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男性が男性を推す理由~特権かマイノリティか~

世の中では“草食系男子”や“ジェンダーレス男子”、“イクメン”といった言葉によって新しい価値観や、多くの人には知られていなかった存在を可視化することに成功してきました。

今回、紹介したいのは男性アイドルを推す男性ファンの存在です。

同性を応援するオタクは一定数存在しますが、何故か女性アイドルを応援する女性よりも、男性アイドルを応援する男性のほうが少ない傾向があります。

参考までに。
超特急が2020年1月18日(土)に行った男性限定ライブ「BULLET TRAIN BOYS GIG Vol.06」の会場新宿BLAZEのキャパは800人に対し、直前に行われたライブ「BULLET TRAIN ARENA TOUR 2019-2020Revolución viva~Shine Bright New Year~」は国立代々木競技場 第一体育館で1万人を優に超えるキャパでした。

最近だと、「アイドル好きアイドル」という肩書きの末吉9太郎さんが代表格でしょう。

池袋パルコで実施された『推し活しか勝たん』 キャンペーンのモデルにも就任されています。

そして、その「男性アイドルを推している男性」を推しているファンもいるという入り組んだ現象まで起きています。

今回は、なぜ男性が男性アイドルを推すのかについて、さまざまなメディアで発信してきた身であるぼくが記していきたいと思います。おそらく何かしらのネーミングをしたら、爆発的に注目を浴びる気もするんだよなぁ……と、予言も込めて。


「家族からの布教」というはじまりかた

先日、ヨシモトの芸人ながちさんと対談を行ったのですが、彼は4歳年上のお姉さんがSMAPを好きだったことが影響したそう。ぼくも姉を持つ弟だからわかるのですが、幼いときはチャンネルの主導権がないので、たしかに姉の選局によって受ける影響力って強いかもなと。

言われてみたら、よくお母様世代が小学生くらいの息子さんとライブに来ている様子も見かけます。高確率で母親と同じ推しを応援している気がしていて、親と違う感性で別の男を愛する姿ってあんまり見ないような。
一方で、高校生・大学生の息子や弟ともなると、一緒に来ている家族はあまり見かけなくなるので、やはり「男性アイドルを推す男性ファン」は年齢とともに(自我が芽生えるとともに?)卒業するものなのか。あの少年たちってその後、どういう進路を辿っているんだろう……。


「顔が似ている」というはじまりかた

何気なく投稿したTikTokのはずが「〇〇くんに似ている!」という形で今まで何人もの男性がバズってきました。「似ている」という形で起きるバズのおもしろいポイントは、既存の該当ファンが、同じ数の「似ていない」というコメントを付けることです。頑張って否定しても、おそらくTikTokのアルゴリズム上「コメントが多い=よい投稿」ということで、より多くオススメに載ってしまうと思います。そんな小さな火種も、3ヶ月経てば本人自ら「〇〇くん風メイク」をあげるようになったり、グッズを買うようになったり、どんどんアイドル系に投稿を寄せはじめていくのでおもしろいです。

ぼくもTikTokがない時代でしたが、「〇〇くんに似ている」という意見をきっかけに、学生時代に推し出した人がいました。同性特有の現象かもしれません。
もし自分が応援するグループのオタクを増やしたい方は、片っ端からTikTokerに「(推し)くんに似ています!」って送るといいのかもしれません。新しい手法。


男性ファンは顔よりもパフォーマンス重視?

もちろん、アイドルなので顔やパフォーマンスが好きでファンになる方もいます。ただ、なんとなーく男性ファンは「顔よりもパフォーマンスを重視している」という言説がアイドル側にも根付いているように感じることがあります。

例えば、特典会でも「今日の俺のパフォーマンスどうだった?」って聞かれることが多いので、あえて「顔しか見てないからわからない」と即答していた時期もありました。チェキ会で女性にはベタベタするアイドルでも、男性は“そういう営業”を求めていないと勝手に判断して、距離感を保ってくる方もいました。

だからなのか、男性のぼくにもおかまいなしにベタベタしてきて、真顔で「今日はキレイだね」と言ってくれた元推しには、だだハマりし、数ヶ月で30万円と大量の有給を溶かした話はまたいつか。

とはいえパフォーマンスを重視されている男性も一定数いるのだとは思います。ただ、ぼくだけの価値観で見てしまうと「パフォーマンスがしっかりしているグループだと男性も行きやすい/応援しやすい」的なところがあるのでは? と思います。たまごが先か、にわとりが先か。

男性・女性に限らず、アイドルを応援することに恥じらいがある人の中には「顔ではなくパフォーマンスが理由で好きなんです!」と「顔ではない」ということをやたら強く押し出したがる方もいます。好きな理由が顔でもいいじゃないか、とふと思います。(※ルッキズムの問題や、顔面を消費する暴力性についてはまたいつか書きます。)

