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詩、誌、氏

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詩だ、と言い切れない。でもたしかに私の書いたもの。 短くて、要領は得ない文章のかたまりなのだと思う。 でも書きたくなるから、こうして出してしまう。
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2023年11月の記事一覧

「月の夜」(詩)

みごとな みごとな 満月は だれの心の描いた満月なの きいろをぐるりと塗りひろめ 青い夜を…

とし総子
6か月前
10

「ぼんぼり」(詩)

月を 呑んだか 飲んだくれ 恋に 恋して 愛を目隠し 月光 研いだよ お父上さん 貫く胸をかし…

とし総子
6か月前
6

「鳴らない鈴」(詩)

鳴らない鈴を持っている 拾ったのじゃない 作ったのでもない 私自身が それだった くすんだ…

とし総子
6か月前
9

「新芽」(詩)

風に暴かれた いたみが ぽつ ぽつ と 光を産む 道端に落ちたからと 花を真似して するり…

とし総子
7か月前
5

「頸」(詩)

物語りを裂いてはいけない 丸のままで取り出して そのために私の顎を砕きなさい 歯を押し沈め …

とし総子
7か月前
6

「ものがたり」(詩)

読み終えた物語りは けして、胸内に留まってはくれない 重しを詰めるように感情を紐で結わえ …

とし総子
7か月前
6

「しずかにおちた」(詩)

しずかに しずかに おちてくるもの とつとつと しずかが おちてくるのよ それは赤い実だった 青い羽は 白く白く燃えて溶けた しずかは しずかのまま ひとつの滴に おちて染みた

「月が降りる」(詩)

月が呼ぶ 白い手が 白い声に 響きを伝って 押し当てられる たらり たらり、と白く 細く儚いも…

とし総子
7か月前
8

ある日の空を見ての詩ふたつ

【青】 まっさらな空は淋しい 青く 青く 青く 轟く風の音さえ鎮まる 青に 青に 青に 【白】…

とし総子
7か月前
6

「ひと」(詩)

完璧を理想としながら 不完全を愛おしんでしまう ひとというものは なんて幼い そして可愛い…

とし総子
7か月前
10

「風の中の茜」(詩)

赤猫を追いかけた あの道はもう無い 落ち葉が埋めて 雪が咲き 明るい地面を洗った季節 あの…

とし総子
7か月前
6

「やさしいを知る」(詩)

あなたはきっとやさしい だってやさしいひとが なんにんも なんにんも あなたをやさしいと言う…

とし総子
7か月前
9

「いのり」(詩)

ただ、祈りたいときがくる 目を閉じ 手を合わせて そして呼吸だけを回す そこでは言葉が小さ…

とし総子
7か月前
7

「声」(詩)

声高に 名を呼ばうことはできなかった 会いたい、は 過去へ 過去へと消えていく 底は見えなかった 覗いた先の星々は美しく在った あなたのいない今もたしかに美しい あなたのいた時間を苗床として あなたの生きる過去は一際うつくしい その目が見つめた水辺を鳥たちが発っていく 大きな声は割れて 粉々に散った 星にすらなれない瞬きは 風に色も持たずに去っていった