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『葉隠』大雨の感

福岡市の大型商業施設「キャナルシティ―博多」では、自然石の床から水が飛び出してくるエリアがあり、子供たちが濡れながら大はしゃぎ。例外はあるでしょうが、子供は水が好きですよね。

自分も小学生の頃は濡れるのが大好物。突然の夕立などで傘がない下校時には、ちょっと興奮しながら家路へ。道路も整備が悪い時代でしたので、水たまりがあちこちにできていて、そこをジャブジャブと靴を濡らしながら歩くのが好きでした。

「武士道と云ふは死ぬ事と見付けたり」の文言で有名な書『葉隠』。十代の頃から愛読していますが、その中に「大雨の感」という一節があります。

大雨の感と云う事あり。途中にて俄雨にあひて、濡れじとて道を急ぎ走り、軒下などを通りても、濡るる事は替らざるなり。初めより思ひはまりて濡るる時、心に苦しみなし、濡るる事は同じ。これ萬づにわたる心得なり。

いざという時のための、日頃の覚悟を示したこの話。大人になっても多少の雨だと傘をさなない外国人のような習慣が身についてしまいました。突然の雨に、皆が慌てふためく中、ちょっと濡れてみるのも案外気持ちがいいものです。

なお、三島由紀夫も『葉隠入門』という本を出しています。武士道だけではない、ビジネスマンにも役立つような側面も解説していて、わかりやすいのでお勧めです。最後に、序文に書かれた三島の名文で締めます。

「葉隠」こそは、わたしの文学の母胎であり、永遠の活力の供給源であるともいえるのである。すなわち、その容赦ない鞭により、叱咤により、罵倒により、氷のような美しさによって。


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