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私のオーディオ沼               ~ワンランク上のイヤホン・ヘッドホン選びをキミへ~


1. はじめに

 万年筆からスニーカー、服、香水、スポーツの用具まで、ありとあらゆる界隈にのめり込んできた私はある日、新世界を発見した。それがオーディオ沼である。きっかけは今までなんとなく使っていたAirPods Proが壊れたことで、「また同じAirPods Proを買うのはつまらないし、意外といい値段するし、どうせなら自分好みのものが欲しい」という理由から秋葉原にあるeイヤホンに赴いた。

 最初は無線のイヤホン・ヘッドホンを片っ端から聴いていった。すると、同じ音楽を同じ音源から再生しているのに、聴こえ方に違いがあることに気づいた。具体的には、低音が強く出るものやボーカルが美しいもの、解像度が高いものなどである。この違いに気づいてしまった私はもう自分好みの愛機を探す旅に出発していた。

 それからは、暇さえあればeイヤホンに赴いた。それは、色々なイヤホン・ヘッドホンを聴いて違いを楽しむという目的と、自分好みの愛機を探し出したいという目的からであった。

 無線のイヤホン、ヘッドホンをひと通り聴いたが、自分好みの愛機が見つからず、ある日、私は有線イヤホンのコーナーに赴いた。有線イヤホンも、片っ端から聴いていったとき、後の「自分好みの愛機」に出会う。それがMEZE AUDIOのRAI PENTAだ。音質は、中高域は伸びやかで綺麗で、低音には沈み込み(深み)がある。音圧や迫力は、聴き疲れするほどは無く、かといって物足りなさは感じない量で、個人的にちょうど良く、特に女性ボーカルが艶やかな、最高のリスニングイヤホンである。

 

2.イヤホンかヘッドホンか

 この問いの最終的な答えは人それぞれ好みの問題なのであるが、私はイヤホンを選んだ。理由は「得意なジャンル」である。ヘッドホンは構造上、重低音や楽器の演奏、空間の広がりをより感じられる傾向にあるため、クラシック音楽など、楽器全体の音を楽しみたい人向きである。それに対してイヤホンは中~高音の出力に優れている物が多い傾向にあり、楽器の音よりボーカルの声を楽しみたい人、細かい音の表現や、高音域の解像度が欲しい人向きである。私の場合、J-POPやアニソンなど歌詞のある曲を聴くことが多く、細かい音や高音域の解像度が欲しかったため、イヤホンを選んだ。


3.「音質」とは何か

 オーディオを比較する際、「音質」を中心に議論されることが多い。しかし、「音質」とは何であろうか?「音質」という言葉が使われるとき、使う人や状況により、その意味やニュアンスが変わる。ある場面では、再生音の聴こえ方が原音にどれだけ似ているかで音質が評価され、別の場面では聞く人の個人的な好みや価値判断によって音質が評価される。このように、聴く人によって求めている音が異なるため、「良い音質」は人それぞれ違うといえる。このことから、今、自分が求めている音を知り、自分にとって「良い音質」を見つけるということが、あるひとつのゴールといえる。


4.オーディオ知識

 ここでは、知っているようで意外と知らない、オーディオに関する知識を紹介する。

①   周波数特性

 周波数特性を何のために見るのかというと、その音響機器が出す、音の傾向(ドンシャリ、フラット、かまぼこ)を知るためというのが答えである。周波数特性とはその音響機器の性能(再生できる周波数範囲)を表す指標であり、どこまでの周波数範囲をどれくらいの大きさで再生できるかを表したものである。例えば、低い周波数の音を大きく出せれば、重低音で迫力のある音が聴け、高い周波数の音を大きく出せれば、澄んだ豊かな音が聴ける。

周波数特性の一例


②   音の大きさ(ラウドネス)

