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休職日記#8 焼きマシュマロと父

今日、スーパーで買い出しをしていたらマシュマロを見つけた。
久しぶりにみたマシュマロに子供心がくすぐられ、つい買ってしまった。

マシュマロを見ると、反射的に「焼きマシュマロ」が食べたくなる。
夕食後、早速作ることにした。
割り箸にマシュマロを一つずつ刺していく。割り箸とマシュマロがくっついて、意外と刺しにくい。
若干マシュマロが潰れてしまったが、三つ刺した。

コンロに火をつけて、マシュマロを近づける。思わぬ部分に火がついて、慌てて「ふっ、ふっ」と息で火を消す。ちょっと焦げてしまったけど、まぁいいか。
真ん中のマシュマロを炙るのが一番難しい。位置を微妙に調整しながらなんとか三つとも焼けた。

焼きマシュマロなんて、何年振りだろうか。
もしかすると子供以来かもしれない。

父の仕事部屋にはいつもマシュマロの袋が置いてあった。
しかめ面で、いかにも怖そうな厳格な雰囲気の父だったが、甘いものには目がなかった。
パソコンに向かって仕事をしながら、ときどき右手を伸ばしてマシュマロを食べているのを、部屋の入り口から眺めているのが好きだった。ときどき、「ちょうだい」なんて言いながら。

焼きマシュマロも、父が教えてくれた。
「マシュマロ焼く?」
目尻を垂らしながら誘われて、食べたい!と私が言うと嬉しそうに焼いてくれた姿を今でも覚えている。

父は、私が26歳の時に他界した。
時々、今も生きていたらなんて言うだろう?とふと考える。
仕事やめたよ、って言ったら。なんて言っただろう。

焼きマシュマロ、美味しいよ。
この焦げた部分、ちょっと苦いんだけどそれがまた美味しいんだよね。噛むととろ〜って甘いのが溶けて、ほろ苦い感じになって。
あちち、意外と熱いな。やけどに気をつけて。

「マシュマロ焼く?」

父の愉快な声が聞こえた気がした。


イラスト:あっこ
焼きマシュマロを描いてみました。
マシュマロってなんかかわいいですよね。
焼き目のところが難しかったなぁ。

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