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「降らせるもの」(詩)

あの日から ずっと
わたしは
(わたしたちは)
横たわるあなたに
(あなたたちに)
やわらかなものを降らせている
それは花弁
甘い香り
やさしい光
生きている思い出とおもい
あなたの
(あなたたちの)
横たわる形が 透明を吸い込んで
実物はとうに はるか先へ行ってしまっていても
わたしの
(わたしたちの)
心の重ねた年月の途中で
あなたの
(あなたたちの)
姿は 横たわり続けている
たとえ それがどれほど空気とあわさろうと
足下のずっと下で その姿を感じている
あの別れから 今
もう今さらと言われるほど時は経ったというのに
あの日のことを ずっと
わたしは
(わたしたちは)
思っている
涙が 後を追ってくれる
あの日が
どれだけ遠くへ離れても
降り積もらせた たくさんのもので包んでいても
わたしの
(わたしたちの)
おもいは いつも 振り返ったそこに 共に蹲って
追いついた涙とともに
あなたの
(あなたたちの)
伏したとなりに こぼれる
あの日が いつも
わたしの
(わたしたちの)
そばに在る
あの日の あなた
(そして あなたたち)
その思いのそばに
そばに 在る

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