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個人ゲーム開発のテストプレイどうする問題

本校は「ゲームにかかわる人が自由な記事を作る Advent Calendar 2023」12月5日の記事です

個人ゲーム開発者の皆さんこんにちは!テストプレイ後よく胃腸炎になって寝込んだりしがちな開発者こと私です!

自作ゲームをよりよくしようとちからを入れるのも結構ですが、開発や進捗、まして生活や健康にまで支障があっては本末転倒です。

あーこれ私のことですね! いや私以外にもそういう開発者さん割といるんじゃないかな🥲

今回は、主に業界経験がないor浅いので自作ゲームのテストプレイを誰に・どのように頼んだらいいか、あるいは今までにやってみたが巧くいかずどうしたらいいか悩む個人開発者さんに向けて、テストプレイのコツや私が意識しているポイントをまとめてみました。

なお「テストプレイ」を「デバッグ」と呼ぶ層もあるみたいですが、本来の「デバッグ」の意味は「バグを直すこと」ですので、正確には誤用かと思われます


テストプレイで「つら歴史」を回避

そもそもテストプレイを誰かに頼むのが必要か? という点について、個人開発なんだから個人の好きにやればいいじゃないとは私も思います。ですが、デジタルタトゥー的なものは残念ながらゲーム開発にもあるので注意が必要です。

というのも「ストアレビュー」で、「以前あったバグが最新版では直ってるのに、レビューだけ読むとバグがあるように見えてしまう」ケースを目にします。仮にこれを「黒歴史」ならぬ「つら歴史」としましょう。「プレイヤーにレビューを修正する義務はなく、かつ開発者に(誹謗中傷や差別的な内容でない限り)レビューを消す権利はない」場合往々にして起こり、大抵のストアはこの仕組みになっているので開発史に刻まれがちです。

開発者さんで「バグ報告をレビューに書かないで」「DMかメールで問い合わせて」と呼びかけたりされている方も見かけますが、完全な周知は難しいですよね。

事前対策として私が思いつくのは「クローズドテストを実施する」です。

例えば情報公開しない前提でdiscrodやメールを介して特定の人にテストをお願いし、不特定多数が遊ぶ前に表立ったバグを洗い出せれば「つら歴史化」をある程度回避することができるはずです。

私は業界経験のない個人開発勢なのですが、一般的なゲームの開発では以下のような段階を経るんですね。

プロトタイプ、αβ、マスターアップ直前など、全てにおいてクローズドテストを行うのは困難を極めるかと思いますが、特に「レビューが残るストアに置く」前提で作成するなら、1回でもいいからクローズドテストをスケジュールに入れておくのを推奨します。

また、開発段階の展示イベント出展は「ハーフクローズド」であると言え、おすすめ手段の一つです。

テストプレイ前提でふだんから活動する

とはいえクローズドテストで人を集めるのはぼっち……無頼派開発者の私にとって難易度が高い。

「ゲームを遊んでる知り合い」イコール「テストプレイお願いできる人」かというとそうでもなく、ターゲットではない、スケジュール合わない、などの理由で頼めないこともあります。

もしあなたも無頼派なら、いざというとき困らないために
-オンラインコミュニティに参加しておく
-たまに交流会とかに顔出す
-Twitterとかでそれっぽい人をフォローしておく

……など、普段から横のつながりを作っておくのをおすすめします。人を集めるのは難しいものですが、ゲーム開発はたいてい長期に渡るものですから、人探しチャンスをうかがいながら進めるのが良いかも知れません。

いきなり重ためのやつを頼まない

自分は顔見知りに1時間ほどのテストプレイを頼んだところボロカス言われて、以降一切連絡を取らなくなりました。「顔見知り」でも気まずくなるのに、これが親しい友人であったなら目も当てられません。

これを回避する方法として「ちょっとだけ頼んでみる」があります。例えば1時間くらい遊べるゲームが出来ていても、最初の15分くらいだけ時間を切って遊んで感想をもらえば、テストプレイにどんな反応をする人か分かります。

