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TOKYO PRO Market市場に上場するまでとこれからのうんたらかんたら


 2023年11月29日、株式会社AlbaLinkは東証TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)市場に上場することができました。正直なところ、このタイミングでの資金調達もありませんし、株式の流動性もほとんどない市場なのでこれといって重要な意味を持たないという風説もありますが、1つの区切りにはなったのかなと思います。

 と言うのと、自分達がまずこのTPM市場にあがると意思決定をした時に、あまり生の情報が探し切れませんでしたので、今後この市場を目指す方にも向けて備忘録的にも残しておこうかなと。

  • TPMにいく理由

  • 得られるメリット

  • 審査とか費用に関して

  • 実際やってみてと今後

みたいな構成です。まだ数日ではありますが、すでに得られているメリットなんかも少し記載しています。割とボリューミーになってしまいましたが、興味のある方はお付き合い頂ければ幸いです。

そもそもTOKYO PRO Marketとは

 プロマーケットは、イギリスのロンドン証券取引所と東証が共同で作った市場で、当初の目的は「プライム市場やスタンダード市場は費用や業務コストが高くデメリットが多い」というのを解消するため(らしい)です。

 つまり、「そんなにハードルあげなくてもちょうど良いラインで上場するメリットも享受させてもらいつつ、とは言え最低限株式の流動性は持たせて~みたいな市場」だと認識してます。そのため、グロースやスタンダード、プライム市場とは違い、プロの投資家のみ売買が認められている市場となっています。そして、その分一般市場に比べると投資家保護の意味合いが小さく、上場基準もハードルが低くなって(簡単ではないよ)います。

なぜTPMに上場するのか

「なんでTPM1回挟んだんですか?意味あります?」

 この質問は、TPM市場に1度あがってグロースを目指して行くということを伝えた時のカウンターでされる質問ランキング歴代ぶっちぎりの1位かつ、その回数127回にも及ぶ(河田調べ)ほど何度も頂いている質問です。今後も恐らくこの質問は頂くことになると思うので、ここに回答を記しておきます。

当時直接グロース市場は難しかった

 事業成長の1つの手段としてIPOを決断したのは、2020年12月頃だったと記憶しています。創業メンバーからの声もあり、グロース市場を経て全国に展開していくという意思決定をし、翌年2021年から証券会社や監査法人の選定を開始しました。しかし当初の状況で主幹事契約をしてくれる証券会社は見当たらず、監査法人も前向きになってくれるところがないような状況でした。

 今思えば原因はいくつも思い浮かぶのですが、

  • まだビジネスモデルが不安定であったこと

  • 管理体制を構築できる絵がまったく見えなかったこと(当時4~5名で利益だけ出てる小さい不動産会社)

  • 法律的にも不安な部分があったこと

  • 資本市場や株式上場に関する知見がまったくなかったこと

  • 株価をつけてある程度の規模感を持てる想像がつかなかったこと

  • 事業の蓋然性がまったく証明できなかったこと

挙げればキリがありませんが、当時はそれまでの会社でした。今から客観的にみて、自分が証券会社の営業でも余裕で断ってる気がします。ちなみにこれも今思えばですが、上記のような点をフォローしやすいという意味ではVCからの資金調達をしてスタートアップを始めることのメリットはそれなりにあるようにも思います。

TPMで得られる(と想定している)直接的なメリット

 そんなタイミングで、上述した「TOKYO PRO Market」なるものの存在を知り、まずはここをマイルストーンとしてクリアすることが最善の選択肢なのでは?という気持ちが沸いてきました。

 もちろんこの道が正解だったのか遠回りだったのかはわかりませんし、それを正解にしていくのは今後にかかっているのですが、いくつかJアドバイザーと呼ばれるTPM請負会社の話を聞いているうちに「これはメリットも大きいのでは?」という気持ちが強くなってきました。そのメリットの部分を書きます。

採用

 まずは採用。当社は反響の部分でインターネットの力を利用してはいるものの、受けた反響に対して交渉から契約を進めていくという部分はどうしても人力を要します。つまり労働集約的な部分から逃れることはできないビジネスモデル。

 そして、成約率を高めていく方法として全国に支店を配備していくという戦略を描いています。となると地方での人材採用が肝。そして地方人材が就職に求めることはそこに働く場所があること、安定していることです。

地元就職希望の主な理由

 どれほど大きな影響を与えるのかはまだ計れていませんが、少なくとも地方で就職先を考える人にとって東証に上場している会社であるということがマイナスに作用することはないはずです。であれば最短でその称号を得ておくことは事業成長のプラスになるはず。

集客

 続いて集客です。現在展開している地方空家の買取ビジネスは、主に相続のタイミングが案件発生のポイントとなります。そして、相続を受ける人の平均年齢は50代以上。さらに地方を生活拠点としている方にとって、相続財産を託す会社に求めるものは「信用・信頼」であることが多いです。

