模様を描き、谷崎潤一郎賞を受賞した名作。
解説・木田元

★感想
何を書き出せば良いのだろ。
心に響く小説と言うのは、こんなにも優しいものなのでしょうか?
 
鬼気迫るとか強い感動とか、巧みな仕掛けとか、爆笑なんて何にもないけれど、唯々優しい文章が、淡々と綴られている。
「ツキコさん」
「センセイ」
その言葉だけで、物語の中に入り込んでしまいます。
二人の男と女が一定の距離を持ちながら、でも少しづつ、本当に少しづつ近づいていく様子が心地よくって、最後は暖かな涙に包まれました。
 
空気がふわふわ浮くような、風がさわさわ吹くような、そんな優しい恋愛が出来たら、生きてて良かったと、きっと思えます。
そんな小説に巡り合えたことに感謝です。
 
『センセイと鞄』は、WOWOWのドラマW第1作として小泉今日子さん主演で、2003年2月16日に放送されました。その時のセンセイ役は柄本明さんでした。柄本さんのセンセイは、ちょっと元気なセンセイ。
このドラマは、第40回ギャラクシー賞 テレビ部門選奨受賞、平成15年日本民間放送連盟賞、テレビドラマ番組部門最優秀賞受賞、第58回文化庁芸術祭 テレビ・ドラマ部門優秀賞受賞したそうです。
 
でも私の脳内では、寺尾聰さんの物静かなゆったりとした感が、完読までずっとイメージされていました。
今度、寺尾さんのセンセイを見てみたい気がする。(*^-^*)


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