 人間の音の大きさの感じ方は周波数ごとに違う。例えば、同じ60dBの音であっても周波数が変われば音の大きさの感じ方が違うということだ。周波数特性を見ると、高い音と低い音が出にくい山型になっていることが多い。ということは、高い音と低い音は聞こえにくいといえる。このことから、音量を上げて再生すると高い音も低い音もよく聞こえるが、音量を下げていくと低い音や高い音はどんどん聞こえなくなっていくことがわかる。何が言いたいかというと、オーディオ機器を聴き比べする際に、いつも聞いているくらいの音量で聴かないと比較できないということである。

③   雑音

 音は波形で連続的であるため、録音された音を再生するときには必ず雑音は入ってしまう。

 音源にはアナログ音源とデジタル音源があるが、雑音・ノイズが少ないのはデジタル音源である。これから、アナログ音源とデジタル音源それぞれの雑音の原因を紹介する。

 アナログ音源、例えばレコードに雑音が入る原因は、レコードの歪みや傷、レコードに付着した不純物などがある。一方デジタル音源、例えばCDなどに雑音が入る原因のひとつは、量子化雑音と呼ばれるものである。

 デジタル音源は、下図のように音を時間ごとに0か1かで区切ったデータの集まりである。この区切る時間を短くし、区切る回数を増やしていくと、どんどんアナログ波形に近づいていく。しかし、どれだけ区切る回数を増やしたり、区切る時間を短くしたりしても、もとのアナログ波形とは完全に一致することはない。その一致しない部分を量子化雑音という。

 この量子化雑音を減らすためには、1秒のデータ量(ビット毎秒、kbps)を大きくしていく必要がある。この、1秒のデータ量が大きく、量子化雑音が少ないものが、皆さんも知っているであろう「ハイレゾ音源」である。

 以下に1秒のデータ量(kbps)の目安を挙げる。一般的なMP3音源、ファイルのビットレートは128kbps、大手の音楽配信や定額聞き放題サービス、例えばYouTube Music(最大256kbps)、Spotify (無料160kbps、有料320kbps)、CDとロスレス音源、例えば、Apple Music、Amazon Musicなどロスレス対応しているものが1,411.2kbps、ハイレゾ音源、例えば、Apple Music、Amazon Musicでハイレゾ対応している一部の曲では9,216kbpsとハイレゾ音源は、CDとロスレス音源の約6.5倍といかにデータ量が多いかがわかる。注意点は、再生環境、再生機器によって上限があることだ。

④   歪み

 周波数特性が平坦なものに信号を入力すれば音の歪みは生じないが、そのようなものは存在しない。周波数特性が平坦でないもの、例えば低音が強調され高音が抑制されるものに信号を入力すると低音が強調され高音が抑制されるため、もともとの音源と比べ、音に歪みが生じる。

 「歪み」と聞くと何か悪いもののような気がするが、むしろ音楽を楽しむための重要なものであると考える。もし、この世の中に周波数特性が平坦なものしか無く、イコライザー機能が無かったら、どんな音楽も、もともとの音源と同じように聴こえ、つまらないからである。同じ曲を同じ音源から聴いても、イヤホンを変えることで、違った味付けの曲に聴こえる理由のひとつがこの「歪み」である。今、この世に様々な種類の再生機器(イヤホンなど)が存在するのは、製作するメーカーや人の「思い」や「好み」など一種の「個性」がそれぞれにあるからだと考える。そういった意味では、音楽は芸術であるが、芸術である音楽を表現する再生機器も芸術のひとつといえるのではないだろうか。


5.音質を左右するもの

 音質を左右するものとしては、音源、プレーヤー、DAC、オーディオアンプ、ケーブル、スピーカー(イヤホン・ヘッドホン)、イヤピース(イヤーパッド)が挙げられる。この中で最も音質を左右するものは、耳に一番近い、スピーカー(イヤホン・ヘッドホン)であるため、まず最初は自分の好きなスピーカー、イヤホン、ヘッドホンを探すことをおすすめする。

①   音源

 音源にはデジタル音源とアナログ音源があり、解像度が高く、正確な音の表現はデジタル音源、深みや厚みのある温かみのある音の表現はアナログ音源が得意とするといった特徴がある。また、デジタル音源は、データのため、そのデータ量によって音質が変化する。基本的にはデータ量は多ければ多いほど良い音質だが、多すぎると聞き疲れしやすいというデメリットがある。

