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詩、誌、氏

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詩だ、と言い切れない。でもたしかに私の書いたもの。 短くて、要領は得ない文章のかたまりなのだと思う。 でも書きたくなるから、こうして出してしまう。
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記事一覧

「ひとさし」(詩)

あなたの手が獣に成り わたしが赤子の赤い夢に生まれ 果てよ 果てよ、と のばされてゆく 静か…

とし総子
11時間前
4

「ふるふるる」(詩)

抜き身の足に蔦は這い その健気さにふるふるる その方なの芯に口付け 触れて終える紅ひとつ

とし総子
1日前
4

「パンと銃」(詩)

銃を運ぶひとより パンを運ぶひとの方が しあわせかしら 木を切る人より 紙を造る人の方が し…

とし総子
1日前
4

「ひとをみる」(詩)

人を見る 人を見る 人を見る 同じ色のズボンのおじさま 花柄のシャツのおばあさま 杖をついた…

とし総子
3日前
10

「みおくり」(詩)

ひとを見送っている ふしぎと途切れない ひとというものを もうどれくらい 見送り続けている …

とし総子
3日前
6

「痛いときにはどうしていたの」(詩)

私は三十年近く  口内炎を知らなかった 歯医者さんに 「こんなに尖った親知らずがあったら、…

とし総子
3日前
7

「星」(詩)

世界は私を撃ち殺す 暴力の日々は弱さを撒き散らす 雨は犬の肋骨の凹みを流れ 助けを呼ぶ声は たちどころにあがる歓声に掻き消される どうだっていいものひとつひとつの どうでもはよいと言い切れないひとつが 悲鳴のように光を放つ 欠片と欠片の共鳴は 一点を起点に立ち昇る 様々な たとえ屑のような星に成ろうとも

「星を崩して」(詩)

星屑は 塵になって 海に落ちて そっと浜に寄せられる そして静かに星そのものに成り代わりな…

とし総子
5日前
5

「海からの鼓動」(詩)

海から鼓動が響く 涼しい風は少し生々しい 滴の形をまぶたに宿し 光のように海を見た 鼓動の一…

とし総子
7日前
11

「どこかに子供は」(詩)

子供の思影が遊ぶ光の中 冷たい遊具が風にゆれる 静かにしておいでよ 待っているんだよ ずっ…

とし総子
10日前
8

「とむらい」(詩)

あなたの言う通りにしてあげられたなら 良かったのかもしれない 思い出は ただ思い出という域…

とし総子
2週間前
8

「温む」(詩)

静かに待っています ずっとじんわりと黙って 流れるものにふたをして 整うものは整えて 静か…

とし総子
2週間前
7

「黒い唇」(詩)

沈黙にひたした両手で あなたの頬を包みましょう 白い私の顔 黒塗り固めた唇を見て ほんのり…

とし総子
2週間前
8

「初舞台」(詩)

愛の姿をみつけたとき わたしは この眼が猛禽類のものだった 思い出す 愛を見つめ 愛を見据え 愛を見越し 一瞬の隙を爪でひと貫きにしてしまいたい 耐えて 冬の椿を 凍えて 湖の底の小石の反射する月の光を 終えて 尊かったひとびとの祈りの裾を あいしてしまい あしを通したくなり あいを遠ざける始末をつける 私の眼を抉り出して えぐりだして 私の愛を手の平の上に見つめて