「忘れ去るよすが」(詩)

忘れ去れるのなら
どうぞ忘れて下さい

どうぞ
どうぞ

私の線をぼやかして
いつの間にか崩れてしまうように
そのために時の流れを
私は波立たせてみせましょう

新しい色を混ぜて
たくさんの空を重ねて
幾度も通り過ぎる雨の匂いだけに目を向けていてください

どうぞ
どうぞ忘れて下さい

私のまぶたに浮かぶあなた
私の爪は鋭く刻むのが
存分に勝手と分かっていますので

どうぞお先に
どうぞそのままのひとりでいてください

忘れて叶う幸福があることの
希望を私は知っています

どうぞ忘れて

私が叶えたような顔をして
あなたの幸福を見送ったのだと錯覚していたいだけなのです

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