サマソニ2022にて

ちょっと触れておきたいこと

一定数、同性が好きな男性もいることは触れておきます。この点に関しては、“触れてはいけないこと”みたいになっているっぽく、何かしらの配慮によってぼくもここ3年くらいは取材で「恋愛対象が男性か」を聞かれることはなくなりました。ちなみに、30代以上の方が男性アイドルを応援している場合は「ご結婚とかってされているんですか?」というワードで見極めようとする手法をこれまでに確認しています(笑)。

※男性が好きな男性ファンもいれば、彼女とくる男性ファンもいるので、すべての男性ファンが、男性アイドルを恋愛対象として見ているわけではありません。


男性ファンは特権かマイノリティか

界隈にもよりますが、実際にライブ会場にまで来る男性ファンはキャパの1割を切っていることが多いです。アリーナやドーム規模の会場でも男性を集めたら10~50人程度だと思います(自論)。よって、会場内の男性トイレには女性マークの紙が貼られ、女性トイレに変えられていることも。個人的な意見ですが、地下アイドル界隈が最も少なく、次にジャニーズ。K-POPが最も男性ファンを呼び込んでいる印象。

少ないということは、果たしてメリットなのかデメリットなのか。

ぼくの場合は身長が180cmにもなるため間違いなく目立ってしまうので、舞台でスタンディングオベーションが起きた際には膝を軽く折っています。
それでも、アイドルから見ても目立つからか、少数派だからなのかサインボールなどを投げてくれる方が多いのも事実です。これまでもSnow Manの岩本照さんや、7ORDER(当時はLove-tune)の森田美勇人さん、滝沢翼(タッキー&翼)さんが手渡しで直接くれました。

このとき、自分がもらえる理由は「男性だから」であって、それ以上でもそれ以下でもないでしょう。それほどまでに「男性」という属性が優遇される現実があるため、ぼくが横に着席した瞬間に「終わった~」と言ってくる方もいましたし、サインボールほしさに男性と一緒に入られる方も一部います。

KCON2022にて

“茶色い声援”という表現への違和感

男性の歓声は響きやすい?(通りやすい?)ため、ライブ中にアイドル側にフューチャーされることがあります。多くは“イジりの対象”としてなので、その1人とだけコールレスポンスをしだしたり、会場内で笑いが起きたりします。これが快感になっている男性ファンも一定数存在します。

男性の声が響き渡るさまは黄色い声援と対比してか、アイドルから「茶色い声援」と揶揄されることも。男性ファン自身に「茶色い声」を出しているという認識があるのかはわかりませんが……勝手に「茶色」という判断を受けます。昔から男性を表す際によく使われてきた青色や赤色ではなく、「茶色」を選択することにはどんな背景や思考があるのか、考える必要がありそうですね(何が)。


男性ファンのためにファンネームを変更する配慮も

最近は、ファンダムに名前をつけるグループが多く、BTSが「ARMY」と呼ぶことは有名でしょう。Sexy Zoneは「セクシーガール(Sexy Girl)」「セクガル」から「セクラバ(Sexy Lovers)」に変えました。未だに女性しか含有しないようなファンネームを採用するグループはあるので、今後も着目したいです。

ただ、歌詞に関しては恋愛ソングの多くが男女の関係を描いています。歌詞に出てくる「男性をアイドル」に、「女性はファン」に見立てる構図も多いですよね。以前入った地下アイドルは「アイドルを王様」、「ファンをお姫様」と見立てるコンセプトだったので、歌詞に1ミリも共感できず、ぼくは城の壁という配役を全うする気持ちで見ていました。

ただ、ぼくが好きなKinKi Kidsさんの「愛のかたまり」をはじめとし、女性目線で歌うパターンも一部存在します。

心配性すぎなあなたは電車に乗せるのを嫌がる
まるでかよわい女の子みたいでなんだか嬉しいの
(中略)
子供みたいにあまえる顔も 急に男らしくなる顔も
あたしにはすべてが宝物 幾度となく見させて
KinKi Kids「愛のかたまり」より

おわりに

アイドルもビジネなので、そんなボリュームの小さい客なんて大切にしないで、大勢の女性に好かれることを選んだらいいんでしょうけど、たまに配慮してくれるアイドルがいるばっかりに、この期待を捨て去ることができないでいます。

好きになる理由やきっかけは人それぞれですが、すべての男性ファンが快く応援できて、好きなものを好きと言える世界になればうれしいです。どんどんオタ活・推し活の魅力が広まるよう、ぼくも引き続き発信していきますね。

それではみなさんも、推しと推しあわせに。

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