見出し画像

あなたはどのタイプですか?

「フォローアー何人いますか?」

「ほぼゼロです」

どうしてかと考えてみると、私がやっているSNSはFacebookぐらいで、Twitterでもインスタでも発信していないから。あとはNote。ここには数十名フォローアーがいますが、多くはFacebook友達と重複。

エッセイを書くのに、どれぐらいの人が読んでるのかをあまり気にしてこなかったから、このフォローアー数というのがピンとこないのです。いったい誰に見てもらいたくて書いているのだろう?

そんなことを考えていたらミラン・クンデラの小説「存在の耐えられない軽さ」を思い出しました。ジュリエット・ビノシュが美しい映画ではなくて小説の方です。


クンデラは「人は誰かに見られていることを求めている動物である。だから<他人の視線>がないと生きていけない」として、どのような形で<他人の視線>を求めているかによって、人を4つのタイプに区別していました。

1番目のタイプは、限りなく大勢の不特定の人々の視線を求めるタイプ。

2番目のタイプは、知人の視線をたくさん求めるタイプ。

3番目のタイプは、自分が好きな、愛している人の目線を必要とするタイプ。

4番目のタイプは、そこにいない人々の想像上の視線を必要とする人達。もっともレアキャラだとか。

クンデラはこのタイプ論を小説の登場人物を特徴づけるために使ったのでした。ヒロインのテレサともちろん三番目のタイプ。つまり愛する人の視線だけが必要なタイプ。その恋人のトマシュも三番目に変わっていく。恋愛小説というのは、お互いの目線を必要とする二人の登場人物が作る物語。そうじゃないと恋愛小説は成り立ちませんね。
このタイプ論を書くことでクンデラはキャラ設定の方法を小説の中のエッセイの部分でバラしているのでした。

あなたはどのタイプでしょうか?

家でパーティーを開きますか?開くなら一番目か二番目。そして知らない人がそこにたくさんいたら燃えるタイプだったら一番目確定。知人だけだと安心するなら二番目。

パーティーを開かない。とすると、恋人か家族だけだと安心するなら三番目。四番目は一人がいいと断言できる人。一人であっても想像上の誰かが一緒にいるということなんでしょうね。

ところでこの小説が書かれたのは1984年。ジョージ・オーウエルが描いた監視社会のディストピア小説のタイトル年。私が大学に入ったのもこの年。そしてフランスの欧州原子核研究機構(CERN)でインターネットの運用が始まった年でもある。

当時は誰も想像できなかったけど、他人の視線の要求度というのはインターネットができて、さらにSNSができて相当変わりました。

もう一回4つのタイプをSNSの視点で眺めてみるとどうでしょう?

最初のタイプは、不特定の人々いるSNSが大好き。つまりTwitter、TikTok、 Instagramなど。昔は政治家とか芸能人なんでしょうけど最近は一般人にもこの世界が気持ちいいと思うひとが増えたのではないでしょうか。

2番目の知っている人の視線を多く求め流のはFacebookがこれでしょうね。いわゆるパーティーピーポーで多分私はここでしょうね。

3番目のタイプは、自分が好きな、愛している人の目線を必要とするタイプ。愛するひとがいるときに生き生きとするタイプ。メールとかLINEがこれからな。好きな人とひっそりとやり取りする。

4番目のタイプは、そこにいない人々の想像上の視線。これはSNSにはないな。昔からこれは絶滅危惧種かな。

文章を書いていて、自分は誰のために書いているのだろう、と考えると、私は二番目の多くの知り合いのため。あるいは三番目の家族のためのどちらかになるようです。

で、これまで書かれた名作というのはどうだったのでしょうね。

たとえば聖書に入っているパウロのローマ人への手紙。このローマ人というのはローマにいる当時は異端だったキリスト教コミュニティーの仲間に書いている。当時SNSがあるとすれば、Facebookの仲間たちみたいなものでしょうか。それが今は神様が書いたとされる聖書です。

日本最古のエッセイスト清少納言が枕草子を書いている時、誰を相手に書いていたのでしょうか。一条天皇の妃、定子の後宮の仲間たちと、それにつながる貴族の女性たちが読者。貴族の女性たちが、最新のファッションとして読んだとすると後宮自体がSNS発信基地だったのでしょうね。とするとこれはFacebookよりもInstagramに近い感覚かな。さらにライバルの藤原彰子の後宮からは紫式部がアンチ清少納言のSNSを発信して、清少納言の悪口を書いたぐらいです。紫式部、清少納言の悪口を書いて炎上が当時からあったのも面白い。

さて、私。今日も書いているけど、私の文章のリーチは広くある必要もない。

いいんです。フォローワー少なくても。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?