見出し画像

子どもに『感情』を教える一つの方法

おはようございます。
先日、子どもが感情を学ぶことについて、気になる話を聞きました。
その話自体はごく個人的なことなので、詳細は省きます。私が気になったのは、子どもが勝手に感情を学んでいると思われている、という点でした。

子どもは誰に教えられたわけでもないのに、自分の力で学びを得る力があります。
それは間違いありません。
でも、だからといって何でも自分の力だけで学べるのかと言ったら、それはまた別の話だと思うんですね。
子どもが自分で見て、聞いて、学んでいることも、もしかしたら違った解釈で学んでいるかもしれない。そういう可能性もあります。

今日は以前作業療法士さんから伺った方法とともに、子どもが『感情』を学ぶことについて、書いてみようと思います。

スタートは『感情』が分からないところから

人間は生まれた時から『感情』を理解しているわけではありません。
赤ちゃんが泣くのは悲しいからというより、不快感や空腹感を伝える手段として、という側面が強いと思います。

自分が体験・経験したことを元に、子どもは徐々に『感情』を学んでいきます。

ここで『感情』についてちょっと考えてみます。
悲しい、嬉しい、楽しい……『感情』というとそうした言葉が浮かんでくると思います。
また、相手の『感情』を想像する時は相手の表情をヒントにすることが多いですよね。
それは、悲しい時にはこういう表情になる、嬉しい時にはこういう表情になる、という体験・経験を元に学習しているからです。

この体験・経験がないと、相手の表情を見てもうまく感情を想像することができません。
大人でも、文化の違う国の人の表情から感情を読むのが難しいのは、そういうところからきています。
自分が慣れた感情表現とは違う表現をされると、相手が本来感じている『感情』とは別の『感情』を想像してしまうのです。
日本では肯定する時に頷き、否定する時に首を振ります。
でも、海外には肯定で首を振る国もあるのです。
それを分かっていないと意思疎通も難しくなりますよね。

子どものスタートは、自分が知らない文化の人とコミュニケーションをとるのと同じくらい、相手のことが分からない状態だと思ってみてください。
同じ日本に住んでいるから。
同じ日本語を話すから。
それだけで、無条件に同じ感情表現が通じるわけではないのです。

自分が体験・経験していないことを知る窓口の一つに絵本がある

人間が自分で体験・経験できることには限りがあります。
でも、人間は自分が体験・経験していないことでも想像することができますよね。
それは本を読んだり、テレビを見たりと、疑似体験することで学んでいるからです。

じゃあ、子どももテレビを見ていれば学べるのか!というと、必ずしもそうとは言えません。
大人と子どもとでは、元々ある知識・情報に大きな差があるからです。

例えば、お笑い芸人さんのボケとツッコミをテレビで見たとします。
ツッコミ役の芸人さんが、相方の頭をすぱーん!と叩いて突っ込むと、周囲の人がどっと笑います。
大人はそれを見ても、テレビの中でのやりとりは漫才で、あくまで特殊な状況によって許されているものだ、と認識しています。だから叩かれている人を見て笑っている人を見ても、同じように人を叩いて周囲を笑わせよう、とは思いません。

でも、それを見た子どもは、「なるほど、人を叩くとみんな笑うのか」と学びます。
じゃあ、笑ってほしいから人を叩こう!となっていきます。

極端な例かと思われるかもしれませんが、これは実際、私が見てきた子どもの姿です。
お笑い番組を見るのが大好きなある男の子は、大好きな芸人さんの口調も真似て、友だちの頭を叩いて笑っていました。
大人は特殊な状況、限定的な環境を理解して見ていることも、子どもはそうではない、ということを分かった上で、テレビや動画を見てほしいなと思います。

子どもの知識・情報が限られているということを前提として、『感情』を学ぶための窓口としては、やはり絵本が適していると感じます。

絵本は、基本的に子どもが読むことを前提に作られています。
なので、『感情』が分かりやすく描かれています。
こういう子がいて、こういう出来事があって、だからこう感じている。
『感情』が生まれる流れも分かりやすく描かれていることも多いです。
直接的に描かれていないことでも、子どもにとって想像しやすい内容であれば、疑似体験から学習に繋がるのもスムーズです。

また、子どもに「この子、なんで泣いてるの?」と尋ねられた時など、大人も説明しやすいなと感じることが多いです。
絵本で起こる出来事はシンプルなので、解説しやすいんですよね。
表情も分かりやすく描かれていることが多いので、「悲しいから泣いてるね」「嬉しいから笑ってるね」と、『感情』と表情を繋げて教えることもできます。

『感情』を想像しにくい子どもに対して

以前担当していたクラスに、自閉症スペクトラムの傾向がある、と診断されたお子さんがいました。
相手の『感情』を想像するのが難しく、いわゆる『空気が読めない』行動が見られました。本人に悪気も悪意も全くないのですが、同年代の子どもたちの中では目立つようになり、保護者も気にされていました。

その子が『感情』を学べるように、と教えられた方法が、絵本を使った方法でした。

「こんなことがあったから、悲しいんだね。」
「楽しそうな顔をしているね、○○があったからかな。」

絵本を読みながら、登場人物の『感情』を追っていきます
はじめはよく分からなくても、こういうことがあると悲しくなる、嬉しくなるというパターンのようなものが分かってきます。
また、こういう表情の時は悲しい、こういう表情なら嬉しい、という表情と『感情』の繋がりも学べます。
一度掴んでくると、自分の力での学習も進むので、実際のやりとりの中でも相手の『感情』を想像することができるようになっていきました。

この方法を教えてもらってから、クラスで読み聞かせをする時にも意識するようになりました。

発達障害と診断されているかどうかに関わらず、子どもの成長速度はそれぞれです。
幼いうちから人の表情を読むのが得意な子もいれば、何歳になっても苦手は子もいます。
同年代の子どもしかいないクラスでも、『感情』に対する学びの進度はバラバラなのが当たり前。中にはちょっとズレた学びをしている子どももいます。
そんな中で絵本の読み聞かせをする時、登場人物の『感情』を追うことで、一緒に『感情』を学ぶ機会を作れます。
すでによく分かっている子は、こちらの問いかけに積極的に答えてくれます。
まだよく分からない子に分かりやすいよう言葉を選び、流れを解説していくことで、「なるほど、そういうことなのか」と学びに繋げることができます。
大人がただ解説するより、友だちからの言葉を聞くことの方が、子どもには理解しやすい、飲み込みやすい情報になることが少なくありません

情報は理解してから身につく

日常生活を送るだけでも、『感情』についての情報はたくさんあります。
自然と情報を取り込んでいても、理解していなければ身についたとは言えません。

子どもが自分で学ぶ力を発揮する場は、どんどん作ってほしいと思います。
でも、それは子どもの学ぶ力に丸投げして、大人は何もしなくていいということではないとも思います。

子どもの姿を観察し、言葉を聞くことで、何をどう理解しているのかを大人が把握し、ズレているな、まだ理解が浅いなというところを補っていく。
子どもが自分の力を惜しみなく発揮していくためにも、大人は大人の仕事をしていく必要があるんだと思っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?