②   プレーヤー

 音楽を再生する機器は、PC、スマートフォン、デジタルオーディオプレーヤー(DAP)などがある。プレーヤーを変えると確かに音質が変化するため、自分好みのプレーヤーを見つけるのもまた楽しい。

 音楽を再生するソフト・アプリ(Windows Media Player, Amazon Music, iTunes, Apple Music)を変えることで音質が変化するため、様々なソフト・アプリを試していくのもまた楽しい。

 

③   DAC (Digital to Analog Converter)

 DACは、デジタル音源のデジタル信号をアナログ信号に変換する機器で、楽曲データの音質を最大限に引き出すこと、そしてノイズを低減するという役割がある。アナログ信号で入力しないと音が再生されないため、DACはデジタル音源を再生するには、欠かせないものである。DACを変えると、その性能(部品選定や基板設計など)が変わるため、音質が変化する。

 

④   オーディオアンプ

 オーディオアンプは、音量と音のバランスを調節する役割の機器である。具体的には、音量を調節すると、音源からの信号を大きくさせたり、小さくさせたりできる。また、音のバランスを調節すると、高音域の音を目立たせたり、低音域の音を目立たせたりできる。まとめると、オーディオアンプは、スピーカー(イヤホン・ヘッドホン)から出る音の性質は変えられないが、音量や音のバランスを変えることができるものである。

 

⑤   ケーブル

 無線ではなく、有線で聴く場合、そしてケーブルが着脱可能なものは、ケーブルを変えることで音質が変化する。音質のうち、ケーブルによって変えることができるものは、「低域・中域・高域の量、音場の広さ、解像度の高さ」がある。一般的に、ケーブルの素材という観点からは、「銅線は低域寄り、銀線は中高域寄り」といった特徴がある。

 

⑥   アンバランス接続とバランス接続

 無線ではなく、有線で聴く場合、そしてケーブルが着脱可能なものはバランス接続が可能だ。そもそも、有線には、アンバランス接続とバランス接続という2つの接続方式がある。一般的に、ほとんどがアンバランス接続だ。アンバランス接続は、L側とR側の信号を分けて送り出した信号が、戻る過程では同じ道を通って帰ってくる。 一方、バランス接続は、左右独立したチャンネルにそれぞれ音声信号が別々に流れる仕組みのため、 L側とR側の信号が混ざらない。実際に聴いてみて感じた違いとしては、バランス接続の方が音の左右がはっきりし、ひとつひとつの音が分離し、細かい音まで聴こえるように感じた。

 

⑦   スピーカー(イヤホン)

 前述のように、これが最も音質を左右するため、音の性質を変えたい場合は、スピーカー、イヤホン、ヘッドホンを変更することをおすすめする。

 音の性質が変わる原因として、筐体の材質も考えられるが、ここでは、ドライバーの種類をみていきたい。

1.  ダイナミック型

 音のレンジが広く、低域を出すのが得意。中高域が伸びにくい。低価格帯のイヤホンはダイナミック型を採用していることが多い。

2.  バランスド・アーマチュア型(以下BA型)

 高音域、中音域を出すのが得意で、音ひとつひとつの輪郭がハッキリとしている。低域を出すのは苦手。

3. ハイブリッド型

 ダイナミック型とBA型のドライバーユニットをどちらも搭載しているもので、低域を出すのが得意なダイナミック型と高音域、中音域の音を出すのが得意なBA型を組み合わせることで、バランスのいい音質。また、複数のドライバーを搭載しているため、音のまとまりを保つのが難しく、音の繋がりに違和感を感じやすい。

4.コンデンサー(静電)型

 歪みのないサウンドで原音に限りなく忠実な音。再生できる周波数帯域が広いが、特に高価。

 

