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想い出のレシピ本を開いた、作った

2019年の初秋に恋人が亡くなってからのこと。心に積もり積もっているけれどなかなか話せる場所を上手につくれなかったのでnoteをはじめてみようかな。できるようになった話から。

以前のように純粋に楽しめるわけではないけど、料理ができるようになってきた。ただ彼に買ってもらったカレーのレシピ本は亡くなったあと開けないままだった。「これ見て作るたびこの日を思い出すでしょ!」と買ってくれたものだったから...確かに思い出すけど、こういうことじゃないだろうと。

手料理を出す機会はあったのに材料や時間のタイミングで、結局このカレーは食べさせてあげられなかったこと後悔してるのもある。

亡くなってしばらく経った頃、久々に自炊をしようと市販のルーで何の気なしにカレーを作り出しのを皮切りに...このカレーの本のことから、もう二度と彼のおいしいが聞けないことや、書くには恥ずかしい称賛の声が聞けないことを痛感してしまい、その日は泣きながら作ることになってしまった。あれは堪えた。

それからは食べさせたいと思うような「彼が好きなもの」「手の込んだこと」は避けるようにすることにした。それでも気持ちはよぎるけどね。

そんな中、友人が掘りたての筍を送ってくれたのをきっかけに灰汁抜きしたり、木の芽をそろえ、いいお出汁で筍ごはんをつくった。手の込んだことをしていると一緒に食べて欲しくなって悲しくなるのは相変わらずなのに、SNSでは「つくったよ〜!」みたいに楽しげに投稿してるよくわからない精神状態にも見えますが。

どちらも存在している気持ち。今は料理が楽しく感じることも、美味しいのも嘘ではないけど悲しくなったことは伏せてるだけで。

筍で悲しくなったついでに件のカレーのレシピ本を開いたら「本におかえりなさいませ。」だって。挟まれた栞のメッセージ。材料が揃ってたので灰汁抜きしてる間に作った。泣かなかったし、おいしかったよ。食べさせたい相手がここにいてくれないこと、淋しいけど。でもまた一つ取り戻すことができたのかな。


こちらのレシピ本です。「ひとりぶんのスパイスカレー / 印度カリー子」


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