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やはり旅は一人に限る【尊4(死)DAY】

【DAY3】

法王パート
今日は生物学者、物理学者、心理学者を招いて、科学原理を宗教観点から解訳するパートである。正直どうでもよかった(不敬)。おれにはどうしても今日中済ませなければならないことがある。それはプリキュアのムービーを、映画館で観ることだ。もし今日見逃したら、明日は土曜日。大勢の家族連れの中に混じって観ることはできるだけ避けたい。満場の子供たちがミラクルライトを光らせて「頑張れェーッ!プリキュアーッ!!!!」と一斉に叫び出したら冷静でいられる自信がないからな。大の男ひとりがプリキュア映画を観るには、覚悟が必要なんだ。

時刻は12時過ぎた。法王はそろそろ退場のお時間であるが、慈悲深き法王さまが最後の最後に「私に聞きたいことがあれば、言ってみ」とQ&Aコーナーをはじめ、それがなかなか終わらない。おれは苛立った、多分トゲパワワも放出している。アンタイブッタ思想の高まりを感じた。

「はーいでは、今回の来日法要はここまでにて円満に終了しました!ご来場いただきありがとうございます!それではまたの機会で……」と司会が言った。ふぅ、やっとだぜ。

法王パート終わり。

「母さん、すぐに用事があるから、一人で帰えれる?」

「えっ、一人で?うーん一人でか……」明らかに困っている母さん。「まあ、大丈夫……かな?」

明らかに大丈夫ではない。

「わかったよ。ホテルまで送ってく、でもすぐにでかけるからね」

そしてホテルに戻って、部屋の前まで来たが、ドアノブに「掃除中です」の掛け札がぶら下っている。

「ますいですね……」何がまずいというと、今の服装がすごくダサいだからだ。ただでさえ坊主頭で筋肉質の男が、ナード風の格好でプリキュア映画を観に言ったら、他の観客にどう思われるか……いや、多分何も思われないし、あったとしても「あのひと、ナードだよね」ってぐらいだろうけど、ダサい格好でプリキュアを見に行くなんて、おれのプライドが許せない。

「はぁ……しゃあない。二階で昼ごはん済ませよ」「いいね」

今日の昼ごはんはパスタとピザだ、パスタとピザの半分が俺の腹に納めた。チーズがちょっときつい。掃除が終わった部屋に戻り、おれはシャワーを浴びて、腕立て伏せで筋肉をバンプアップさせ、制汗剤を塗ると、デニムシャツと黒ズボン、そして外に濃紺の軍風ジャケットを着こんだ。デートに赴く男の出で立ちである。これからかわいい女の子に会いに行くんだからな。疎かにしてはいけない。

「そんじゃ行ってくる。五時ぐらいに戻るかと」「いってらー。ところで何処で何をしに行くか教えてくれない?」「ダメ」

30分後、おれは桜木町のすぐそばにあるモールに来た、開演まであと五分、駅一つの距離ぐらい歩けばすぐ着くと思ったが信号で結構時間を取れれた。日本での映画館は初めてだが、平日のため人がほとんどいなかったし、自動販売機で難もなくチケットを購入できた。日本の映画館初体験だ、ツイートしておこう。

そして尊死者の先輩から祝福が来た。庶子はちょっと言い過ぎw

シアター5は……五番、こっちだな。

「いらっしゃいませー、あっ(察し)、ごゆっくりどうぞ!」

シアターに入り、席に向かいながら、周囲を観察した。流石に人が少ないな。子供連れは二組で、ほかはカップルか、おれみたいなナード野郎だ。人数は合計10人ぐらいか。これは高品質の鑑賞ができそうだ。席に着いたおれはかばんからバーボンが入ったスキットルを取り出し、一口を含んだ。スクリーンに何が映った。携帯の音量を注する動画だ、これには英語以外に韓国語と中国語の字幕が付いている。さすが国際都市横浜って感じか。そんで映画泥棒、シュガーラッシュの予告、グリンチの予告、ファンタビの予告、クリスマス映画の予告、シュガーラッシュの予告……

長くね?

しかもファミリー向けの予告ばかりですね。おれはその間数度もスキットルを呷った。にしてもなんか熱くないか?制汗剤が濡れていない背かなに汗が湧き出た。

おっ、ようやく東映の三角マークがが映ったぞ。

………

無事尊死した。

70分後、おれはシアターチェアにもたれて、湧き上がる感情を抑えるため深呼吸していた。なんてムービーなんだ。ここで素直に感想を垂れ流したいが、適切なことばが見つからない、僕は昔から素直になることがヘタな子だった。幸いこちらの先輩尊死者が全てを代弁してくれた。

シャツが汗で濡れている。流石にこの格好のまま退場ですると恥ずかしいので、熱いけどジャケットを着て外に出た。ちょうどいい涼しさだ。駅前の広場で、例の観覧車が見えた。さっき激戦が繰り広げた場所だ。そいえばおれが書いたプリキュアファン小説である『ふたりはPre-cure』の冒頭は桜木町にあったし、おれはここの映画館で映画プリキュアを観た。トリプルシンクロにティ、大いなる何かに導かれた感覚すらある。混沌より新しいスープが抽出され、おれの中かき混ぜられて、形成していく。

「帰ったぞ。今日の夕食は蕎麦でいいか?」「いいよ。今出かける?」「ああ」「じゃ行こうか」

近くの蕎麦屋で食事を済ませ、ホテルに戻ったおれはすぐさまnoteでタイプ作業を始めた。映画プリキュアの心地よい刺激が創作欲を促す。いいぞ。完成だ。

対人用ミラクルライトは結構気に入った。このネタはこれからも使い続けるだろ。今日はこれでおしまい。酒飲んでくる。

【DAY5に続く】

おまけ:居酒屋にて

おれ:すいませーん、生中と、サン↓マ→の刺し身をください。

店員:えっと、生中と、サン↑マ↑の刺し身ですね?

おれ:(アクセント間違ったか)はいそうです。

店員:かしこまりました。それと英語のメニューがありますがお出ししましょうか?

おれ:いいえ、結構です。英語だともっとわかりませんので。

美味しかった。


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