⑧   イヤピース

 安価に音質を変化させたい場合はイヤピースを変えることをおすすめする。音質が変わる理由は「素材の違い、フィット感の違い、形の違い」が考えられる。

 主な素材は、シリコンとフォームがある。シリコンは、フォームタイプに比べて音はクリアに聴こえるが、遮音性が低いという特徴がある。一方、フォームは、遮音性が高く、低域の押し出しが強くなるが、中高域の音が減衰するという特徴がある。

 また、イヤピースには様々な形があるが、個人的に気に入っている「高さ」のあるイヤピースがある。これに変えると、物理的に音の鳴る位置が耳から遠くなるため、ヘッドホンのような広い音場になる。一方、迫力は減衰するがヘッドホンほど減衰しない。このように、「高さ」のあるイヤピースにすると、イヤホンとヘッドホンの良いところを両方実感できる。

 

6.聴き比べする際の注意点

 ここでは、聴き比べする際の注意点を2つ紹介する。

①   音量

「4.オーディオ知識 ②音の大きさ(ラウドネス)」で説明したとおり、聴き比べする際の音量は、感覚的にいつも聴いているくらいの音量で聴いてほしい。

 

②   体感音質

同じ試聴環境でも、その日の体調や気分によって「自分好みの音質」が変化する場合がある。どういうことかというと、もし、好きなイヤホンを見つけたとしても、それが1か月後には苦手なイヤホンになっている可能性がある。また、歳を重ねることで、好みの音質が変化する可能性も十分考えられる。そのため、オーディオ機器を選ぶ際には少なくとも3回、期間を開けて試聴して選ぶことをおすすめする。

 

7.今、私が好きな音質

 今まで、様々な有線イヤホンを聴いて、ようやく今、私が好きな音質を言語化できるようになったため、イヤホンの例を挙げながら、説明する。また、聴き比べする際は、聴きながら機種名とその好きな特徴や苦手な特徴をメモすることをおすすめする。

①  中高域の量が多く、こもりのない見通しの良いサウンド

 具体例を挙げると、MEZE AUDIO RAI PENTA、MOONDROP KATO、Unique Melody、Astell&Kern PATHFINDER、Flipeats Aurora、qdc WHITE TIGERのようにしっかりと中高域が聴こえるもの。

②  低音に沈み込み(深み)がある

 例えば、バスドラムのキックの音がリアルで、沈み込みや深みがあるもの。具体例を挙げると、Shure SE846、MotherAudio ME8にはそれが無かった。

③  解像度が高く、情報量が多い

 最低限、MOONDROP KATOほどの解像度は欲しい。

④  聴き疲れしない

 高域、低域が刺さらないもの。個人的にSONY IER-M9、Victor HA-FW10000は聴き疲れした。

⑤  音数の多い曲やサビでも音が分離して聴こえる

MOONDROP KATOではサビでの分離感が足りないように感じた。

⑥  ちょうどいい音圧(迫力)

 Unique Melody MEST、MOONDROP KATOは音圧(迫力)が足りないように感じた。

逆に、NOBLE AUDIO VIKING RAGNARは音圧(迫力)が強く、聴き疲れしやすかった。

⑦  低域、中域、高域がバランスよく全部聴こえる

 64 AUDIO U18 Tzar、EMPIRE EARS ODIN、Flipeats Auroraのように全帯域がバランスよく聴こえるもの。個人的にVictor HA-FW10000は低音が強く、中高域がつぶれているように感じた。

⑧  ボーカルは近めで、ボーカルと楽器の一体感がある

 個人的にVictor HA-FW10000はボーカルが遠く感じた。また、Victor HA-FW1500は、ボーカルと楽器の一体感が無かった。

⑨  音場が広い

 Astell&Kern PATHFINDERは全ての音が耳の近くで鳴っていて、音場が狭かった。

 

 上記9つの条件に当てはまる、個人的に好きなイヤホンは、MOONDROP KATO、final A8000、qdc WHITE TIGER、Flipeats Aurora、The Audio Prestige、MEZE AUDIO RAI PENTA、64 AUDIO U18 Tzar、EMPIRE EARS ODINである。

