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ある日ふと始まった蛇との物語。ひとつひとつが別々に、やがて連なった物語へ。突然はじまってあるとき収束した無意識からのギフトたち。
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2021年7月の記事一覧

B面

さあ、よく見て。 蛇が言った。真っ直ぐに目を見つめてくる。私達はもうどちらも瞬きをしない…

akmagazine
3年前
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A面

さあ、よく見て。 目を逸らさないで。よく見て。何も怖いことはないから。 白い蛇が突然私の…

akmagazine
3年前
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世界が私を裏切った。 目覚めて先ず、そう思った。 痛みは消えていた。 気を失うその瞬間ま…

akmagazine
3年前
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発動

蛇は相変わらずその場に留まったままだった。 「言葉がわからんか。仕方のないことだ」 間断…

akmagazine
3年前
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闖入者

痛い。なんだこの焼けるような感覚は。 ここは、どこだ。 周りを見渡そうと右の手をついて身…

akmagazine
3年前
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落胆

じゃあね、と言って彼女が樫の木の扉を閉めたのをジリジリとした思いで見送った。 信じられな…

akmagazine
3年前
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訓戒

キミノコエガ キコエル ウタッテイル ボクノ ハイゴデ トオイトオイ アトニシテキタ ハイゴデ ウタッテイルノガ キコエル 見誤らないで。注意をしておくわ。決して見誤らないで。扉がどこにあるのか、どの扉を開けるべきなのか。ここからは要注意よ。行き先を間違えないように。 蛇が耳元で囁いた。 でも、そんなことはとうに分かっている。むしろ、蛇が幻惑することさえあるかもしれないと、嘗て抱いたことのない警戒を育てはじめているのだから。 警戒、不信、それらはこれまで私の手元に

辺境

……いいにおい。 目を閉じて、ゆっくりと、鼻腔を通して感じるその匂いを胸まで吸いこむ。香…

akmagazine
3年前
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