 両親が長く住んだ家や先祖代々受けついた家を手放す決断をするわけなので、「東京のどこの馬の骨ともわからない会社」に託したくないと思うのは自然なことです。我々はそういったお客様に対して可能な限り親身に寄り添い、可能な限り好条件を出そうとあらゆる方法を考えるのですが、会社が上場しているということは何よりもその信頼を得るのに近道になると想定してます。

 名刺にも集客サイトにもコーポレートサイトにも東証のマークをつけることができるようになり、今戦っている領域で上場している会社は存在しません。(唯一カチタスさんは空家文脈でバッティングしますが、価格帯がまったく違う)であれば最短でその称号を得ておくことは事業成長のプラスになるはず。

資金調達

 3つ目が資金調達です。TPM上場時に増資をする会社はあまりなく、弊社も例に漏れず増資はありません。ではどうやって資金調達に影響するのか?ですが、借入での調達には少なからず影響するという想定してます。金融業界の方に聞くと「いや意味ないでしょ」という心の声が漏れてくるという経験を数えきれないくらいしていますが、さすがに無風ってことはないと思うんですよね。。。というかそう信じたい自分がいます笑

 あと財務周りの観点で言えば代表保証が全部外れるというのはメリットに感じる人が多いと思います。正直自分の場合は覚悟もしてますしその責任が逃れることはないと思っていますが、実際何十億とかの債務保証から解放されるというのは気持ち的に楽になる部分はありそうです。

 ちなみにこの保証の部分、準備期間のうちに各金融機関に申し出ることで大半は受け入れてくれます。とは言え不義理的に方向転換して保証だけ外したみたいな見え方になってしまうと金融機関からの心象はめちゃくちゃ悪くなりそうですが・・・。話を戻します。

SEO

 最後4つ目は、おまけくらいの気持ちではありますがSEOで有利になるのでは?という淡い期待があります。健康アップデート以降は年々ドメインの信用度を重んじる傾向が強くなっていますが、事業主であり上場企業であるということはそれ以上の加点がないのではと思うくらいの要素です。上場を果たしたから急に検索順位が軒並みあがるとは考えにくいものの、少なからず中長期的にみれば必ず良い方向に作用するのではと。本当におまけ程度ですが期待してます。

Google様も認識してくれている

 ずらずら教科書的なことを書いてきましたが、1番は前に進んでいるという事を示せることなんじゃないかなとうっすら感じてます。経営者の役割は果てしないように見える旗を立てて、そのマイルストーンを正しく設定し達成していくこと。そして「言ったことが少しずつ実現されていく」ことで信用が積み重なっていくのだと思います。

 そういう意味で、果てしなく遠く高い目標を立てて走り続けるよりはまずマイルストーン的な意味で1つずつ山を登っていくというのは悪くないのではと。

TPM上場へのハードル

 メリットはある程度わかりました。とは言え、TPM市場でも上場するにはそれなりの準備が必要であり、コストがかかってきます。当然経営者が好き勝手にできないようなガバナンス構築は必要ですし、公私混同なんて当たり前に許されません。この先は、上場準備に直接的にかかってくる費用、審査の難易度や準備要項について書いて行きます。(長くてすみません)

費用に関して

 いきなり公開しますが、上記がTPMへの上場準備にかかった内訳です。

1年目:約1,800万
2年目:約3,000万
3年目:約6,300万
合計:11,000万

 人件費の内訳にはCFOの人件費、採用費、経理人員、社外取、監査役など諸々が入ってます。実際には事業拡大がされれば経理や管理側の人件費は少なからず増加するので、厳密にこれが100%とは言えませんが、およそこのくらいです。6,000万弱。

 ざっくりJアドバイザー費用が1,700万円、監査報酬が2,800万くらいかかってますが、途中で監査法人のリプレイスもあったため若干ショートレビューの分が上乗せされていたりします。

 それ以外のIPOコンサルや会計コンサル、SOの策定費用など会計財務周りを固めるのに800万くらい。合計して1.1億くらい。さらに100%オーナー企業であれば限界まで挑戦していたはずの経費枠も使えなくなります。(うちは元々組織化をする時点で突っ込んでない)この費用をどう見るか?です。

 率直にものすごい費用がかかっていて、これに対してどれほどのメリットがあるのか?は疑問点もありますが、長期スパンで考えたら小さなことです。正解にするべく事業成長させるのみ。

審査に関して

 続いて審査項目についてです。正直自分はグロース市場やプライム市場などのいわゆる本則と呼ばれる市場に上場した経験もなければ、上場会社に勤めていた経験もありません。なのであくまでもこの審査内容は自分が聞いた中での比較と、1/1事例での主観でしかないです。その上で、自分が感じたTPM市場上場ということの難易度と、明確にわかる本則市場との審査の違いをツラツラ書いてみます。

 まずは具体的に以下のような項目が必要ない、あるいは少し簡易的になっています。

  • 監査役会設置義務がない(常勤監査、社外監査2名)