 

8.解像度の高いイヤホン5選

 基本的に解像度の高さは、価格に比例していくが、今まで、私が聴いたイヤホンのなかでも、特に解像度の高さに驚かされたものを紹介する。

①   final A8000(DD1)

一言で表すと、Simple is The Bestの最高峰。

 特徴としては、「ベリリウム振動板」という入力信号に敏感に反応し、入力が止まれば振動がすぐ止まり、振動板の隅々まで素早く振動が伝わる特性を持った振動版を採用していることである。これにより、音が無駄に残響したり、重なったりすることがなく、A8000でしか味わえない曇りのない澄んだ音が体験できる。音質について、中高域は伸びやかで見通しがよく、低域は量より質といった感じで、全体的にバランスが良く、どんな曲も本来の音源を忠実に高いレベルで再現してくれるオールラウンダー。

 

②   64 AUDIO U18 Tzar (BA18)

一言で表すと、情報量と表現力の最高峰。

 一般的に、多ドラは情報量が多いが、その中でもU18 Tzarは、トップクラスに情報量が多い。こんなにも情報量が多いのに、なぜか聴き疲れしないという優等生。音質について、高域、中域、低域は全体的にA8000と同様、バランスよく、特に中高域に艶がある。

 A8000より音圧(迫力)があり、音の密度があるため、A8000で迫力が足りないと感じた場合におすすめする。

 

③   EMPIRE EARS ODIN (DD2、BA5、ES4)

一言で表すと、空間表現の最高峰。

 音質は、バランスよく、迫力もあり、全体的にU18 Tzarと似ているが、U18 Tzarより中域、低域が目立ち、高域は少し控えめ。そのため、高域の突き抜けるような鳴り方が好み(Unique Melodyの高域が好み)の方には物足りないと思う。また、音場が広く、空間表現が素晴らしい。具体的には、音の位置について、上下左右はもちろん、奥行きまで感じとれ、楽器の位置までわかる。

 

④   SONY IER-M9 (BA5)

一言で表すと、解像度の最高峰。

 難点は解像度が高すぎて、聴き疲れしてしまうところ。音質は、全体的にバランスよく、余韻重視の音ではなく、分析的な音。

 

⑤   Noble Audio SPARTACUS(骨伝導2、BA4)

一言で表すと、深みある味わい。

 低域は深く滑らかで、どっしりと芯があり、中高域はシルキーかつスタイリッシュで繊細。音の傾向はドンシャリで、個人的には、中域が少し足りなかった。また、音圧(迫力)は十分すぎるほどある。

 

9.ボーカルが綺麗なイヤホン4選

①   The Audio Prestige (DD1、BA4、EST4)

一言で表すと、ボーカルの透明感ならこれ。

 全体的に角がなくまろやかでウォームな音。伸びやかで芯のある女性ボーカルとは特に相性が抜群で、ボーカルの透明感は随一。高域の伸びやかさは特に印象的で、思わずグッと引き込まれる魅力的なサウンド。低域の主張は強くないものの、タイトにしっかりと響く感じ。

 

②   qdc WHITE TIGER(BA6、EST2)

一言で表すと、ボーカルの明瞭感ならこれ。

 中高域がクッキリと浮かび上がる、非常に明瞭なサウンドが特徴。中高域は滑らかで、低域は量より質といった感じだが、個人的には十分な迫力を感じた。

 

③   MEZE AUDIO RAI PENTA(DD1、BA4)

一言で表すと、上品さと艶感ならこれ。

 中高域はブライトで伸びがあり、低域には迫力があり、バスドラムの表現が随一。唯一無二の美音を体験したいならこれ。どのジャンルの曲も上品に聴かせてくれる。私の愛機。

 

④   MADOO Typ821(プラナー1)

一言で表すと、まるで開放型ヘッドホン。

 低域は控えめで、解像度が高く深みの良い音を出しつつも、メインは中高域に譲っているような感じ。イヤホンとは思えないほどの伸びやかすぎる音が特徴。

 

