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ひきこもりの兄弟の話

「兄弟は何人ですか?」という質問に私はドキドキしながら「弟がいます。」と答える。
すると、相手は弟は一人だと思い、その場をやり過ごすことができる。
そんな日々が何年も続いている。

私には、弟は二人いる。それを堂々と言えないのはすぐ下の弟がひきこもり状態にあるからだ。

きっかけは学生時代からの不登校だった。最初のころは、何の衒いもなく弟がいることも、弟が不登校気味であることもひきこもりがちであることも言えていた。しかし、一般的に多くの人が学生時代を終えて社会に出るころになってくる年齢の20代半ば頃になるとそのことを言えなくなっている自分がいた。

弟の存在を恥じている、隠したい、という感情からではない。素直に弟の存在を言い、職業や居住地や未婚か既婚かなど話し今の状態を知られた場合の相手の反応に私自身が傷ついてきたからだ。だから黙っているほうがいいと思ってしまう。
もっとも、2回目の成人式を迎えようとしている年代の私の弟の個人的な情報を知りたいという人はいないのかもしれないが、それでもなお弟のことを口に出せないのは今までの経験がよっぽど心にこたえているのかもしれない。

”きょうだい児”という言葉がある。障害を持った子のきょうだいを表す言葉だ。家庭内に障害をもった兄弟がいることで、いろいろな悩みを抱えてきたとされ、最近になり注目を集め支援が必要だという声があがっている。ひきこもりの兄弟姉妹に対しそれに該当する言葉はない。

だけれども、ひきこもりの兄弟はそれなりに悩み苦しんでいるのだ。少なくとも、私は複雑な感情がある。

あくまでもある一人のひきこもりの弟をもった姉としての感情を自分のためにも書き綴っておきたい。

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