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無職日記#5 音楽を楽しめる。そんな当たり前のことが、今はすごく嬉しい。

久しぶりにピアノを弾いた。
楽器を弾いたり、歌を歌ったり、好きな曲を聴いたり。音楽を楽しむのにもエネルギーが必要で、元気がないと難しいことなんだと知ったのは、大学生の頃にメンタル不調になった時だった。
今年5月に適応障害と診断され、休職していた間も例外ではなく、音楽を楽しむことはなかなか難しかった。
音楽が流れてきても耳を素通りして、頭に入ってこない。頭の中が将来への不安や生きていくことへの絶望でいっぱいで、音楽を受け入れるキャパシティがなかった。大好きだった曲も雑音に感じられ、うるさく感じる時期もあった。

最近は、音楽を楽しめるようになった。お風呂で歌ったり、曲に合わせて体を動かしたり。ピアノも弾けるようになった。元気な時は当たり前だと思っていたことだけど、今は少しずつできることが増えてきて嬉しい。焦らず、じっくり休むことの大切さを実感する。

ピアノを弾く時は、好きな曲を思いのままに。J-POPや洋楽、映画のサントラなど。言葉では表せない感情や感覚をピアノという楽器を通して間接的に表現することで、一種のストレス発散になっているのだろう。弾いた後はすっきりとしている。

ピアノを始めたのは、姉の影響だった。弾いている姿が格好良くて憧れて、自分も習いたいと母にお願いした。
4歳くらいから近所のピアノ教室へ週一度通うようになった。同い年くらいの子たちがいるグループレッスンもあれば、個人レッスンもあった。年に1,2回発表会や試験があって、緊張しいの私は手も足もブルブル震えながらピアノを弾いていた。

レッスンの先生がなかなかに厳しくて、指がつかえたりミスをするとよく怒られていた。楽しくない、と思うようになりだんだんピアノのレッスンが苦痛になっていった。
仮病を使って休んだりしたこともあった。小学生になると、バスケットボールやドッジボールといった球技にハマり、突き指するたびに「ラッキー♪」なんて思っていた。ピアノが弾けない口実になるからだ。
なんやかんや6年ほどは通っていただろうか。中学受験を理由に、ピアノ教室はやめた。それきりあまり弾かなくなった。

ピアノをまた弾き始めるようになったのは、高校生になってからだった。当時ハマっていたK-POPアイドルの曲に、ピアノを基調としたバラードがあり「弾けるようになりたい」と思ったことがきっかけだった。
楽譜を買って練習を始めたものの、指は動かないし楽譜は読めないしで心が折れかけた。それでもどうしても弾けるようになりたくて、猛練習した。別に披露する場があるわけでもないのに、なぜか夢中になって練習した。楽譜にカタカナで「ドレミファソ」と音を書き込み、通学時間で曲を聴き込み、とにかく練習した。昼休みに学校のピアノをこっそり借りて、弾いたりもしていた。
すると、少しずつ弾けるようになっていった。弾けるようになると楽しくなって、ますます練習した。楽譜を見なくても弾けるまでになった。

気づくと、ピアノが好きになっていた。楽しくて楽しくて、色々な曲を弾くようになった。絶対音感に憧れて、耳を鍛えたりもした。絶対音感にはなれなかったけれど、聴いた音楽を楽譜なしでも弾けるようにはなった。決してうまくはないし、完璧ではないけれど。
聴いた音をピアノで再現するのは、なぞなぞを解いた時みたいな気持ち良さがある。あ、この音だ!という発見が楽しい。

我が家のピアノは1978年生まれで、種類はアップライトピアノというらしい(今まで知らなかった)。グランドピアノよりも奥行きが短く、背の部分を壁につけて配置できるタイプだ。インテリアのようなピアノだ。
私が10歳の頃、我が家にやってきた。かれこれ20年の付き合いである。このピアノは、いろんな私を知っている。発表会に向けて、不貞腐れて練習していた子供のころの私も、高校生の時にピアノにハマって弾きまくっていた私も、父が亡くなった時、大泣きしながら弾いていた私も。甥っ子と一緒に爆笑しながら弾いている私も。そして今、人生二度目の無職になりながらも、どこかすっきりとした顔で自由気ままに弾いている私も。

これからの人生、何が起こるかわからないけれど。ピアノを弾くことは続けていきたいな、と思う。

イラストbyあっこ
タブレットのペンが壊れてしまい、
指で描きました。笑

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