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長期在庫とは「凍結された資金」

倉庫は、荷物を保管し、出荷する場所ですが、そこで働いている人たちは、長期在庫に関してあまり関心がありません。

なぜなら、保管している荷物は自分たちの会社の荷物ではなく、荷主の荷物の場合が多いからです。長期在庫が多くても、彼らには何かを言う立場がなく、たとえ意見を述べたとしても荷主側が必ずしもそれを受け入れ、対応してくれるとは限りません。

また、在庫数の管理は荷主側でも行われているため、本来は定期的に長期在庫の見直しや処分を行うべきです。

行う必要がある理由としては、保管スペースの確保が最も大きいですが、荷物の劣化防止も必要です。

賞味期限・消費期限が設定されている場合、長期在庫はほとんど存在しません。しかし、期限のない荷物の場合、時として半年前や、1年、2年前の荷物までが放置されていることがあります。

もし、その荷物が1ケース1万円で、50ケースが長期在庫だった場合、倉庫内には合計50万円分の商品が長期間保管されていることになります。

そして、長期在庫であるがゆえに、規格が合わなくなったり、格安の類似商品が出たことにより、正規の価格では売れなくなると、最終的には破棄するしかなく、事実上50万円を捨てることになります。

経営者の立場からすれば、これほどの無駄はあってはならないと考えるでしょう。

私が昔働いた倉庫では、このような事例が数多くありました。

例として、私が勤めていた企業の中には、負債54億円で破産申請をした会社があります。これを聞くと、売上がなかったのかと思われがちですが、実際には破産申請する年の6月期にも、約47億6200万円の年間売上高を記録していました。

では、なぜ倒産したのか?

簡単に言うと、商品を作っても売れず、在庫が減らず、運転資金が足りなくなり、銀行の融資に頼るという負のスパイラルに陥っていたからです。

在庫が減らないというのが、とても重要で在庫が減らないという事は、会社の資金を使って商品に変えても、その商品がお金に変わることなく倉庫内に眠っているのです。

なので、会社に商品としての資金がずっと留まっていることになるので、会社が運転資金として使える資金がどんどん減っていくのです。

倉庫で働いていると、長期在庫や預かり在庫がどれほどあるかを実物を見ながら理解できます。特に、自社倉庫ではなく他社の倉庫で保管管理をしてもらっている場合、毎月の経費が相当な額になります。

特に預かり在庫の場合、顧客から保管料を受け取っていれば別ですが、営業が無理を言って注文を取ってきた場合、保管料を受け取れないことがほとんどです。

このように、長期在庫を抱えている企業や業界は多いのではないでしょうか。

多くの場合、在庫を借金や資産という認識がなく、「いつか売れるだろう」「あっても無駄にはならない」と軽く考えています。

商品単価が100円の場合、100個あっても1万円ですが、1000円の場合は100個で10万円です。

その10万円が事務所内に1年間眠っていたら、どう感じるでしょうか?

そして、その商品が大きくて畳一畳分のスペースを取っていたらどうでしょうか?

少しでも事務所内のスペースを有効活用したい従業員にとって、このような無駄なスペースはなくしてほしいと考えるでしょう。

経営者としては、10万円も事務所内に眠らせていることに怒りを感じるでしょう。

そして、商品が使えなくなって破棄するしかなくなった場合、経営者はどう感じるでしょうか?

このように、無駄に在庫が多いにもかかわらず、在庫の多さを他人事として捉え、「邪魔だけどいつか使う」、「売れるからしょうがない」と考える職場が存在することを友人から聞きました。

在庫に無関心というのは、在庫は会社のものであるため、従業員は在庫が多くても邪魔だと感じても、自分のお金が放置されているわけではないため、大きな関心を持たないと考えます。

では、他人事ではなく、自分事として捉えてもらうにはどうすればいいのでしょうか?

例えば、物販の売り上げがさほど多くなかった場合、その物販の利益を全て従業員に還元すると言う方法もあるのではないかと考えます。

還元した金額は、従業員たちのお茶会や懇親会の費用に当ててもらったり、社内の日々のお菓子やお茶代に当てるのも一つの還元の仕方ではないかと考えます。

還元する金額は、毎月、または年1回、半年に1回の棚卸しで、在庫数を総額に換算して、その総額から売り上げから引いた額を還元するのは、どうでしょうか?

例えば、在庫の総額が90,000円で、仮に売上がその半分の45,000円だった場合。

この売り上げ45,000円を従業員へ年1回の大きな還元と月々の小額還元の二つのシナリオを考えてみましょう。

年1回の還元の方法の場合、この45,000円を全額使用して従業員の懇親会を開催することが出来ます。

この懇親会は、従業員間のコミュニケーションを促進し、職場の結束を強化する絶好の機会となります。

もう1つの還元方法として、月々の小額還元としては、45,000円を12ヶ月で分けて、毎月約3,750円を社内のお菓子やお茶代に利用することが出来ます。

これにより、従業員が日々の仕事の中で少しでもリラックスできるような環境にして、働きやすい職場環境を作ることができます。

こうすることによって、物販を販売している従業員も在庫数に興味関心を持つのではなく、自分たちに還元されされる金額に興味を持つと思います。

そして、在庫数が多いということは、還元される金額が減ることになるので、少しでも在庫数を減らしたいと言う意識が生まれるのではないかと思うのです。

簡単に言えば、在庫管理担当者を明確にして、しっかりと在庫管理を行い、その在庫の価値を金額として認識させるのです。

当然ながら、在庫管理担当者のみがこの認識を持っていても意味がありません。

社内で共有する必要があります。

もし、100万円分の長期在庫があると毎月報告されれば、嫌でも対応を考えざるを得なくなるでしょう。

どうでしょう?

一度、長期在庫の価値と保管料・保管スペースを確認してみてはいかがでしょうか?

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