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「ものがたり」(詩)

読み終えた物語りは
けして、胸内に留まってはくれない

重しを詰めるように感情を紐で結わえ
文章の節々に括っていても
するりと物語りは素早く逃げ出し
淡い陽炎を残すばかり

二度目に読んだその物語りは
けして同じものではない

あなたが読み終えたその物語りが
けして私と
そして誰とも
同じ形をしていないことと同じように

読み終えたそのときに
染まった心が
層をつくっていく

同じではありえない
ただ一度の、光と揺れと波と打ち寄せる闇を
私は愛している


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