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【感想文】PERFECT DAYS (ヴィム・ヴェンダース、2023年)

スウェーデンで観る日本語映画シリーズ。
大大大好きなヴィム・ヴェンダースが日本で日本語で撮ったと聞き、ユニクロのヴィム・ヴェンダースTシャツを来て観に行ってきました。(ヴィムさん大好きか。大好きです!)
と言いつつ、実はヴィム・ヴェンダースはドキュメンタリーばかり観ていて実は初フィクションなんだなぁ。


あらすじ

東京でトイレの清掃員として働く平山(役所広司)。
同じ時間に起き、植物に水をやり、台所で歯を磨き、アパートの前の自販機でコーヒーを買って、車で職場に向かう。愛用の掃除道具で公衆トイレを清掃して周り、神社で昼食をとり、木漏れ日に煌めく木々の写真を撮る。仕事が終わると銭湯に行き、行きつけの居酒屋でいつもの酒とつまみを注文。本を読み、床につく。週末にはコインランドリーで洗濯し、古本屋で文庫を買い、フィルムを現像に出し、馴染みのスナックで楽しむ。淡々と同じ毎日を繰り返す平山だったが、ある日、思いがけない再会を果たし、彼の過去が少しずつ明らかになる。

感想(ネタバレあり)

ストーリーテリングが素晴らしい。
画面には淡々と日常が流れていくだけ。何も起こらないし、何も言葉で語られない。平山さん、寡黙だし。役所さんの声、あんまり聞かなかった気がする笑 絶対字幕少ないと思う。
それでも、ちょっとしたセリフ、表情、ギミックだけでその奥に広がるドラマが見える、読める、感じられる。すごい。美しい。
そうなるように練られた脚本、それを表現できる役者、言葉以外で感情を伝えてる補助をする音楽、編集、それらをまとめあげる監督。ストーリーは言葉だけじゃなくてここまで表現できるんだ、と見せつけられた。すごかった。これぞ映画!もう全部全部全部巧みでお見事でした。美しかった。

最大のハイライトは石川さゆりのThe House of the Rising Sun。
めちゃくちゃかっこよかった。やはり演歌歌手は歌がうまい。そして情緒あふれる。ちょっと泣きそうになった。

おじさん2人の影踏みもかわいかったし。


平山自身は地味だし、住んでいるところも古いし、おしゃれだけど、とは言えトイレだし、何ひとつキラキラしている要素はないのに、なぜかすごくキラキラ感じる映像だった。不思議。淡々と静かにストーリーが流れていくからか、映画を観ている間は「水面がキラキラしている川の流れに身を任せて流されてふわふわ気持ちいい〜」というイメージでした。不思議で気持ちいい。

友人が「映画館を出たら世界の色が違って見えた」と言っていて、本当にそんな感じ。

雑記

田中泯さんは外国人映画監督にすごく人気がありますよね。今回もすごく印象的でした。出てきた瞬間、顔が見えなくても泯さんだとわかる。

スウェーデンの映画館はエンドロールが始まるタイミングで劇場内の照明が点きます。なのでエンドロール終了まで劇場内にいる観客はすごく少ないです。
エンドロール終了までご覧になった方はわかると思いますが、本作はエンドロールの最後に監督がこの作品でテーマにしていたことを文字で出しています。(それをテーマにしたのはとても監督っぽいなと思った)
そこ、スウェーデンでは字幕がついていませんでした。
作品の一部と見做していない感じがして個人的にはあまり好ましくないな、と思ってしまった… 英語だったので、多くのスウェーデン人は読めると思うけど…
「どうせ観る人なんていないから訳す必要はない」とか思われたのかな。むしろ翻訳者も最後まで観てないのでは?とか邪推してしまった…
この「エンドロールで照明点けちゃう問題」はいつかnoteに書こうと思います。

/10
とてもとても大好きでした。ありがとう、ヴィムさん!

作品情報

監督:ヴィム・ヴェンダース
脚本:ヴィム・ヴェンダース、高崎卓馬
撮影:フランツ・ラスティグ
編集:トニ・フロッシュハマー
インスタレーション撮影:ドナータ・ヴェンダース
キャスト:役所広司 柄本時生 アオイヤマダ 中野有紗 麻生祐未 石川さゆり 田中泯 三浦友和
2023年製作/124分/G/日本
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:2023年12月22日
スウェーデン公開:TriArt、2024年1月10日
賞実績:第76回カンヌ国際映画祭男優賞、エキュメニカル審査員賞受賞、第96回アカデミー賞国際長編映画賞ノミネート
公式HP:

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