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東京在住10年目だけど、まだ東京に憧れてる

4月から東京生活10年目に入った。

10年前、大学進学のタイミングで長野県から上京し、それからずっと東京にいる。

思えば、ずっと東京に憧れていた。

長野県にいたころの私と東京をつなぐ唯一のもの、それはテレビだった。

小学生のころは授業を終えると一目散で教室を飛び出し、家に帰って「ドラマヒットシリーズ」を観るのが日課だった。「ドラマヒットシリーズ」はフジテレビの人気ドラマを再放送していた番組で、「東京ラブストーリー」や「ラブジェネレーション」、「GTO」、「やまとなでしこ」、「ロングバケーション」、「救命病棟24時」、「ショムニ」など挙げたらキリがないが、高視聴率をたたき出したドラマを毎日1話づつ放送していた番組だった。私はこれが大好きで夢中になって観ていた。

そして必然的に、テレビの世界に強烈に憧れを抱き始めた私は、東京に行ったらこんなドラマみたいな人生を送ることが出来るんだ!と思うようになった。

東京に行けば、キムタクや反町みたいなかっこいい男性と出会えるのかもしれないし、ロンバケやラブジェネみたいなドキドキするような恋が出来るのかもしれないし、やまとなでしこの桜子みたいな美人で洗練された女性になれるのかもしれない、と。

高校生になっても東京への憧れは消えなかった。このころは、金曜日の夜中に放送されていた「僕らの音楽」のオープニングが特に好きだった。オレンジ色の淡い光を放つ東京タワーを中心とした夜景が、メロウなアルトサックスのバックミュージックにのせて映し出されていた。ほんの数秒のオープニングだったけれど、本当におしゃれで洗練されていて、それでいてなんだか情緒的で、ああ、これが東京の金曜日かぁ、、東京のサラリーマンは今頃おしゃれなバーでウイスキーの氷をくるくる弄びながらきれいな女性を口説いているんだろうなぁ、六本木ではハイヒール履いた女性と高そうなスーツ着た男性がヒルズの最上階かどこかでワインでも飲んでるのかなぁとか、色々なことを想像しては、「これぞ私が行くべき場所だ!!」と鼻息荒くさせていた。

そして大学進学を機に、ついに私は念願の東京暮らしを始めることになった。

初めての東京暮らしといっても何回かは遊びに来ていたことがあったので、「人多いなっ!」とか「電車長いなっ!」(長野の電車は基本2両のみ)みたいなカルチャーショックは無かったが、それでも、徒歩で駅に向かえて、電車で30分前後で、テレビで見ていた新宿の夜景や渋谷の雑踏や東京タワーなどを生で見ることが出来るというのは、まるで本当にテレビの世界に入ったみたいで夢の中を生きているみたいだった。

ただ、東京に長年住んでみて分かったことがある。

それは、東京に住んだからといってドラマのような生活を送れることはないということだ。なんちゅうこった!!

東京の大学に通っても、「オレンジデイズ」みたいな恋と友情の青春のひと時は訪れなかったし、会社で働き始めても「やまとなでしこ」みたいな合コンの誘いは皆無だし、桜子みたいな洋服を買うお金もない。ドラマの中のOLはおしゃれな高層ビルにランチに行って恋バナで盛り上がるけど、現実は職場の近くにあるのはファミマだけで(せめてセブンであれっ!)、そこで120円のおにぎりを買って自席で一人静かに食べる。

そもそも、私は超インドア派なので休日はほぼ家で過ごす。そのため、おしゃれなカフェでランチ食べて、高層ビルでディナーして、クラブで踊り明かしてナンパされてお持ち帰りされて・・・、とか、東京の人がやるべきことにはだいたい向いていない。(そもそも金が足りない。)「意味不明なくらい高い家賃払って東京で暮らしてる意味って・・・?」っていう疑問は払拭しきれない。

それでもまだ、私は東京に住んでいたい。

それは、まだ私は東京への憧れを捨てきれいていないからだと思う。

いくら理想と現実が違くても、

いくら高い家賃や、満員電車や、行列や、歌舞伎町や、六本木や、渋谷や、池袋や、そこではしゃぐ人々が嫌いでも、

帰宅途中に電車の窓から見える新宿の夜景は、未だに私の心をときめかせるのだ。高層ビルの明かりや高級マンションの都会的な雰囲気、途切れない車の往来、夜の街に繰り出す人々、腕を組んで歩く男女、それらが幼少期から見ていたテレビの中の映像とリンクし、強烈な憧憬の念を引き起こさせる。いつだったか、東京出身の知り合いに「そんなのすぐ慣れて飽きちゃうよ。」と言われたことがあるが、丸9年住んだ今でも全然そんなことない。私は今や憧れていた風景の一部であるにもかかわらず、「うわぁ~!東京だぁ~!」って子供のころみたいにワクワクするし、現実の風景を見ているのだけど、まるでテレビを見ているような、そんな感覚に囚われるのだ。ただ単に根が田舎者なだけかもしれないが、それでもその感動は、ある種、麻薬みたいなもので、私はこの瞬間のために東京に惹かれているのだと思う。そして、もしかしたらいつかドラマみたいな奇跡が訪れるかもしれない、、、と幻想を見せ続けるのだ。

現実の私は、彼氏もいないし、友達も少ないし、給料も少ないし、ほぼ職場と家の行き来で日々が過ぎていき、ラブジェネみたいな恋どころか圧倒的孤独と向いあう日々であるが、それでも私は未だに夢見心地だ。

私はもはや、「東京」という麻薬におかされてしまっているのだ。

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