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トルコ旅16<インディ・ジョーンズのテーマ曲を口ずさみながら>

私たちは、今夜滞在する岩がある奇石群が広がる自然豊かなエリアの散策から始めた。細い小道や岩の間をくぐりぬけながら気の向くまま歩く。これぞ冒険である。

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私とホンザは生まれ育った環境、国は違えど、子供の頃はお互い冒険映画に心を揺さぶられ、映画のような冒険に憧れていたという共通点がある。私たちはどこかに行き、冒険心がくすぐられてワクワクするような時には、いつもどちらかが先にインディ・ジョーンズのテーマ曲を口ずさみはじめる。今回はどちらが先だったかは忘れたが、インディ・ジョーンズのテーマ曲を2人で口ずさみながら、道のような道でないような場所をインディになりきって進んでいった。

10月中旬のカッパドキアは木々が黄色に紅葉し、それはそれは美しい景色が広がっていた。青空が広がり、まさに行楽日和である。

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歩いている途中でクルミの木を見つけた。地面を見てみるとクルミがたくさん落ちているではないか!チェコでもこの時期はクルミが収穫できるので、私たちは毎年クルミ拾いに行く。ただ、クルミはチェコではとても人気があるので争奪戦であるが、ここは恐らく人が全く通らないからなのか、クルミの存在を知る人がいないようで放置されているようだった。

クルミ以外には葡萄もそこらじゅうにあった。リンゴやナシのような果物の木は放置されているような状態にもかかわらず実をたくさんつけていた。チェコも同じように放置状態でリンゴやナシがたくさんできる。日本と比較してしまいがちだが、このように特に手入れもせず果物が豊富に実るのはすごいなと毎回感じる。放置というと悪く聞こえるが、別の言い方をすると無農薬の果物である。ここカッパドキアの気候はチェコの気候と似ているのか、秋の味覚で溢れていた。

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ホンザはもともとガチな雪山などを登ったり、ロッククライミングを趣味とするチェコの男である。ペルーのアンデスを歩いたり、雪山を登るためにキルギスタンに行ったりと、とにかく山や石、岩が大好きな男なのだ。そんなホンザがこの大自然を目の前にし、この巨大な奇石群を見て興奮しないわけがない。私とは違った意味で興奮しているのは薄々気づいていた。何となく嫌な予感がしてくる。そしてその私の予感は見事に的中するのである。

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え?ここ、歩くの?ここ、歩けるの?

というルートを彼は嬉しそうに歩き始めていた。私自身、出来るかできないかは別として、リードクライミング、ボルダリングはたまに、本当にたまにやるのだが、それとはわけが違う。おまけに私の靴は底がすり減ったスニーカーなので滑る滑る。私はホンザについていくに必死だ。石の高いところに登ってしまうとかなりの高さがあるし、正直な話、落ちたらアウトと思うようなヒヤヒヤする場所もあったが、ひたすら歩く。ひたすら登る。しかし、やはり苦労しながら登ってみただけのことはある。

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目の前には今まで見たこともないような大自然、奇石群が広がっていた。この壮大すぎる絶景を前に、この世界にはまるで私たちしかいないような気さえしてきた。

そう錯覚するくらい周囲には人がいなかった。途中からはトレッキングしている人にさえ出会わなかったのである。

石に腰かけて辺りを見回すと鳥たちが飛び回っている。石には穴があったりするのだけど、そこが鳥たちの住処のようだ。鳥たちのさえずりが聞こえ、頬を撫でていく風を感じながら、私たちはこの世界で聴こえてくる音を耳を澄ませて聴いていた。とても穏やかな時間だ。

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そんな中、アザーンが聞こえてきた。アザーンとはイスラム教徒への礼拝の呼びかけである。礼拝の時間を知るための合図と言ったところであろうか。肉声のアカペラで歌を歌っているかのように呼びかける。イスラム教の国では、それがスピーカーから爆音で流れるのでどこにいても聞こえる。ここカッパドキアのギョレメの大自然の中にいても、それは聞こえてきた。

私もホンザもこのアザーンを聴くのが好きだ。イスラム教についてはそこまで詳しくはないが、それでもこのアザーンは心地よくて好きなのである。石に腰かけ、壮大な景色を眺めながらアザーンを聴いていた。もともとアザーンを聞くのは好きだったけど、トルコに来てからもっと好きになっていた。

ホンザが「美しいね」と言った。本当に美しいと感じる時間だった。



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