ひたすら迷子の私です

ひたすら迷子の私です

最近の記事

剥がれたメッキ

剥がれたメッキ 私は名門企業のエリート社員、周囲からは一目置かれる存在だった。いつも完璧なスーツを着こなし、会議での発言は鋭く的確。上司からの信頼も厚く、同僚たちからは尊敬の眼差しを向けられていた。しかし、それは私が表向きに見せていた顔に過ぎなかった。 私の名前はタカシ。実際の私はプレッシャーに弱く、自信を持てない人間だった。仕事ができると評価されることが何よりも重要で、そのためにはどんな手段も厭わなかった。部下のアイデアを自分のものとして発表し、他人のミスを自分の手柄に

    • 捨て猫の末路

      捨て猫の末路 私は小さな黒猫。ある日、見知らぬ人間に拾われ、温かい家に迎え入れられた。しかし、しばらくすると、その家の人々は私に興味を失った。次第に、私に触れることも、話しかけることもなくなり、私はただの厄介者と化していた。 ある雨の夜、私は車の後部座席に乗せられ、見知らぬ場所へと運ばれた。車が止まり、ドアが開くと、私は無理やり外に押し出された。暗闇と冷たい雨が私を包み、車のエンジン音が遠ざかるのを聞いたとき、私はもう二度と家に戻れないことを悟った。 私は恐怖と不安でい

      • 闇の書庫

        闇の書庫  私は図書館司書を務めている。小さな町にあるこの図書館は、長い歴史を持ち、古い書物や記録が数多く保管されている。ある日の午後、館長から呼び出され、地下の書庫にある古びた本を整理するように頼まれた。 「地下書庫には、もう何十年も人が入っていないから、ちょっとした冒険になるかもしれないね」と館長は笑いながら言った。 私は少し不安を感じながらも、好奇心に駆られて地下書庫に向かった。古びた扉を開けると、埃の匂いが鼻をついた。懐中電灯を片手に階段を下り、薄暗い通路を進む

        • 永遠の一番星

          永遠の一番星 アヤは幼い頃から星が大好きだった。夜空に輝く一番星を見るたびに、彼女の心は希望と夢で満たされた。特に一番星が好きで、その星に願いをかけることを日課にしていた。 「一番星さん、どうかいつまでもきれいに輝いていてください。そして、私が大好きな人にも幸せをください。」彼女は毎晩、そう祈り続けた。 高校生になったアヤは、同じ星好きのタクミと出会った。彼もまた星に魅了されていた。二人はすぐに意気投合し、星空観察を一緒にするようになった。タクミと過ごす時間はアヤにとっ

        剥がれたメッキ

          神様は助けてくれない

          神様は助けてくれない ミカは生まれつき体が弱く、長い間病院で過ごしていた。病室の窓から見える景色は、彼女の唯一の慰めだった。両親は毎日祈り続け、ミカもまた神様に助けを求めることを日課としていた。 ある日、ミカは母親に尋ねた。「神様って、本当に私のことを見てくれてるの?」 母親は優しく微笑みながら答えた。「もちろんよ、ミカ。神様はいつもあなたを見守ってくださっているの。」 その言葉に少し安心したミカは、毎晩眠る前に祈りを捧げるようになった。「神様、どうか私を助けてくださ

          神様は助けてくれない

          憂鬱な日々

          誰とも繋がりを持たないで部屋にこもっているのは 楽ではあるがつらい。 SNS疲れという言葉があるが 誰かと日々繋がっている安心感がある。 誰とも連絡をとらない こちらから送ることでしか得られない相手しか いないんだなぁ…って実感する。

          憂鬱な日々

          白き孤独

          白き孤独  シンは幼い頃から登山が好きだった。父親に連れられて何度も山に登り、そのたびに自然の美しさに心を打たれてきた。今日は特に楽しみにしていた。友人のカズと一緒に、厳冬期の雪山に挑戦する計画を立てていたからだ。  「今日は完璧な日だな、シン」とカズが笑顔で言った。シンも頷き、装備を確認した。二人は万全の準備を整え、山頂を目指して歩き始めた。  最初の数時間は順調だった。真っ白な雪景色が広がり、澄んだ空気が肺に染み渡る。登るにつれて視界が広がり、遠くの山々が青く霞んで

          白き孤独

          甘い思い出

          甘い思い出  アヤは料理が得意ではなかったが、特にケンジのために手作りのお菓子を作りたいと強く思っていた。彼とは高校の同級生で、アヤはずっと彼に片思いしていた。卒業までに一度くらい、彼に自分の気持ちを伝えたかったのだ。  土曜日の午後、アヤはキッチンに立ち、初心者向けのレシピ本を開いた。今日は初めての手作りクッキーに挑戦することにした。材料を揃え、生地をこねる手つきはぎこちない。オーブンに入れるときも、少し不安が胸をよぎった。  「ちゃんとできるかな…」  オーブンの

