冬の旅
監督・脚本:アニエス・ヴァルダ
1985年/フランス
出演:サンドリーヌ・ボネール
すごい映画でした。
若く美しい女性モネは、なぜ放浪を選んだのか。
あたたかいベットとおいしい食べ物ときれいな服を維持するために、私は何かを捨てているのだろうか。家族や恋人、友人、仕事を維持するために、私は何かをすり減らしているのだろうか、と考える。
彼女は「楽して生きたい」と言う。
ある人は彼女を「現実逃避」だと言う。ある人は彼女を恐れ関わりたくないと言う。ある人は彼女をうらやましいと言う。ある人はもっと力になってあげたかったと言う。
彼女が怠惰に見えたり、かわいそうに見えたりするが、他人からどう映るのかは意味がないことだ。
しかしこの映画は他人の目を通して語られている。「他人の目」が必要な要素となっている。
他人が彼女を語れば語るほど、彼女の根源的な魂はもっと遠くにあるような気がしてくる。
我々が捨てた「何か」を彼女は捨てたくなかったのだろうか。
我々がすり減らしている「何か」を彼女は守りたかったのだろうか。
それを「自由」というにはあまりに言葉足らずだ。彼女すら気付いていないかもしれない、根源的な「何か」。
それを言葉にして直視してしまうことを私は望んでいない。
風呂に入らず服は洗わず悪臭を放ち、ブーツが壊れても新調せず履き続けるモナ。荷物が無くなってもどこ吹く風のモナ。
彼女は、飲食とタバコ以外に自分、何かを足して行くことをしていない。
そして、結局彼女は野垂れ死んでしまった。
私たちは野垂れ死なないように生きているのだろうか。
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