  • 内部監査室(選任の人)の義務がない

  • 内部統制報告書の作成が必要ない

  • 有価証券届出書、有報⇒発行者情報でOK

  • 決算書半期⇒四半期でOK

  • J-SOX対応⇒任意

  • コーポレートガバナンスコード準拠⇒任意

 とは言え、監査法人の契約は必須ですので売上を恣意的に変更したり私物の購入を経費に突っ込んだりは余裕でNG。必ず稟議をあげて意思決定するとか、社内規定の整備とか、法務的な確認も割と隅々まで行っていく必要がありました。ただ正直なところ審査自体はそこまで厳しい印象はなく、きちんとバックオフィスが整備されていて、稟議や規定類が整い運用されている会社ならそこまでハードルは高くないはずです。(それでもうちは力不足で苦戦しまくりましたが)

 その中でも1つ苦戦したのが予算策定の部分です。それまではある程度「エイヤ」で最終利益からの逆算で決めていた予算ですが、TPMとはいえここのロジックはかなり細かく見られ、何度も壁打ち修正の上で再提出を求められました。KPIの積み重ねがロジカルにできているか、実際その通りになったとして人材獲得はできるのか、キャッシュの辻褄は合うのか、そもそも事業の蓋然性はあるのか、という部分ですね。特に売上利益の攻めの部分。

 ただ、これをかなり粒度細かく積み上げていくこと自体が事業の解像度をあげることに役立ちましたし、実際にこうやって数字を積み上げていかないと意味のある予算は作れないなということを身に染みて感じました。

 あとは全体的に作文して作る資料や数字を集めてまとめるものなど、とにかく提出物はそれなりの量になってくるし期限もタイトになってくるのでここをどれだけやりきれるかというのはバックオフィスの強さとコミット力次第かなと思います。

最後に

 ここまで書いてきたTPM上場へのメリットがどれだけ効果を得られるのかの答え合わせはこれからですが、今現時点で自分が感じてることをいくつか書いて終わりたいと思います。(まだ上場後数日ですが)

準備自体で会社が強くなった

 まず間違いないのはここです。上場準備を進める中で色んな規約やルールが新しくモリモリになりましたが、すべての準備に意味があり、その意味を考えながらあるべき姿を目指すことで実際に会社としての強さや厚みは増しました。相互に牽制機能を働かせて不正を防ぐことや、承認の権限やそのフロー、予算を作り事業予測をすることですべての部署に計画が落とし込まれ、それが実際に計画通りか確かめることで経営が強くなりました。

 もちろん100%オーナー企業であればここまでやる必要性がないことも多いですが、投資家の資金を預かり運用しているという株式会社の根本から考えるとそれ自体が意味のあることだったかなと思います。

すでに営業の武器の1つとして機能している

 まだTPM上場となってから日が浅いですが、チラホラ営業トークの中で「上場会社」ということをフックにして成果が出ているというのを聞いています。LPやコーポレート、名刺など販促資料に書けることは期待してましたが、具体的な営業現場でも目に見える効果があるのは当たり前ながらあまり想像していなかったので、嬉しい誤算です。

 やはりマスメディアに出る、口コミサイトの評価が良い、他人が言っていた、というのと同様に「会社が上場している」つまり東証から認められているという第三者評価は説得力があるようです。

マーケ面でもすでに効いてる感

 まだ3~4日しか経過していませんが、すでにマーケティングの側面でもメリットは感じています。いくつかマスメディアや業界誌からの取材を受けることができた中で、やはり「上場企業の社長としてインタビューをさせてほしい」という要望が複数出てきました。ニュース番組で会社の事業内容を紹介できるようなものもあったので、直接的な集客はもちろんですが知名度の向上、間接的にはSEOにも効いてくれば狙い通りです。

上場を喜んでくれる人が予想以上に多くて良かった

 これも本当に予想外だったことなのですが、社内外問わず今回の上場を喜んでくれる人が想定の5倍くらいいて、それは純粋に嬉しいことでした。と同時にすごくありがたいことで、こういう事は数字を残すこと以上に価値があることではないかなと感じます。

あくまでマイルストーンでこの先

 最後ですが、元々そこまで重要と思っていなかったというのも正直なところで、本当にこれはあくまでも通過点という気持ちしかないです。この先はグロース市場⇒プライムとあがっていきながら事業拡大し、まずは空き家や訳あり不動産の業界で自他ともに認めるNo,1を目指して行きます。

 そしてそこに止まることなくリソースを活かした新規事業、あるいは周辺事業やシナジー領域のM&A、方法は問わずより一層社会に貢献できるように、そして日本が衰退しないように微力ながら尽力していければと思っています。

 その為にはまだ必要人材が揃っていない状況です。これを読んでくださった方の中で、アルバリンクで一緒に働いて自己実現と共に社会貢献をしたいという方がいたら是非DMでもメールでも良いのでお送り頂ければ幸いです。営業職はもちろんですが、経営企画やIR、経理人材、マーケ(SEO&広告運用)、IT領域(情シスDX)など幅広に応募継続しています。ご連絡お待ちしておりますm__m

(僕いませんw)

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