10.個人的イチオシイヤホン

① Flipeats Aurora(DD2、BA6、ES2)

一言で表すと、抜けの良さと分離感ならこれ。

 中高域は抜けるように伸びやかで、本当にオーロラを見ているよう。そして、RAI PENTAよりも見通しが良い感じ。低域は中高域と比べると控えめだが、迫力は十分ある。全体的な音は、丁寧で艶のあるRAI PENTAと比べると、元気な音だと感じた。

 また、聴き慣れた曲でも、聴いたことのない音が聴こえたり、音数の多い曲やサビでも、全ての音が聴こえたりと、今まで体験したことのない音が聴ける。

 

② MEZE AUDIO RAI PENTA(DD1、BA4)

一言で表すと、上品さと艶感ならこれ。

 先ほど「ボーカルが綺麗なイヤホン」で紹介したが、RAI PENTAは、前に紹介したイヤホンのように解像度が特別高いわけでもなく、Flipeats Auroraのように特別音に分離感があるわけでもない。それでも私がイチオシする理由は、RAI PENTAが出す「音」にある。具体的には、RAI PENTAが出す全ての「音」に艶と上品さが感じられ、どんな曲も聴いていて「心地いい上品な曲」にアレンジしてくれる。


③ MOONDROP KATO(DD1)

一言で表すと、コスパの最高峰。

 中高域は明瞭で透明感があり、低域は沈み込むような魅力的な音。同じ価格帯のなかでも解像度は最高峰。コスパで考えるなら、これ以外は考えられないくらい、優等生。

 

11. おわりに

 これまで、オーディオ知識と、今私が好きな音質について紹介してきたが、お役に立てたであろうか。おそらく、オーディオ知識については理解できたと思うが、今自分自身が好きな音質について、うまく言語化するのは難しいと思う。好きな音質を言語化するには、①様々な種類のイヤホン・ヘッドホンを聴き、②その中から好きなものをいくつか見つけ、③それらの特徴や共通点を導き出す、という3段階を踏む必要がある。特に2段階目の「好きなものを見つける」ことが一番難しいため、好きなものを見つけるために聴き比べする際、何を聴き比べているのかについて4つポイントを紹介する。

①   低域・中域・高域の量のバランス

 例えば「中域・高域がメインで量が多いものが好き」「限りなくフラットが好き」「低域が多すぎるのは苦手」などといったように、自分の好きな音のバランスを見つけてほしい。

 

②   イヤホン・ヘッドホンが出す音そのもの

 例えば「このイヤホンの出す音の全てが好き」「このイヤホンの出す音の全てが苦手」といったように感じることがある。

 

③   解像度・音圧(迫力)

 解像度が低すぎる場合、臨場感や迫力に欠けているように感じ、反対に、解像度が高すぎる場合、聴き疲れしてしまうことがある。また、普段聴いているくらいのボリュームのときに、自分に合った音圧(迫力)のものを見つけてほしい。

 

④   音場・音の位置

 例えば、「ボーカルは近く、楽器は遠い」ものなどがある。さらに、ボーカルと楽器が同じ位置でも、全ての音が耳の近くで鳴るものや、反対に遠くで鳴るものなどがあるため、ボーカルの位置と楽器の位置の好きな組み合わせを見つけてほしい。また、両者の一体感も重要である。

 

 以上4つを意識しながら聴き比べをすると、自分の好きな音質を言語化できるようになるであろう。しかし、ここでゴールとはならないのがオーディオ沼である。なぜなら、上記4つを全て完璧に満たすイヤホン・ヘッドホンはほとんどないからである。とはいっても、自分の好みに一番近いイヤホン・ヘッドホンは、いくつかに絞れるであろう。

 イヤホン・ヘッドホンを決めた後は、より自分好みの理想の音を目指して、音源、プレーヤー、DAC、オーディオアンプ、ケーブル、イヤピース(イヤーパッド)を探す長い旅が待っている。これこそがオーディオ沼であり、今私が一番のめり込んでいるものである。

 


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