          甘い思い出

          迷いの山

          迷いの山 タクヤは自然が大好きな青年だった。彼は都会の喧騒から逃れるため、よく山登りに出かけた。今日は特に楽しみにしていた日だ。長年の夢だった、壮大な風景を誇る「霧立山」に登る計画を立てていたからだ。 朝早く、タクヤは山の麓に到着した。空は澄み渡り、緑豊かな木々が風に揺れている。心が弾むのを感じながら、彼は山道に足を踏み入れた。 山道を進むにつれて、タクヤはその美しさに圧倒された。高い木々の間から差し込む陽光、足元に広がる花々、鳥のさえずり――全てが彼の心を癒し、元気づ

          迷いの山

          平均値と中央値

          何かの数値を均すのに平均値がしばしば使われるが それってグラフの真ん中が1番高いきれいなお山になってる時に使えるものであって 右に寄ったり左に寄ったりしているお山ではまるで役に立たないんだね わかりやすいのが世帯所得とか…… 平均値は高めに出ているけど 最頻値、中央値は左に寄っている どこかのすごくお金持ってる人が平均を上げているだけで ほとんどの人がそんなにお金を持っていない…… 悲しいなぁ

          平均値と中央値

          断捨離

          断捨離  リサは自分の部屋に積み上げられた段ボール箱を見つめていた。引っ越しのたびに増え続けた荷物は、今や部屋の大半を占めている。どの箱も「いつか使うかもしれない」と思って取っておいたものばかりだ。しかし、その「いつか」は一度も訪れなかった。  「もう、これじゃ生活できない…」  リサは意を決して、断捨離を始めることにした。まずは一番大きな箱を開ける。中には古いアルバムや、使い古されたノート、壊れたおもちゃが詰まっていた。それらを一つ一つ手に取りながら、過去の思い出が蘇

          断捨離

          とても、 コンビニのお弁当が食べたい。 幕の内弁当かのり弁当、 お米に醤油をかけて食べたい。

          とても、 コンビニのお弁当が食べたい。 幕の内弁当かのり弁当、 お米に醤油をかけて食べたい。

          とおりゃんせ

          とおりゃんせ  町外れの古い神社には、一本の細い道が続いている。その道は両側に高い竹林が立ち並び、昼間でも薄暗い。子供たちは「とおりゃんせの道」と呼び、その道を通るたびに遊び歌を口ずさんでいた。  「とおりゃんせ、とおりゃんせ…ここはどこの細道じゃ?」  ユウタとナナミは、いつも学校の帰り道にその道を通って帰った。ある日、二人は学校の帰りにその道を歩いていると、不意に背後からクラクションの音が響いた。振り返ると、一台のトラックがゆっくりと近づいてきていた。  「危ない

          とおりゃんせ

          太陽の子

          太陽の子  タカシはいつも明るく、元気いっぱいだった。彼の笑顔は太陽のように輝き、周囲の人々を元気づけた。学校では「太陽の子」と呼ばれ、皆に愛されていた。彼の明るさは、まるで闇を一掃するかのようだった。  クラスメイトのユカリは、タカシのことを密かに尊敬していた。彼のように人を元気づける存在になりたいと思い、毎日彼の言動を観察していた。タカシはどんなに忙しくても、どんなに疲れていても、誰に対しても親切で笑顔を絶やさなかった。  しかし、ある日の放課後、タカシの様子がいつ

          太陽の子

          いらない子

          いらない子  薄暗い部屋の中、カオルは一人でベッドに座っていた。壁には剥がれかけたポスターが貼られ、古びた机には埃が積もっている。窓の外からはかすかに街の喧騒が聞こえてきたが、その音もカオルの心には届かなかった。  「いらない子…」  彼の心には、その言葉がずっとこびりついていた。両親は彼に関心を示さず、学校でも友達ができなかった。誰も自分を必要としていないと感じる日々が続いていた。カオルは、自分が存在する意味を見失っていた。  ある日、学校からの帰り道、公園のベンチ

          いらない子

          月夜の花占い

          月夜の花占い  澄み切った夜空に満月が輝き、柔らかな光が庭の花々を照らしていた。庭に咲く白い花は、月明かりを浴びて幻想的な雰囲気を醸し出している。ユウはその庭に立ち、花占いを始めることにした。  ユウは昔から、花占いが好きだった。特に月夜の晩に行う花占いは、特別な意味を持つように感じていた。月の光が花びらに反射し、その影が地面に揺れる様子を見ながら、彼は静かに花を一枚一枚摘んでいった。  「好き、嫌い、好き、嫌い…」  摘んだ花びらを一枚一枚落としながら、ユウは心の中

          月夜の花占い