まずは短時間テストプレイを依頼し、相性がよさそうな人に引き続き長時間遊んでもらうようにすれば、ちょっと面倒ですが自衛になります。

意見を聞くのではなく感想を引き出し分析

テストプレイ後アンケートを設置するのは一般的かと思いますし、私もそうすることがあります。

しかし以前、リサーチ専門っぽい方から「時間を置いて、かつテキストに打つ行為ですでに本音ではなくなっている可能性が高い」と指摘されました。

確かに。と思った私は「テストプレイの間、背後に立ってプレイの様子をガン見する」or「録画してもらって後で見る」ことにしました。このふたつならアンケートよりダイレクトに「行動」を見ることができます。

テストプレイのフィードバックイメージとして「言葉」を聞くより先に「行動」を分析する、この方法なら、たとえノベルゲームであっても「今なんで読み進めるの時間かかったんだろう?」「選択肢でカーソルが迷ってる」などがわかります。

プレイの様子を見て「あのときなんで◯◯だったの?」と聞くと「意見」ではなく「感想」を聞き出しやすいです。例えば聞いてみた結果、答えが

「どっちでもいいかなーと思って」

……なら、そもそもゲーム自体が面白くなかったのだと思います。
逆に、

「下の答えだとキャラが死んじゃうと思って」

……なら、ゲームを楽しんでくれているとわかります。

自分の目的にあったテスターを探す

テスターを探す目的は「ゲームをより良くしたいから」だとして、その「より良くしたい」の中身はなんでしょうか。これは各開発者によって、また開発時期によって異なるはずです。それぞれに合った人を募集するのがベストでしょう。

例えば「バグを見つけたい」なら同ジャンル・同プラットフォームのゲームをよく遊んでる人を。「操作方法が分かりやすいか確かめたい」なら初心者を。「最近やる気がないので元気を出したい」なら、励ましてくれそうな理解者やファンをテスターに、といった具合です。

そんなに都合良く見つかるか? かく言う私も孤高の開発者なので、先述のように普段からコミュニティなどに参加するよう心がけています。

無作為にSNSで募集するにしても、漫然とテストプレイヤー募集! と呼びかけるのではなく、上記のように目的をはっきりさせ「○○に詳しい人」「◯◯を遊んだことがない人」といったふうに呼びかければミスマッチは減らせるはずです。

知り合いに頼むor知らない人に頼む?

たまに「友人、知人、開発者の意見は参考にならない」といった意見をツイッターなどで見かけますが、人と性格と関係性によります。

例えば「歳上でキレやすい強面(怖い)」「幼稚園児(かわいい)」「小島秀夫さん(大御所)」開発者を相手にズケズケ意見を言えるテスターは少ないでしょう。ちなみに私はどれにも当てはまらないし、見た目が弱そうなので言いたいことを言われがちです。

以前は私も「友人知人だと気を遣われるのでは?」と思っていました。そこで親しくない人に頼んだところ「テスター色々言う」「こちらが謝る」「さらにテスター色々言う」の最悪ループに陥ったことがありました。

一つの目安として「バグやミスを指摘されたとき謝る・申し訳ないと感じてしまう」タイプの開発者は高確率でテスターを図に乗……優位に立たせてしまうため、付き合いが長い人優先で頼むのを推奨します。私は「なんで悪いことしてないのに謝るの?」と同僚から言われるまで気づきませんでした。

この経験から、テストはまず同僚やバイトさん、親しい友人など「付き合いが長い人」に頼むようにしました。特に同僚は長い付き合いなので無遠慮に、しかし言葉をある程度選んで指摘してくれるし、私は「嫌」「今からは無理」「誰がやる思てんねん」などと返せるので助かっています。

ちなみに……「テストプレイお願いしたい」と話を持ちかけた時、返事が

「いいですよ」

ではなく

「いいんですか?」
「私にできるかな」
「やってみたいです」

……みたいな人は、私の経験上、一般顧客に近いプレイヤーでプラス寄りの意見をくれる可能性が高いです。あと大体良い人です。

こういう人には頼まない方がいいかも

以下、あくまで私の経験した範囲で思ったことですのでご参考までにご覧ください。

ターゲットからあまりにも外れている人

同じアクションゲームでも「超高難易度死にゲー」と「全年齢対象ゲーム」ではターゲットが異なります。しかし相手がゲームに詳しくない場合「自分はターゲット外である」という認識まで持てる人は少ないので、依頼側が配慮する必要があるでしょう。

ゲームを開発したことがあるが完成・公開したことのない人

この種の人たちは完成しない恐怖、公開後の恐怖を知らない「僕は新世界の神となる」状態であり、自分ならもっとこうするのになぜあなたはやらないのか? というスタンスで、理想ばかり強く言う傾向があります。

