INVISIBLE WORLD〜箱の中にいる人々〜
ねえ、アブソリュート、あの箱は何?
コアはアブソリュートの袖を引っ張って引き留めた。
あれは箱じゃなねえ、家だ。
アブソリュートはめんどくさそうに言った。
家?家ってなんなの?
アブソリュートはため息をつき言った。
人が過ごすところだ。ご飯を食べたり、眠るところだ。
コアはさらにきいた。
なぜ、家が必要なの?僕らは旅をして外でご飯を食べたり、眠ることがある。
なぜみんな家で過ごすの?
アブソリュートは、コアがあまりに屈託のない目で見つめるため、諦めたかのようにため息をつき、コアの方に向き直った。
家は安心するんだ。自分の好きなものを置いて、好きな時に眠り、好きなものを食べられるように貯蔵したりすることもできる。自分が好きなように生活できる場所だ。
コアは笑顔になって言った。
へー、家って宝箱なんだね。そんなに好きなものばかり入れることができるなら、僕も家が欲しいな。
アブソリュートは、ふーんと笑い、コアを見下しながら言った。
家には責任もある。家にはタダで済むことはできない。土地や水など生活に必要なものにはお金を払うんだ。
コアは真っ直ぐアブソリュートを見つめ言った。
家を持つって大変なんだね。
アブソリュートは、コアがあまりも真剣に話を聞くため気分が良くなった。
そうだ、でもそれ以上に幸せがあるんだ!
コアはすぐに聞いた。
どんな幸せがあるの?
アブソリュートは不意をつかれ、5秒ほぼ黙った。
以前友人が話していたことを思い出し、ポンっと手を叩き言った。
家族や親しい人とあたたかく暮らす幸せかな。それは、人間だけじゃない。多くの生き物が家を持ちそこで暮らすんだ。大切な人やものを守るために。
それを守ることが幸せじゃないのかな。
コアはすぐに突っ込んだ。
幸せってなに?
アブソリュートの顔は赤くなり目がまんまるになった。
お前幸せが分からないのに聞いていたのか!
アブソリュートは、むっとした顔になりコアとは反対の方を向いて黙った。
ねえ、アブソリュート。
コアが呼んでもアブソリュートは返事をしない。
そこにピスフールが来て優しい声で言った。
幸せとは、ここ(胸の部分を手でさする)がほんわかあたたかくなることよ。
全身がふわふわして、思わず笑顔になるの。
私は暖かい日にお花畑で寝そべって、小鳥の
歌声を聞くと幸せを感じるわ。
あとは美味しいアイスクリームを食べている時ね。美味しいものを食べると幸せになる。
コアは優しく微笑むピスフールに見つめられ、頬が赤くなった。
その後アブソリュートが、その輪の中に潜り込んできた。
俺もだ!俺も美味いものを食うと幸せになるな!あとは美味い酒と、おんなっ…。
アブソリュートは、ピスフールの視線に気づき口を詰むんだ。
コアはそれを不思議そうに見ながら言った。
大好きな人と、大好きな物に囲まれて、美味しいものを食べるところ、それが家なんだね。それは幸せだね。
二人は屈託のない笑顔で話すコアを見て笑い、コアもつられて笑った。
そこに白い影が現れた。
カー・ディオ・バスキュラーだ。
彼はコアを作った科学者だ。
諸君、久しぶりだね。
実に面白い話をしているね。興味深い。
家とは生物にとって自分の身を守るために必要不可欠なものだ。
寒さや暑さから身を守り自然の脅威から守ってくれる。
家はいろんな形をして、その時代ごとに形や役割は変わってきている。
そして何より大切なことは、どんな家でもそこに住む人たちがどんな気持ちでそこに住むかが大切なんだ。
人それぞれ幸せは違う、だからそこに住む人が自分の幸せは何か知り、家を選択する必要があるんだ。自分の必要な幸せに合わない家は、時に不幸をもたらすことがある。
コア、君はどんな家に住みたかい?
コアは言った。
僕は、アブソリュートがいて、ピスフールがいてくれたら何もいらないよ。
二人がいれば心がほんわかあたたかくなるんだ。
コアは屈託のない笑顔でカー・ディオ・バスキュラーを見上げて言った。
ピスフールとアブソリュートは照れ臭そうに下を向いた。
カー・ディオ・バスキュラーは悪戯な顔で言った。
そうか、なら二人がずっと一緒にいれるようにコアが頑張らなくちゃいけないね。
カー・ディオ・バスキュラーはコアの変化に気づいていた。
コアは下を向いた。先程までの笑顔は消え、悲しそうだ。
そうだね。二人がずっと一緒にいてくれるといいな…。
コアの胸はほんわかしたあたたかさから、光が消えたようなひんやりキュッと締めつける感覚に変わっていた。
カー・ディオ・バスキュラーは言った。
それと家は変化するよ。人が変化するように、その人に適応して家も変化していく必要があるんだ。中身が変われば、外も変わるんだよ。
コアは前を見たまま黙って、ひとことつぶやいた。
変化………うっ…。
コアは、胸を押さえてうずくまった。
ピスフールとアブソリュートはコアにかけよった。
コア!コア!
ふたりは叫ぶが、返事はない。
コアの中身はどこかに消えたようで、生命反応を失い人形のようになっていた。
コア!!
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