開発者の場合、「こうすればいいのに」と「たられば」を言う人ではなく「自分はこうしたら、こんな結果だった」と「経験」を言う方の意見は参考になることが多いです。

希望を聞いてもらえない人

ゲームはどう遊ぼうが自由なのですが、買って遊ぶのが本人の意思であるのと違い、テストプレイには作った側が果たしたい目的があります。まったく希望を聞いてもらえないと、テストプレイ会をやる意味はほぼないでしょう。

以前、デバッガー出身者にテストプレイを頼んだことがあります。「デバッグではなくテストプレイです。普通に遊んでみてください」とお願いしたのですが、1〜2分に一回、手を止めて「ここはおかしくないか」と、次の台詞を読めば分かることまで逐一聞かれ、その度に長々説明する謎の会になったことがあります。普通に遊べば30分足らずのゲームで3時間くらい?かかり、私は疲れ、成果はありませんでした。

追記:さすがに私も何も言わなかったわけではなく、例えばこちらの希望を伝えたり、都度質問するのはやめてほしいと頼んでも基本スルーされました。記憶する限り「わかりました」という返事も一切なかったので「自分のやりたいようにする」スタンスの人だったのだろうと思います

以上が私の考える「個人開発のテストプレイを頼まない方がいい人物像」です。以上のことから、逆に考えると「こういう人に頼むのが良さそう」な傾向が見えてきます。

-ゲームを完成・公開した経験がある
-ターゲットに近い要素を持っている
-ある程度希望を聞いてくれる

アドバイスをどこまで取り入れるか

以前、とあるパズルゲームのテストプレイを知り合いに頼んだところ「パズルゲームだから、ルール説明のスクショか動画あった方がいいんじゃないでしょうか」と指摘されました。クソッ誰が作ると思ってんだよ! と愚痴を言いつつ、「考えてみりゃ正論だし、あったほうがいいな」と納得しました。実際、私には動画や操作説明スクショを多少作れる技術があり、知人はそれをよく知った上で言ったのでしょう。

色々な方に色々なテストプレイをお願いしてみた経験上、私のように「言われたことがつらくて眠れなくなり胃腸炎になる」ようなアドバイスは苦すぎて良薬と言えないのですが、賢臣のアドバイスは大体ちょっとだけ苦いことが多いです。

ではそうじゃない人のアドバイスは役に立たないか? というとそんなことはありませんが、大切なのは「それはあなたのゲームである」ということです。言われた意見で変更を加えた結果、コンセプトが迷子になったり面白さを妨げたりするものになった場合、悪く言われるのはあなたであり、意見を言ってきた人はなんの責任も負いません。自分にメリットがあるのか、労力に見合う変更なのかを考えて取り入れるのをおすすめします。

開発を継続できる方法を優先する

私は気合を入れすぎて心身を壊してしまいゲームはお蔵入りになったので、個人的には、そこまでちゃんとテストプレイやらなくてもいいんじゃないかなーと思っています。

なんか「そんなことくらいで頓挫するなら遅かれ早かれダメになるのではないか」みたいなこと言ってくる人もいるかも知れませんけど、「買って遊んだお客さんに言われる『クソゲー』」と「協力をお願いして(何なら謝礼をこちらが払って)言われる『クソゲー』」は違います

自分も開発者なので、かなり作る側の気持ちに寄っていることもあり、世の中にゲームが出ることは応援したいし尊重したいです。

どんなに厳しいことも面白くするためには耐える……! みたいな考えはゴリゴリの商用目的ならありかも知れませんが、趣味で楽しく個人開発されている方なら、無理せず「自分にやさしく、楽しく」を優先されてもいいんじゃないでしょうか。

本記事、「胃腸炎になる」「続けられなくなっては本末転倒」といった内容で「ひどいことばかりだ」という印象操作になったかも知れませんが、そろそろ回数も重ねて勝手もわかるようになったので、自分がテストプレイで失敗することはほぼなくなりました。

一方で、最近開発を始めて割と気軽に公開やテスター募集をされている方を見かけて、何事も経験とはいえ危険を回避できるならしてほしい……!と老婆心で書いた記事でした。皆様の開発の一助になれば幸いです。

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